抗核抗体の検査方法

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抗核抗体(ANA/ Anti-Nuclear Antibody)は、最も頻用される自己抗体の一つです。
非専門医・膠原病リウマチ科医師、それぞれに分かりやすく、抗核抗体の検査方法・解釈の仕方についてまとめます。

目次

ANAの検査方法

間接蛍光抗体法(IIF)の手順

  1. スライドグラスにHEp-2細胞を貼り付けて固定する
  2. そこに患者さんの血清を乗せる。血清中に細胞内成分に対する抗体があれば、対応する抗原に結合する
  3. 血清を洗い流したあと、蛍光色素で標識した抗ヒトIgG抗体を乗せる。これが、細胞にくっついた患者さんの抗体に結合する
  4. 蛍光顕微鏡で、光っている範囲を観察する

間接蛍光抗体法の「間接」という意味は、患者さんの抗体そのものではなく、それに対する二次抗体に蛍光色素をつけているという意味です。

なぜHEp-2細胞を使用しているか

HEp-2細胞は、ヒト喉頭癌由来とされる上皮様細胞株です。1970年代半ばまではラット肝などの組織切片が使われていましたが、HEp-2に置き換わりました。理由は3つあります。

  • 大量に培養できる
  • 核が大きいので、核内のどこが光っているかを判別できる
  • 培養細胞なので分裂期の細胞が混ざる。染色体が凝集した細胞が視野に入る
    • 型によっては、分裂期の染色体上に点が並ぶ像で判定することもあるため、分裂している細胞が存在することが重要です。

検査値の見方(非専門医向け)

抗体価

  • 蛍光顕微鏡で「光っているかどうか」を見るだけなら、答えは陽性か陰性の2択ですが、その強さを〇倍で表記します。
  • 患者さんの血清を、40倍、80倍、160倍、320倍・・・と2倍ずつ希釈して、それぞれをスライドに乗せます。抗体が多ければ、薄めても蛍光が見えますが、少なければ、早い段階で見えなくなります。
    • 「蛍光が確認できる最も高い希釈倍率」が抗体価に当たります。
    • 従って抗体価は、40に2の累乗をかけた数になります。

注意点として、判定が技師の目視であるため、どの倍率で「消えた」と判断するかには主観が入ります。近年は自動判定装置も普及しつつありますが、施設によります。

抗体価の決定因子について
  • 抗体価は占有率によって決定されます。
    • 抗体価が反映しているのは、血清中の抗体の「量」そのものではありません。
    • 抗体が抗原にどれだけ結合できたか(=占有率)が検出限界を上回れば、検出されます。

  • 占有率= 希釈後の抗体濃度 × 親和性(アビディティ))× 抗原の性質 で決定されます。
    • そのため、低濃度・高親和性の抗体と、高濃度・低親和性の抗体は、抗原の性質を加味しなければ、同じ力価を示すことがあります。
  • 抗原の性質について
    • 抗原の性質によって、抗体濃度・親和性以外の要素が関与します。
      • 固定法:固定・洗浄で抗原量が低下することがある(Ro60など)
      • 細胞株・ロット:抗原の発現量が異なることがある(例えば、Ro60を遺伝子導入したHEp-2000では抗SS-Aの検出感度が上がる)
      • 二次抗体:抗ヒトIgG抗体の濃度や、蛍光色素の標識比(F/P比)が信号増幅率を決める
      • 市販キット間で結果が乖離するという報告(Abeles AM, et al. Clin Rheumatol. 2016;35:1713-8)があります。

染色型

抗核抗体は、基本的には核に対する抗体です。核には様々なパーツがあります。そのどの部分を抗原とする抗体であっても、抗核抗体と呼びます。
IIF法では、抗原となる核の要素によって蛍光の見え方が異なるため、見え方で抗原、そして抗核抗体が分類されますすなわち、染色型とは、抗原が細胞内のどこに存在するかを示しているといえます。

つまり、抗原の細胞内における場所を知っていれば、覚える必要はありません。
例えば、抗DNA抗体が核全体、抗ミトコンドリア抗体は細胞質、核小体はrRNA合成の場であるため、rRNA合成に関わる分子(U3-snoRNP、RNAポリメラーゼI)といった部分が蛍光されます。

染色型の報告方法は、長らく施設ごと・国ごとにバラバラでした。最近では国際的に標準化された、ICAP(International Consensus on ANA Patterns)に基づいて報告されることが増えてきています。
とはいえ依然として本邦では昔の基準で記載されることも多いので、ICAPの成り立ちや詳細については以下で説明することとして、ここでは非専門医向けに、簡単に把握できるように述べます。

具体的な染色型

染色型の分類の例。施設ごとに表記が異なることがあります。
凡例とその根拠

蛍光染色法の見た目によって分類されるため、技師による差が生まれることがあります。

抗核抗体の提出するとき、したときの解釈について

これについてはnoteで記載していますのでご覧ください(無料ご覧いただけます)。

ディップ先生

抗核抗体の国際的なコンセンサスとしてICAP分類があります。
これはIIF法による抗核抗体を数字によって分類する方法で、日本では外注検査で提出することができ、従来の方法よりも詳しく分類することが可能です。
現在ICAPの記事は鋭意作成中です。

参考文献
Chan EKL, Damoiseaux J, Carballo OG, et al. Report of the First International Consensus on Standardized Nomenclature of Antinuclear Antibody HEp-2 Cell Patterns 2014–2015. Front Immunol. 2015;6:412.
概要:ICAPの基本となる初回国際コンセンサス。HEp-2 IIFパターンを核・細胞質・分裂期に整理し、ACコードと標準名称を定めた文献。
DOI: 10.3389/fimmu.2015.00412 | URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4542633/
Damoiseaux J, Andrade LEC, Carballo OG, et al. Clinical relevance of HEp-2 indirect immunofluorescent patterns: the International Consensus on ANA patterns (ICAP) perspective. Ann Rheum Dis. 2019;78(7):879–889.
概要:本表の◎○△判定で使用した文献。各パターンのClinical Relevanceと、First-level/Second-level情報の区分を示す。
DOI: 10.1136/annrheumdis-2018-214436 | URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6585284/
von Mühlen CA, Garcia-De La Torre I, Infantino M, et al. How to report the antinuclear antibodies (anti-cell antibodies) test on HEp-2 cells: guidelines from the ICAP initiative. Immunol Res. 2021;69(6):594–608.
概要:HEp-2 IIF結果を臨床医へどう報告するかを示したICAPガイドライン。
DOI: 10.1007/s12026-021-09233-0 | URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34625914/
Andrade LEC, Klotz W, Herold M, et al. Reflecting on a decade of the international consensus on ANA patterns (ICAP): Accomplishments and challenges from the perspective of the 7th ICAP workshop. Autoimmun Rev. 2024;23(9):103608.
概要:ICAP発足後10年間の成果と課題をまとめた最新レビュー。Clinical Relevanceを継続更新する方針や、パターン判定の限界を確認できる。
DOI: 10.1016/j.autrev.2024.103608 | URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39187221/
Damoiseaux J, von Mühlen CA, Garcia-De La Torre I, et al. International consensus on ANA patterns (ICAP): the bumpy road towards a consensus on reporting ANA results. Auto Immun Highlights. 2016;7(1):1.
概要:核・細胞質・分裂期パターンを陽性・陰性のどちらとして報告するかなど、検査報告の標準化に関する文献。
DOI: 10.1007/s13317-016-0075-0 | URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4733811/
Sousa MJ, Neves E, Figueiras O, et al. Consenso Internacional sobre Padrões de Anticorpos Antinucleares em Portugal. Acta Med Port. 2021;34(5):347–354.
概要:ICAP名称と抗原・疾患対応が照合できる。
DOI: 10.20344/amp.13121 | URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34253282/
International Consensus on ANA Patterns (ICAP). ANApatterns.org.
概要:ICAP公式サイト。様々な文献へのアクセスが可能。
URL: https://www.anapatterns.org/
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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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