ベーチェット病と指定難病

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ベーチェット病は指定難病に指定されています。
指定難病とは、難病の中でも、医療費助成を受けられる病気のことです。

しかしベーチェット病の方が全員医療費助成を受けられるわけではなく、むしろ難病を申請するメリットがない方もいらっしゃいます。
また、ベーチェット病は非常に診断が難しく、「不完全型」「疑い」といった定義も存在します。

ベーチェット病の指定難病に関連する、診断基準・重症度、そして2027年からの運用についてもまとめます。

目次

ベーチェット病と指定難病で難病を申請した方がよい人

ベーチェット病は指定難病ですが、必ずしも患者さん全員が難病を申請した方がいいわけではありません。
難病を申請するメリットは主に医療費の助成を受けられるということです。

そして医療費助成を受けるためには、診断されるだけでなく、重症度分類を満たす必要があります。
さらに、医療費助成は、月の医療費が一定の額を超えると、超えた分が免除されます
ベーチェット病に置いては、重症度基準のⅡ度以上が必要になります。

多くの膠原病の中でも、ベーチェット病は関節炎が存在するだけでⅡ度以上に該当するため、重症度を満たすことはそこまで難しくありません。

また、StageⅠで、重症基準を満たさなくても、TNF阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)などを使用していれば医療費総額(10割)は月33,330円を大きく超えるため、軽症高額該当の対象になります。

ベーチェット病の診断基準・重症度分類

厚生労働省が提示している、診断基準・重症度分類をそのまま提示します。

ベーチェット病の診断基準

(厚生労働省ベーチェット病診断基準 2010年小改訂)

完全型、不全型及び特殊病変を対象とする。

1.主要項目

主症状

  • 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
  • 皮膚症状
    • (a)結節性紅斑様皮疹
    • (b)皮下の血栓性静脈炎
    • (c)毛嚢炎様皮疹、痤瘡様皮疹
      • 参考所見:皮膚の被刺激性亢進(針反応)
  • 眼症状
    • (a)虹彩毛様体炎
    • (b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)
    • (c)以下の所見があれば(a) (b) に準じる。
      • (a) (b) を経過したと思われる虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球癆
  • 外陰部潰瘍

副症状

  • 変形や硬直を伴わない関節炎
  • 精巣上体炎
  • 回盲部潰瘍で代表される消化器病変
  • 血管病変
  • 中等度以上の中枢神経病変

病型診断のカテゴリー

  • 完全型
    • 経過中に(1)主症状のうち4項目が出現したもの
  • 不全型
    • (a) 経過中に
      • (1)主症状のうち3項目 あるいは
      • (1)主症状のうち2項目と(2)副症状のうち2項目 が出現したもの
    • (b) 経過中に定型的眼症状とその他の
      • (1)主症状のうち1項目 あるいは
      • (2)副症状のうち2項目が出現したもの
  • 疑い
    • 主症状の一部が出現するが、不全型の条件を満たさないもの、及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
  • 特殊型
    • 完全型又は不全型の基準を満たし、下のいずれかの病変を伴う場合を特殊型と定義し、以下のように分類する。
      • (a)腸管(型)ベーチェット病―内視鏡で病変部位を確認する。
      • (b)血管(型)ベーチェット病―動脈瘤、動脈閉塞、深部静脈血栓症、肺塞栓のいずれかを確認する。
      • (c)神経(型)ベーチェット病―髄膜炎、脳幹脳炎など急激な炎症性病態を呈する急性型と体幹失調、精神症状が緩徐に進行する慢性進行型のいずれかを確認する。
ディップ先生

ベーチェット病の診断は「4徴」といわれる主症状がすべて揃えば「完全型」として典型的に診断できますが、すべて揃う人は多くありません。
非典型的な場合も多く、これらを「不全型」「疑い」と呼んでいます。
このうち、指定難病とされるのは、「完全型」「不全型」のみです。

ただこれは、指定難病の制度上の話であり、「疑い」だからといってベーチェット病ではない、という意味ではありません。

この検査をやればベーチェット病かどうか分かる、という病気ではなく、症状や検査でベーチェット病らしい結果で、かつほかの病気ではないことが分かって初めて診断できる病気です。
そのため、様々な検査が必要ですし、人によってはそれでもしっかり診断がつかないということはあります

2.検査所見(必須ではない。)

  • 皮膚の針反応の陰・陽性
    • 20~22G の比較的太い注射針を用いること
  • 炎症反応
    • 赤沈値の亢進、血清CRPの陽性化、末梢血白血球数の増加、補体価の上昇
  • HLA-B51の陽性(約60%)、A26(約30%)。
  • 病理所見
    • 急性期の結節性紅斑様皮疹では、中隔性脂肪組織炎で、浸潤細胞は多核白血球と単核球である。初期に多核球が多いが、単核球の浸潤が中心で、いわゆるリンパ球性血管炎の像をとる。全身的血管炎の可能性を示唆する壊死性血管炎を伴うこともあるので、その有無をみる。
  • 神経型の診断においては、髄液検査における細胞増多、IL-6増加、MRIの画像所見(フレア画像での高信号域や脳幹の萎縮像) を参考とする。

3.参考事項

  • 主症状、副症状とも、非典型例は取り上げない。
  • 皮膚症状の(a) (b) (c) はいずれでも多発すれば1項目でもよく、眼症状も(a) (b)どちらでもよい。
  • 眼症状について
    • 虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎を経過したことが確実である虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球癆は主症状として取り上げてよいが、病変の由来が不確実であれば参考所見とする。
  • 副症状について
    • 副症状には鑑別すべき対象疾患が非常に多いことに留意せねばならない(鑑別診断の項参照)。
    • 鑑別診断が不十分な場合は参考所見とする。
  • 炎症反応の全くないものは、ベーチェット病として疑わしい。また、ベーチェット病では補体価の高値を伴うことが多いが、γ グロブリンの著しい増量や、自己抗体陽性は、むしろ膠原病などを疑う。
  • 主要鑑別対象疾患
    • (a)粘膜、皮膚、眼を侵す疾患
      • 多型滲出性紅斑、急性薬物中毒、ライター(Reiter)病
    • (b)ベーチェット病の主症状の1つを持つ疾患
      • 口腔粘膜症状 : 慢性再発性アフタ症、急性外陰部潰瘍(Lipschutz潰瘍)
      • 皮膚症状 : 化膿性毛嚢炎、尋常性痤瘡、結節性紅斑、遊走性血栓性静脈炎、単発性血栓性静脈炎、スイート(Sweet)病
      • 眼症状 :サルコイドーシス、細菌性および真菌性眼内炎、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、HTLV-1関連ぶどう膜炎、トキソプラズマ網膜炎、結核性ぶどう膜炎、梅毒性ぶどう膜炎、ヘルペス性虹彩炎、糖尿病虹彩炎、HLA-B27関連ぶどう膜炎、仮面症候群
    • (c)ベーチェット病の主症状及び副症状とまぎらわしい疾患
      • 口腔粘膜症状:ヘルペス口唇・口内炎(単純ヘルペスウイルス1型感染症)
      • 外陰部潰瘍 :単純ヘルペスウイルス2型感染症
      • 結節性紅斑様皮疹:結節性紅斑、バザン硬結性紅斑、サルコイドーシス、Sweet病
      • 関節炎症状 :関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症などの膠原病、痛風、乾癬性関節症
      • 消化器症状 :急性虫垂炎、感染性腸炎、クローン病、薬剤性腸炎、腸結核
      • 精巣上体炎 :結核
      • 血管系症状 :高安動脈炎、バージャー(Buerger)病、動脈硬化性動脈瘤、感染性動脈瘤
      • 中枢神経症状:感染症・アレルギー性の髄膜・脳・脊髄炎、全身性エリテマトーデス、脳・脊髄の腫瘍、血管障害、梅毒、多発性硬化症、精神疾患、サルコイドーシス

ディップ先生

これは1970年代の厚生省研究班の基準を起源とし、小改訂を重ねてきた日本独自の基準です。 特異的な検査所見がないため、症状の組み合わせで診断するという構成になっています。
国際的な分類基準としては、口腔潰瘍を必須項目とするISG基準(1990年)や、点数制のICBD(2014年)などがあります。
このような「分類」基準と「診断」基準は、その意味や背景が大きく異なります(詳しく知りたい方は下のサイトを参照ください)https://note.com/rheumtomoni/n/n13d6c2e17671

ベーチェット病の重症度分類

II 度以上を医療費助成の対象とする。

ベーチェット病の重症度基準

  • StageI・II については活動期(下記参照)病変が1年間以上みられなければ、固定期(寛解)と判定するが、判定基準に合わなくなった場合には固定期から外す。
  • 失明とは、両眼の視力の和が 0.12 以下又は両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のものをいう。
  • ぶどう膜炎、皮下血栓性静脈炎、結節性紅斑様皮疹、外陰部潰瘍(女性の性周期に連動したものは除く。)、関節炎症状、腸管潰瘍、進行性の中枢神経病変、進行性の血管病変、精巣上体炎のいずれかがみられ、理学所見(眼科的診察所見を含む。)あるいは検査所見(血清CRP、血清補体価、髄液所見、腸管内視鏡所見など)から炎症兆候が明らかなもの。

ディップ先生

関節炎や虹彩毛様体炎(いわゆる、「ぶどう膜炎」)が存在すると重症度がⅡを超え、医療費助成の対象となるため、比較的ハードルが低いです。

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項

  • 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る) 。
  • 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
  • なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする

留意事項の3つめは、軽症高額該当と呼ばれています。基本的にはすべての指定難病について、同様の記述があります。
具体的には、認定基準に該当しない場合(つまり軽症など)でも、申請月以前の12か月以内に医療費総額(10割)が33,330円を超える月が3回以上あれば支給認定が行われます。この「医療費総額」は窓口負担額ではなく保険者負担を含む10割の金額で、3割負担なら窓口約1万円に相当します。

指定難病の変更(2027年度)

令和9年(2027年度)4月から、ベーチェット病の指定難病の診断基準・重症度分類が一部変更になります。

結論からいうと、現在指定難病になっている方、今後提出する方にも影響のない軽微な変更でした。

診断基準の変更点

鑑別するべき疾患のリストが大幅に変更されていますが、診断基準の自体は変わりません。
また、細かいところですが番号の振り方が全面的に変更されました。

ベーチェット病は目・口・皮膚・関節など全身の症状を呈する疾患であるため、各起きる臓器ごとに丁寧に鑑別していくことが重要になります。

  • 全身的に鑑別が必要な疾患
    • 自己炎症症候群(PFAPA症候群、A20ハプロ不全症など)
    • 膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
    • 成人スチル病、スイート病、MAGIC症候群、骨髄異形成症候群(トリソミー8, VEXAS症候群など)
  • 個々の病変と鑑別が必要な疾患
    • 口腔粘膜病変
      • 単純ヘルペスウイルス感染症、手足口病、水痘・帯状疱疹、カンジダ性口内炎、慢性再発性アフタ、天疱瘡・類天疱瘡、扁平苔癬、急性薬物中毒
    • 皮膚病変
      • 毛嚢炎、ざ瘡、結節性紅斑、スイート病、多形紅斑、好中球性皮膚症
    • 眼病変
      • ヘルペス性虹彩炎、ウイルス性網膜炎、梅毒性ぶどう膜炎、結核性ぶどう膜炎、眼トキソプラズマ症、感染性眼内炎、急性前部ぶどう膜炎(脊椎関節炎を含む)、眼サルコイドーシス、糖尿病虹彩炎、仮面症候群
    • 外陰部病変
      • 単純ヘルペスウイルス感染症、梅毒、軟性下疳
    • 関節炎病変
      • 膠原病(全身性エリテマトーデスなど)、関節リウマチ、脊椎関節炎(乾癬性関節炎、反応性関節炎など含む)、自己炎症症候群、結晶性関節炎、変形性関節症、線維筋痛症
    • 精巣上体病変
      • 細菌性精巣上体炎
    • 消化器病変
      • クローン病、潰瘍性大腸炎、腸結核、感染性腸炎、急性虫垂炎、薬剤性腸炎
    • 血管病変
      • 血液凝固異常症(プロテインS欠損症、プロテインC欠損症、アンチトロンビン欠乏症)、抗リン質抗体症候群、癌関連性血栓症(トルソー症候群)、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎,、川崎病、慢性動脈周囲炎(IgG4関連疾患など)、バージャー病、感染性動脈瘤
    • 神経病変(a急性型、c慢性進行型、b両者)
      • 感染症性の髄膜・脳・脊髄炎(細菌性a、ウイルス性b、結核性a、真菌性b、梅毒性c)
      • 炎症性疾患(多発性硬化症b、視神経脊髄炎スペクトラム障害a、MOG抗体関連疾患a、急性散在性脳脊髄炎a、自己免疫介在性脳炎・脳症b、ビッカースタッフ脳幹脳炎a、サルコイドーシスb)
      • 脳・脊髄の腫瘍 (悪性リンパ腫c、神経膠腫c、転移性脳腫瘍c)
      • 血管障害(脳出血a、脳梗塞a、慢性硬膜下血腫c、硬膜動静脈瘻c)
      • 変性疾患・その他(脊髄小脳変性症c、代謝性脳症b、薬剤性脳症b、傍腫瘍性神経症候群b)
ディップ先生

VEXAS症候群は骨髄異形成症候群を合併することは確かに多いのですが、必要条件ではないので、骨髄異形成症候群の括弧の中に括るのは不適切だと思います。

A20ハプロ不全症・MAGIC症候群・視神経脊髄炎スペクトラム障害・MOG抗体関連疾患・ビッカースタッフ脳幹脳炎など新しい疾患が追加されています。

神経ベーチェットの鑑別には、急性・慢性進行型・両者と区別がなされ、臨床的に利用しやすいよう工夫されています。

重症度分類の変更点

全く同様でした。

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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