全身性エリテマトーデス/SLEの症状について

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全身性エリテマトーデスかもしれない、全身性エリテマトーデスと診断された。そんな不安を抱える患者さんたちのための、全身性エリテマトーデスの症状についてまとめたページです。

ディップ先生

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全身性エリテマトーデスは、「全身性」と呼ばれることもあり、発熱・だるさや、皮膚・関節の症状など、全身のさまざまな症状が出ます。

皆さんに共通した症状というものはなく、誰にどのような症状がでるかを予想することは非常に難しいです。

このページの読み方

重症度
★★★★★ ・・・ 直ちに生命に関わる
★★★★☆ ・・・ 後遺症が残りうる
★★★☆☆ ・・・ すぐに治療が必要
★★☆☆☆ ・・・ 免疫抑制薬は必要だが命に関わらない
★☆☆☆☆ ・・・ 免疫抑制薬がいらない

頻度
★★★★★ ・・・ 半数以上
★★★★☆ ・・・ 3人に1人程度
★★★☆☆ ・・・ 10人に1人程度
★★☆☆☆ ・・・ 少ない
★☆☆☆☆ ・・・ 非常に少ない

上の表記は一つの目安であり、同じ臓器の問題でも幅広い重症度がありえます。
したがって、★1つの表記になっていても、患者さんによってはそれが大きな問題になることがあることは注意してください。ただ、その頻度は★5つの問題に比べると少ないです。

『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』(日本リウマチ学会)などを参考に作成

目次

発熱・だるさ・疲れやすさ 

【頻度★★★★★ 重症度★〜★★】
インフルエンザにかかったときに、熱が出て体がだるくなりますが、SLEではこれと同じ免疫が体の中で起きています

人によっては熱や他の症状が改善しても、だるさだけがずっと残ることがあります。

どれくらいの人に起きる?
  • いずれもSLE患者さんによく見られます
    • 発熱 ・・・8割程度にあるという報告もあります
    • だるさ・倦怠感 ・・・9割程度にみられるという報告もあります

Cervera R, et al. Medicine (Baltimore). 2003;82:299-308.
Mertz P, et al. Lupus. 2020;29:1701-1709.

どんな症状がでる?
  • 発熱
    • 37度程度の微熱のことが多いですが、時に38-39度程度の高熱が出ることもあります。
  • だるさ・つかれやすさ
    • インフルエンザなどに感染したときに全身がだるくなることがあると思いますが、病気の原理的にはこれと同じことが体で起きています。
    • インフルエンザに似て、筋肉痛などが出ることもあります。
どうやって見つける・調べる?
  • 熱やだるさの原因が「SLEなのか、感染症なのか」の見分けが、とても重要です。
  • SLEに対して免疫を抑える治療をしていると感染症にかかりやすくなるため、同じ「熱」でも、原因が逆であれば治療も正反対になるからです。
  • またSLEと診断されていない段階では、特にウイルスの感染症で、発熱・倦怠感が持続することはあります。

  • 採血 ・・・炎症の値や、SLEの活動性を示す検査(補体、抗DNA抗体など)
  • 血液培養・尿培養 ・・・細菌がいないかを調べます
  • レントゲン・CT検査 ・・・SLEの他に熱を出す病気などがないかを調べます
治療は?

SLEによる発熱であれば、SLEの治療(ステロイドなど)で改善します。

こんな時は早めに主治医へ
  • 38度以上の熱が出た(特にステロイドや免疫抑制薬を使っている方)

SLEの病気が悪くなっているか、感染症や薬による可能性があります。

皮膚・粘膜

頻度★★★★★ 重症度 ★〜★★】
SLEでは、赤みや脱毛、口内炎などの様々な皮膚の症状がでます。特に日焼けなどの皮膚の刺激に誘発されることもあります。
非常によくみられる症状の一つですが、非常に多様で、薬の影響などと区別がつかないことも。
命に関わることはほとんどありませんが、見た目に出る症状のため、患者さんにとっての負担は決して小さくありません。

どれくらいの人に起きる?

概ね70-80%の人にみられます。

代表的な「蝶形紅斑」は 約58%、「光線過敏」は 約45% の方に、経過のどこかで起こります。〔Cervera R, et al. Medicine (Baltimore). 1993;72:113-124.〕

どんな症状がでる?

体の皮膚や、頭皮、口の中、爪など、さまざまな場所に、いろいろな種類の症状がでます。

体の皮膚の症状
  • 蝶形紅斑(ちょうけいこうはん) …両頬から鼻にかけて、蝶が羽を広げたような形の赤みが出ます。
    • 全身性エリテマトーデスの皮膚の症状として代表的と考えられています。
    • しかし他の病気や、病気でなくても似たような皮膚の症状を呈することはあり、この皮膚の見た目だけで全身性エリテマトーデスと診断することは非常に難しいです。
  • 日光過敏(光線過敏) …日光に当たると日焼けが激しくでることです。
    • 全身性エリテマトーデスそのものが悪化することもあります。
    • そのため、全身性エリテマトーデスと診断された方は基本的には日焼け止め・日傘・長袖など、太陽を避けていただくことが重要です。
頭部の症状
  • 脱毛 ・・・主に頭皮の毛が抜けることがあります。
    • すべての毛が抜けるというよりは、一部の毛が薄くなる方が多いです。
    • 髪の毛の質が変わり、もろく・抜けやすい毛になることがあります。
  • 口内炎 ・・・口の中に潰瘍(皮膚がえぐれた状態)になることです。
    • 全身性エリテマトーデスの口内炎は、上顎にできて、痛みを伴わない(無痛性)であることが特徴的です。
手の症状
  • 爪囲紅斑 ・・・爪の生え際の皮膚が赤みがかかることです。
    • 全身性エリテマトーデス以外でも起きますが、膠原病でよく見られる皮膚です。
  • レイノー現象 ・・・指が一本〜数本真っ白になり、紫色になった後、元の皮膚に戻る現象です。
    • 寒いところや体温の変化で起きます。そのため冬の方が起きやすいです。
    • 全身性エリテマトーデス以外の病気でも起きます。
どうやって見つける・調べる?
  • 診察 ・・・医師が実際に見て判断します
    • 全身性エリテマトーデスの診断がついていない段階では、よほど皮膚の所見が特徴的でない限りは、皮膚だけで診断することが難しい場合があります。
  • 皮膚生検 ・・・皮膚を小さく採って顕微鏡で調べます。他の皮膚の病気と区別が難しいときに行うことがあります。
    • 必ず行うわけではありませんが、特に「薬疹」と区別が必要な時は重要になることがあります。
治療は?
  • 日焼け対策 ・・・飲み薬・塗り薬と同じぐらい重要
    • 日傘や日焼け止め、長袖を着ていただくなど。
    • SLEの皮疹の症状が悪化するだけではなく、日焼けすることで、SLE全体が悪くなります

以下の治療は、皮膚の程度や他の臓器に問題があるかどうかで、患者さんごとに選択されます。

  • ステロイドの塗り薬
    • 顔や陰部などでは吸収されやすいため注意が必要。
    • ずっと使用し続けると副作用も多い。
  • ヒドロキシクロロキン(皮膚の症状によく効きます)
    • SLEの方全員に使えるなら使うべきとされる薬剤です。
    • この薬による皮膚の副作用や目の副作用には注意が必要です
  • 生物学的製剤 ・・・サフネロー(アニフロルマブ)
    • 皮膚の症状に特に効果があるとされる点滴の薬です。
こんな時は早めに主治医へ
  • 皮疹だけでなく熱やだるさが出てきた
  • 皮疹が急に広がった
  • 新しい薬を始めた後に、皮疹が悪くなった
    • SLEの病気が悪くなった可能性の他に、「薬疹」(薬の副作用・アレルギーなど)の可能性があります。
今後どうなる?後遺症はある?
  • 後遺症が残るタイプと残らないタイプの皮疹があります。
    • たとえば「円板状ループス」という種類の皮疹は、治ったあとに跡(瘢痕)や色の変化が残ることがあります。
  • 脱毛は、改善すればまた生えてくることが多いです。(稀に改善しない場合もある)

関節の症状

頻度 ★★★★★ 重症度 ★★

SLEの症状の中で最も多い症状のひとつです。
関節の「滑膜」という部分に炎症が起き、これによって痛み・腫れが起きます。
関節の症状は他の膠原病でも様々におきるため、これだけでSLEかは分からないことが多いです。

どれくらいの人に起きる?

SLEの患者さんの 約84% に、病気の経過のどこかで関節炎が起こります。〔Cervera R, et al. Medicine (Baltimore). 1993;72:113-124.〕(9割という報告もある)

初発症状(初めてでる症状)としても、半数程度の方に認めます。

全身性エリテマトーデスの患者さんでは、最もありふれた臓器障害の一つです。

どんな症状がでる?

全身性エリテマトーデスでは「関節炎」が起きることで、関節にさまざまな症状が現れます。

関節の症状

指・手・肘・肩・膝・足首など、どの関節でもありえますが、小さい関節にでやすいです。

  • 関節が腫れる
  • 痛みが出る(じっとしていても、動かしても痛い)
  • 関節が熱をもつ
  • 手がこわばる

(朝の)手のこわばり・動かしにくさ

手が特に朝にこわばる、という症状は、全身性エリテマトーデスに限らず、様々な病気でみられます。

こわばるからといって、必ずしも膠原病というわけではなく、最も多いのは変形性関節症です(いわゆるヘバーデン結節)。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

変形性関節症では、指の一番先端に症状が出やすいのに比べて、SLEではでにくいです。

関節リウマチとの違い

関節に症状がでる膠原病に関節リウマチがありますが、全身性エリテマトーデスとは一部異なります。

関節リウマチとSLEの関節炎の違い
  • 関節炎の出る関節は、関節リウマチとよく似ている
    • 手の指・手首などの小さい関節に痛みや腫れがでます
  • 関節リウマチでは無治療では関節が破壊されてしまうが、SLEでは通常破壊は起きない
    • 関節リウマチでは、治療が充分でないと、骨が破壊されてしまい関節が変形します。
    • 全身性エリテマトーデスでは普通はそのような骨の破壊は起きません(10%程度で破壊が生じるという報告もある)
どうやって見つける・調べる?
  • 診察 ・・・医師が実際に関節を触って、関節炎があるかを確認します。
    • ある程度習熟した医師でないと判断が難しく、また診察では関節炎を判断しきれないこともあります。
  • 超音波(エコー)検査 ・・・関節の中の炎症を確認します。
  • レントゲン ・・・骨が壊れていないかを確認します(後述)

関節炎は、感染症をはじめ、さまざまな病気で起こります。関節が腫れているからといってSLEとは限らないため、関節炎だけからSLEと診断することはすぐには難しいことが多いです。

治療は?

多くは、一般的な全身性エリテマトーデスの治療で改善します。
関節の症状だけで、強力な免疫抑制薬が必要になることはあまりありません。

こんな時は早めに主治医へ
  • 1つの関節だけが急に赤く腫れて、強く痛む(感染の可能性があります)。
  • 全身の関節に痛みが出て、動けない・生活がままならない。
今後どうなる?後遺症はある?

基本的には治療すれば改善し、後遺症が残らないことが多いです。

ただ一部のSLEの方は、関節に変形が残る場合があります。(関節リウマチを合併した場合など)

腎臓(ループス腎炎)

頻度 ★★★★ 重症度 ★★★★
SLEの中で最も重要な臓器障害のひとつです。

腎臓は、血液をこして、いらないものを尿として捨てる臓器です。その「こす部分」を糸球体(しきゅうたい)といい、非常に細かい血管のかたまりでできています。

SLEでは、免疫の異常によってできた物質(免疫複合体といいます)が糸球体に貯まり、炎症を起こします。これを ループス腎炎 と呼びます。 こす機能が壊れると、本来は捨ててはいけないタンパクが尿にもれ出し、逆に捨てるべき老廃物が体にたまります。

正確に診断するためには腎臓に針を刺して腎臓を少しだけ取ってくる「腎生検」が必要です。

どれくらいの人に起きる?

日本ではSLE患者さんの およそ50% に合併すると報告されています。

最初に出てこなくても、後からループス腎炎がでてくることもあります。

どんな症状がでる?
  • 最初にはほとんど自覚症状がでません
  • 腎臓が壊れてくると、以下の症状が出ることがあります。
    • 足がむくむ
    • 尿が泡立つ
    • 血圧が上がる

人によっては、ループス腎炎が進んでも症状が出ない人もいれば、上記の症状がでても、ループス腎炎のせいではないことがあるため、基本的には検査が必要です。

どうやって見つける・調べる?
  • 尿検査 ・・・タンパク尿・血尿がでます。
    • ほとんどのループス腎炎では、尿検査で異常がでることが多いです。
  • 採血 ・・・腎臓の働きを示す値(クレアチニンなど)を確認します。
    • クレアチニンが悪くなっているということは、すでに腎臓の調子が悪くなっているということです。ループス腎炎の初期には採血では異常がないこともあります。
    • むしろ採血で異常がでていない段階で拾い上げて治療することが重要です。
  • 腎生検 ・・・腎臓に針を刺して組織を少し採り、顕微鏡で調べる検査です。
    • 手術ではなく、全身麻酔も必要ありませんが、検査後は止血のために1日横になっていただく必要があります。
    • ループス腎炎にはいくつもの種類があり、種類によって治療がまったく異なるため、治療を始める前に種類を確認することが重要です
    • 最初は腎炎がなかった方が後から発症したり、種類が変わったりすることもあるため、1度よくなっても悪くなった場合(再燃)には、もう一度腎生検を行うことがあります

Yokoyama H, et al. Clin Exp Nephrol. 2011; 15: 321-330.

治療は?

腎生検によって確かめられた種類に応じた治療が必要です。

時に、非常に強力な治療が必要になることもあります。

  • ステロイド(パルス療法も含む)
  • セルセプト®(ミコフェノール酸モフェチル)
  • タクロリムス
  • ルプキネス®(ボクロスポリン)
  • エンドキサン®(シクロホスファミド)
  • リツキサン®(リツキシマブ) など。
こんな時は早めに主治医へ
  • 足やまぶたのむくみがでてきた
  • 尿の泡立ちが目立つようになった
  • 尿の量が明らかに減った
  • 血圧が急に上がった
今後どうなる?後遺症はある?
  • かつては腎不全に至る方も少なくありませんでしたが、治療の進歩により、10年後に腎臓が保たれている割合は8〜9割まで改善しています。
  • 早く見つけて治療を始めるほど、腎臓を守ることができます。
  • 1度よくなったと思っても治療を続けることが大切です。

漿膜炎(胸膜炎・心膜炎)

頻度★★★★ 重症度 ★★
肺や心臓は、「膜」という薄いシートのようなもので包まれています。肺を包むものを「胸膜」、心臓を包むものを「心膜」、お腹の中の臓器を包むものを「腹膜」といい、これらをまとめて 漿膜(しょうまく) と呼びます。
SLEでは、免疫がこの膜を攻撃して炎症を起こし、痛みが出たり、膜と臓器のあいだに水がたまったりします。(それぞれ、胸水・心膜液(心嚢水)・腹水と呼ぶ)

どれくらいの人に起きる?
  • 胸膜炎・・・約36%
  • 心膜炎・・・約20%

比較的多い臓器障害の一つです。

Cervera R, et al. Medicine (Baltimore). 1993;72:113-124

どんな症状がでる?
  • 胸膜炎 ・・・ 何も症状がない方も多いです。
    • 特に息を大きく吸うときや、咳をするときに、胸のあたりが痛む症状が出ます。
    • 胸の中に水(胸水)がたまることがあります。量が多いと、動くときに息苦しさが出ることもあります。
  • 心膜炎 ・・・ 何も症状がない方も多いです。
    • 胸の中央あたりに痛みが出ることがあります。
      • 教科書的には前かがみになると楽になり、仰向けで寝ると強くなるとされますが、筆者の経験上はそこまで典型的な症状が出る方は少ないように思います。
    • 心臓の周りに水(心嚢水・心膜液)がたまり、量が多いと、動くときに息苦しさが出ることもあります。
どうやって見つける・調べる?
  • 胸部レントゲン・CT検査 ・・・胸の水(胸水)・心臓の周りの水を確認します
  • 胸腔穿刺 ・・・背中や脇から針を刺して水を採り、中身を調べることがあります。
    • 胸水は心不全・感染症・悪性腫瘍など他の原因でも起こるためです。
    • 画像検査だけでは、この原因までは分からないことが多いです。
  • 心臓の超音波検査(心エコー)・・・心嚢水を確認します。
    • 心臓に針を刺すのは、心臓が動いているためリスクが高く、心臓の周りの水を刺すことは多くありません。(もちろん、やった方が利益が大きければ行います。)
治療は?

SLEの漿膜炎は、ステロイドが比較的よく効くことが多い症状です。 

ステロイドは副作用が多いため、これを減らすために、他の免疫抑制薬を使っていきます。

  • 量が多い場合には、胸腔穿刺・心膜穿刺を行い、物理的に水を抜いてくる必要があることがあります。
    • 例えば呼吸が苦しいときや、心臓の周りの水で、心臓がうまく働かないときなど。
  • 心臓の周りの水で、心臓がうまく働かないことを、心タンポナーデといい、極めて緊急性の高い(つまりすぐに命に関わる)状態です。その場合は緊急で心臓の周りの水を抜く必要があります。
こんな時は早めに主治医へ
  • 息を吸うと胸が痛む
  • 急に息苦しくなった、脈が速くなった
今後どうなる?後遺症はある?

適切に治療すれば、後遺症を残さず改善することがほとんどです。

抗リン脂質抗体症候群(APS)

頻度 ★★★ 重症度 ★〜★★★★
これは正確にはSLEの臓器障害ではなく、SLEに合併しやすい「別の病気」です。

「抗リン脂質抗体」という自己抗体のせいで、血液が固まりやすくなってしまう病気です。

その結果、血管の中に血の塊(血栓)ができたり、妊娠にトラブルが起きたりします。 

治療がSLEとまったく違い、血液をさらさらにする薬が必要です。

どれくらいの人に起きる?
  • 全身性エリテマトーデスの方の10−20%に合併するといわれています。 J Autoimmun 2000;15:145 
どんな症状がでる?

血栓症

動脈と静脈の両方に血栓ができやすくなるのが大きな特徴です。
人によって、どちらにもできたり、片方だけだったりと多様です。

動脈血栓症(動脈に血の塊ができる)
  • 脳梗塞 ・・・脳を栄養する血管の中に血栓ができる
  • 心筋梗塞 ・・・心臓を栄養する血管(冠動脈)の中に血栓ができる
静脈血栓症(静脈に血の塊ができる)
  • 深部静脈血栓症 ・・・足の静脈に血栓ができる。
    • 片方の足がむくんだり痛んだりします。
  • 肺塞栓症 ・・・肺の血管に血栓がつまること。
    • 深部静脈血栓症から血栓が飛んで起きることが多いです(長時間の飛行機などで起こる「エコノミークラス症候群」も同じしくみです)

妊娠に関わる問題

妊娠に関わる問題
  • 不育症(流産・死産をくり返してしまう)
    • 一般的な流産が妊娠初期に多いのに対し、APSでは妊娠10週以降の流産・死産が多いのが特徴です
  • 胎児発育不全・早産
    • 妊娠高血圧腎症、胎盤の機能低下などによって、胎児の発育に問題が起きることがあります。

※APSは、妊娠しにくくなる(不妊)病気ではありません。
妊娠しても、胎児の発育が悪くなってしまう病気です。

どうやって見つける・調べる?
  • 採血 ・・・自己抗体を測定します。(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2GP1抗体など)
    • 診断のためには12週間以上あけて2回測ることが必要です。
  • 血栓を調べる検査
    • 造影CT検査、足の超音波検査、心臓の超音波検査、頭部MRI検査など
治療は?

APSの血栓症は、免疫抑制薬ではなく「血を固まりにくくする薬」(抗凝固薬・抗血小板薬)で治療・予防するのが基本です。

治療は、どれくらい血栓症ができやすいか、血栓ができたことがあるか、妊娠しているかどうかで決まります。

この疾患は、治療や予防についても一定の見解がでていないところが多く、主治医による患者さんごとの判断が重要です。そのため、以下の説明は一例であることに注意してください。

  • 血栓が非常にできやすい方
    • 血栓が非常にできやすい方は血液検査で予想できることがあります。
    • その場合は、血栓ができていなくても、バイアスピリン等で予防することがあります。
  • 血栓症を起こしたことがある方
    • ワルファリン・バイアスピリンなどの血液サラサラの薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を長期に続けます
  • 妊娠中の方
    • 妊娠を考えている方は、妊娠前に必ず主治医にご相談ください。 薬の調整が必要です。
    • ワルファリンは胎児に影響するため使えず、ヘパリン注射+少量のアスピリンに切り替えます
  • 他の血栓症で使われるDOAC(直接経口抗凝固薬)は、APSでは効果が劣る場合があり、使用しないことがあります。
こんな時は早めに主治医へ
  • 片方の手足が急に動かなくなった・ろれつが回らない(脳梗塞)
  • 胸が締めつけられるように痛む(心筋梗塞)
  • 片方の足だけが急に腫れて痛む(深部静脈血栓症)
  • 急に息が苦しくなった(肺塞栓症)
今後どうなる?後遺症はある?

治療を続けることで、血栓症の再発は大きく減らすことができます。

1度、血栓ができることによって障害された臓器(脳や心臓)は回復することが難しいことが多いため、予防が非常に重要です

ごくまれ(APSの1%未満)ですが、短期間に全身のあらゆる場所に血栓ができ、命に関わる状態になることがあります(劇症型抗リン脂質抗体症候群)。
感染症や抗凝固薬の中断が引き金になることがあるため、自己判断で薬を中断しないことが大切です。

神経(NPSLE)

頻度★★★ 重症度 ★★★〜★★★★★】

脳や神経が、SLEによって障害されることを神経精神ループス(NPSLE)と呼びます。

気分の浮き沈みといった軽いものから、けいれん、意識障害、力が入らない、感覚が鈍いといった症状まで、非常に多彩であり、SLEの中で、最も重要になりえ、最も診断が難しい臓器障害の一つです。

用語として、SLEによる神経・精神の障害を広く指すものであり、特定の病気や状態を指す用語ではありません。

どれくらいの人に起きる?

診断が非常に難しい分、報告によって大きく差があります。
約15~45%とされますが、報告ごとで、どこまでをNPSLEと考えているかも違うため、正確な頻度は不明です。

Unterman A, et al. Semin Arthritis Rheum. 2011;41:1-11.

どんな症状がでる?

非常に多彩です。

  • 中枢神経・末梢神経症状
    • 痙攣(けいれん)
    • 体に力が入らない、体がしびれる、感覚が鈍い
    • 自律神経障害 など
  • 精神症状
    • 幻覚や妄想
    • 気分の落ち込み(うつ状態)
    • 病的な不安 など

全身性エリテマトーデスという病気に診断された状態で不安であることは全く当然の反応です。
しかし、あまりにも不安が強く、日常生活や仕事に支障が出て、正常な反応を逸脱している場合に、神経精神ループスの可能性がでてきます。
注意していただきたいことは、不安があれば、何でも神経精神ループスというわけではありません。

どうやって見つける・調べる?
  • 頭のCT・MRI検査
  • 髄液検査 ・・・背中から針を刺して、髄液(脳の周りの液体)を採って調べます
  • 脳波検査
  • 採血 

ただ、これらの検査がすべて正常であったとしても、神経精神ループスではないとは言い切れないこともあります。

また、以下と区別が必要です。

  • 薬剤性(特に、ステロイドによるもの)
    • ステロイドを使用すると、精神症状(不眠・不安などさまざま)が出現することがあります。(ステロイドサイコーシスと呼ばれる)
    • 神経精神ループスとの区別が非常に難しい場合があります。
  • せん妄
    • 特に入院されていると、自分が入院していることが分からなくなったり、注意が散漫になったりします。
    • これは環境によるもので、正常な状態になったり、また悪くなったりと変動することが特徴です。
    • これも区別が非常に難しい場合が多いです。
  • 感染症
    • 特殊な脳の感染症などを除外する必要があることがあります。
治療は?

症状の重さ・種類によって大きく異なります。

  • 炎症によって起きていると考えられるもの(つまり免疫抑制薬が効果があるもの)は免疫抑制薬
  • 血栓(血の塊)によって起きていると考えられるものは、抗血小板薬(血をさらさらにする薬)など
  • 痙攣では、抗痙攣薬(痙攣に対する薬剤)
  • 不安や気分の落ち込みに対しては、精神的な薬(抗不安薬など)

現実的には、上の原因を推定することも難しいことが多いため、非常に治療も難しいことが多いです。

こんな時は早めに主治医へ
  • 以下の時は、直ちに受診しましょう!
    • いつもと様子がおかしい
    • けいれんを起こした
    • 意識がおかしい
    • 呼びかけへの反応が鈍い
    • 急に手足が動かなくなった
    • ろれつが回らない など
今後どうなる?後遺症はある?

病状によって大きく異なります。

気分の変化であれば、命に関わることはほとんどありません。

一方、けいれんや意識障害をともなう重いタイプでは、治療が遅れると後遺症が残ることがあります。

また、治療で改善しても再発することがあり、注意が必要です。

貧血

頻度 ★★ 重症度 ★★★
赤血球は、全身に酸素を運ぶ血液の細胞です。
SLEの方が貧血になる原因はさまざまですが、そのひとつに 自己免疫性溶血性貧血(AIHA) があります。 これは、免疫が自分の赤血球を攻撃して壊してしまう病気で、SLEと同時に起きることがあります。

どれくらいの人に起きる?

およそ50%程度の患者さんが、どこかで貧血がみられると考えられています。

Giannouli S, et al. Ann Rheum Dis. 2006;65:144-148.

どんな症状がでる?
  • 軽度の場合には、自覚症状はありません
  • 貧血が重症になると
    • 動くと息切れ・動悸がする
    • 疲れやすい
    • 皮膚や白目が白くなる

一般的に「貧血」といわれる立ち上がったときにふらついたり、立ったときに意識を失う、という症状は上に述べた症状よりは起きないことが多いです。

またゆっくり貧血が進んだ場合、体が慣れるので、症状がほとんどないこともよくあります。

どうやって見つける・調べる?
  • 採血・・・赤血球の数、ヘモグロビン を確認します。
  • 赤血球が自分の免疫によって破壊される(自己免疫性溶血性貧血・AIHA)や、ほかの貧血の原因を採血で確認します。
治療は?

AIHAであれば、ステロイドを中心とした治療を行います

こんな時は早めに主治医へ
  • 階段で息切れするようになった
  • 動悸が続く など、貧血を疑う症状が出てきたときには主治医に相談しましょう。
今後どうなる?後遺症はある?

AIHAなら治療がある程度効果があることが多いです。

血小板減少

頻度 ★★★ 重症度 ★★〜★★★★】
血小板は、けがをしたときに血を止める、血液の中の細胞です。

SLEでは、さまざまな原因で血小板が減ることがあります。

極端に血小板が減ると、血が止まりにくくなり、歯茎や皮膚から出血したり、時に命に関わる場合もあります

どれくらいの人に起きる?

患者さんの10%程度におきると考えられています。

Cervera R, et al. Medicine (Baltimore). 2003;82:299-308.

どんな症状がでる?
  • 軽度の場合には、自覚症状はありません
  • 血小板減少が重症になると
    • 鼻血がでやすい、歯磨きしたときに歯ぐきからの出血しやすい
    • あざができやすくなる
    • 足に赤い点々(点状出血)が出る
どうやって見つける・調べる?
  • 採血・・・定期的な血液検査が必要です
  • 血小板が大きく減り、出血している可能性がある場合には、出血源を特定するために造影CT検査が必要な場合もあります。
  • SLEに合併する血小板減少の原因は非常に多くあり、原因がはっきりしないこともあります。
    • 抗リン脂質抗体症候群(APS)
    • 免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)
    • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
    • 薬剤性
治療は?

多くの場合は治療は必要ない程度のことが多いです。

大きく減った場合や出血症状がある場合には、原因に応じた治療が必要です。

こんな時は早めに主治医へ
  • 症状がでたときには、すでに血小板が大きく減少している可能性があるため、主治医に早めに相談しましょう。
    • 鼻血がでやすい、歯磨きしたときに歯ぐきからの出血しやすい
    • あざができやすくなる
    • 足に赤い点々(点状出血)が出る
  • 血小板が少ないといわれている方で、転倒したり頭を強く打った場合にはすぐに相談しましょう。
今後どうなる?後遺症はある?

経過観察だけで、問題のない方も多いですが、急に大きく減少することもあります。

治療によく反応することが多い一方、再燃をくり返す方もいらっしゃいます。

肺高血圧症

頻度 ★★ 重症度 ★★★★
一般的な「高血圧」と異なり、肺の中の血圧が上がってしまう病気です。逆に普通の血圧は正常なままのことがほとんどです。

心臓は肺に血液を送り出していますが、肺の血管の圧が上がると、心臓はより強い力で押し出さなければならなくなり、治療しないと最終的には心臓がうまく血液が送れなくなる非常に危険な病気です。

どれくらいの人に起きる?

8%程度におきると考えられています。

肺高血圧症自体は、SLEに固有の問題ではなく、SLEに合併しないことのほうが多いです。

Lv TT, et al. Ir J Med Sci. 2018;187:723-730.

どんな症状がでる?

初期や、ゆっくりと進む場合には症状が出ないこともあります。

  • 動くと息が苦しい(最も多い症状です)
  • 疲れやすい
  • 動悸
  • 進行すると、足のむくみ、失神

動くときの息切れを、運動不足のせいと考えていて、主治医にいわないと見落とされてしまう可能性もあります。

どうやって見つける・調べる?
  • 心臓の超音波検査(心エコー)・・・まずこの検査で疑います
  • 右心カテーテル検査・・・首や足の付け根から心臓まで細い管を入れて、肺の血管の圧を直接測ります。確定診断にはこの検査が必要です
  • 運動時心カテーテル
    • 普通にカテーテル検査をやっても正常ですが、運動すると異常になることもあるため、カテーテルをしながらバイクをこいでもらうなど、運動しながらカテーテル検査をすることもあります。
治療は?

肺の血管を広げる薬を使います。

SLEに合併したものでは、免疫抑制療法が効くこともあります。

こんな時は早めに主治医へ
  • 以前は平気だった階段や坂道で、息が切れるようになった
  • 失神した(気を失った)
  • 目の前が暗くなった
今後どうなる?後遺症はある?

治療薬の進歩により大きく改善していますが、依然として様々な治療によっても進行してしまうことはあります。

腸管(ループス腸炎)

頻度 ★ 重症度 ★★★★★

特に小腸がSLEによって障害される状態です。

稀な状態ではありますが命に関わることも多い、危険な病気です。

SLEが最初に腸炎で起きると、SLEであることが診断されず、腸炎として対処され、診断が遅れることがあります。

どれくらいの人に起きる?

少なく、明確なデータがあまりありません。

どんな症状がでる?

症状がないことは通常ありません。
ひどい腸炎のような症状が起きます。

  • 腹痛(最も多い症状です)
  • 下痢
  • 吐き気・嘔吐
  • 血便
どうやって見つける・調べる?
  • 造影CT検査 ・・・造影剤を使ったCT検査によって、腸の状態を確認します。
    • 特徴的な画像所見があり、それで診断することもおおいです。

SLEの診断がついていない時点では、普通の腸炎と区別することは難しく、診断が遅れてしまうことはあります。

治療は?
  • すぐにステロイドなどの強力な治療を開始します。

開始後でも腸が破れてしまったり、それによって緊急手術や腸を切らなければならないこともあります。(その場合は一時的に人工肛門にしなければならないこともあります)

こんな時は早めに主治医へ

腸炎の症状が出たときは、早めに主治医に相談しましょう。
数日で治る分には問題ありませんが、通常の腸炎と違って治りが悪い場合なども相談しましょう。

  • 強い腹痛・下痢・嘔吐が続く
  • 気持ちが悪いことによって薬が飲めない
  • 腹痛に加えて、血便が出た
今後どうなる?後遺症はある?

もろくなった腸の壁に穴が空いてしまい(穿孔)、緊急手術が必要になったり、命に関わったりすることがあります。

それがなければ後遺症なく治ることが多いですが、繰り返すこともあります。

膀胱(ループス膀胱炎)

頻度  重症度 ★★★

ループス膀胱炎は、SLEによって膀胱の壁に炎症が起きるまれな病気です。
症状は普通の膀胱炎とそっくりですが、原因が細菌ではないため、抗菌薬では治りません。

時に、ループス腸炎と同時に存在することがあります。

どれくらいの人に起きる?

少なく、明確なデータがあまりありません。

どんな症状がでる?

普通の膀胱炎とほとんど同じ症状で、SLEと診断されていなければ診断が難しいことが多いです。

  • 頻尿(トイレが近い)
  • 排尿するときに痛みがでる
  • 残尿感(トイレに行っても残っている感じ)
どうやって見つける・調べる?
  • 尿検査
  • CT検査・超音波検査
  • 膀胱鏡

普通の膀胱炎と区別がつかないことが多く,まずは抗菌薬の反応性を確認することも多いです。

また、SLEであることが分かっている場合では、ループス腎炎との区別が重要になります。

治療は?

ステロイドなどの免疫抑制療法を行います。

こんな時は早めに主治医へ
  • 膀胱炎の症状が、抗菌薬を飲んでも治らない

SLEの方は免疫抑制薬を使っており、通常の方より膀胱炎になりやすかったり、繰り返すこともあるため、診断が難しいこともあります。

今後どうなる?後遺症はある?

早期に治療すれば改善しますが、診断が遅れると腎臓の機能に影響することがあります。

肺胞出血

頻度 ★ 重症度 ★★★★★

肺は、「肺胞(はいほう)」という小さな袋の集まりでできています。

肺胞出血は、SLEによってこの肺胞のまわりの細い血管が壊れ、肺の中で出血が起きる病気です。

肺胞が血でいっぱいになると、酸素を取り込めなくなります。 まれですが、SLEの中で最も命に関わる臓器障害のひとつです。

どれくらいの人に起きる?

少なく、明確なデータがあまりありません。

どんな症状がでる?

血痰がでる、という点が非常に重要です。普通の風邪かなと思っても、血痰が出る場合は必ず主治医にいいましょう。

咳のしすぎで、喉が傷ついて血痰が出る場合もあり得るので、血痰があれば必ず肺胞出血というわけではありません。逆に、血痰がでない肺胞出血もあります。

  • 血の混じった痰が出る(血痰)
  • 急に息が苦しくなる
どうやって見つける・調べる?
  • 胸部レントゲン・CT検査 ・・・ 見た目で肺胞出血を確認します
    • ただし、CTだけでは肺に起きている問題が、肺胞出血なのか分からないこともあります。
  • 採血 ・・・急に貧血が進むことが手がかりになります。
  • 気管支鏡 ・・・口や鼻から細いカメラを入れ、肺の中を洗って出血を確認する必要がある場合があります。

SLE以外にも、感染症や心不全などでもおきます。

治療は?

ステロイドパルスなど、強力な治療をただちに開始します。 

呼吸の状態によっては、人工呼吸器が必要になることもあります。

こんな時は早めに主治医へ
  • 血の混じった痰が出た

この症状と、自分がSLEであることを伝えることが非常に重要です。

今後どうなる?後遺症はある?

非常に重症で、命に関わることも少なくありません。

おわりに

ここまでさまざまな症状について説明しました。

臓器障害によっては命に関わるものもあり、皆さん不安になられたかもしれません。

残念ながら現代の医学では、誰にどのような臓器障害が現れるかを予想することはできません。

そのため、定期的に通院して、患者さんに合わせた検査・治療を行っていくことが非常に重要です。

主治医と協力して、この難しい病気に立ち向かっていきましょう。

本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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