関節リウマチの治療薬の一つである、TNFα阻害薬(ティーエヌエフ・アルファ・阻害薬)について効果・値段・副作用・それぞれの薬剤の違いについてわかりやすくまとめました。
目次
関節リウマチ治療の流れ
関節リウマチに対する治療は、免疫抑制薬を中心に用います。つまり、異常になった免疫を抑え、関節の痛み・腫れを鎮め、破壊を進めないようにすることが目標です。
関節リウマチで最も重要な薬剤である、メトトレキサートを中心として、効果が不充分であれば様々な薬を足したり、変更する、という方針で進めていきます。
- まずメトトレキサートを使用できる場合には、メトトレキサートを使用する
- メトトレキサートが使用できない場合には、他の昔からの内服薬を使用する
- メトトレキサートでよくならない場合は、新しい注射(生物学的製剤)・新しい内服の薬(JAK阻害薬)のいずれかを使用する
- 新しい薬を使用しても良くならない場合には、違い種類の新しい薬に変更する
- ステロイドの使用は最小限にする(使用しないほうがよい)
メトトレキサートやほかの内服の治療を初めても、目標が達成できない場合、つまり痛みや腫れ、朝のこわばりが残っている場合、採血や超音波の検査で炎症がいまだ残っている場合、主治医の判断で治療を追加することが必要な場合には、追加の治療を検討することが必要です。
この追加の治療の一つとして、TNFα阻害薬があります。
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「TNFα阻害薬」とは?
サイトカインの一つであるTNFαを抑えることによって効果を発揮する関節リウマチの薬剤。
注射で比較的高価だが、その分効果も高い。
TNFαとは、体の免疫機能をやりとりしている物質(サイトカインと呼ばれる)の一つです。
大まかにいえば、TNFαは「炎症」を引き起こすサイトカインであり、関節リウマチ患者さんにおいては関節炎・関節の破壊などに関係していると考えられています。
よって、TNFαをさまざまな方法で阻害する(数を減らす、伝わらないようにする)ことで、関節リウマチの病気を抑えることができます。
このような「サイトカイン」は、細胞表面にある「受容体」に結合して、細胞の中に情報を伝えます。(手紙で例えると、郵便局の人が直接渡すために家の中に上がってくることはせず、家のポストに入れると思いますが、家のポストが受容体です。)
TNFα阻害薬の違い
TNFα阻害薬に様々な種類がありますが、すべて注射で、その効果はほぼ同じといわれています。(近年患者さんによって違いがあるというデータも出てきていますが、大きくは変わりません。)
注射の方法は3通りあります。
TNFα阻害薬の使用方法
- 静脈注射
- 一般的な「点滴」に相当する、病院で投与する必要がある、ある程度時間がかかる)
- 皮下注射
- 一般的な「予防接種」に相当する、家で投与できる、1回10秒前後)
- オートインジェクター:患者さん本人で皮下注射ができる装置。皮膚に当てて押すだけで注射ができる。
- シリンジ:一般的な注射の形をしている。病院で皮下注射する場合はこちらをつかう。
TNFα阻害薬の場合、大半が皮下注射であり、オートインジェクターを使って患者さん自身に家で投与していただくことが多いです。以下のペンのようなみためをしているものが、オートインジェクターです。
日本リウマチ財団 生物学的製剤(点滴・注射)より
TNFα阻害薬の種類
TNFα阻害薬には、2026年現在6種類があり、それぞれに特徴があります。
投与の仕方、間隔、値段の目安をしめしたのが、以下の図です。
例えばインフリキシマブが薬の一般名、レミケードが商品名です。
記載順は発売日順であり、使用される順ではありませんのでご注意ください。
- インフリキシマブ(レミケード®)
- エタネルセプト(エンブレル®)
- アダリムマブ(ヒュミラ®)
- ゴリムマブ(シンポニー®)
- セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)
- オゾラリズマブ(ナノゾラ®)
インフリキシマブ(レミケード®)
製剤写真 レミケード点滴静注用100/100mg×1V
https://medical.mt-pharma.co.jp/di/photo/thumbnails/0000001733/_
レミケードの特徴
- 最も最初に作られたTNFα阻害薬
- 現在は関節リウマチに対してはほとんど使用されない
- その理由として、使用しているうちに効かなくなることが多い(二次無効)
- 点滴しかない
- メトトレキサートを必ず使用する必要がある
- 使用しないと、インフリキシマブの効果が弱くなってしまうため
- 古い薬剤のため、値段が安い。
エタネルセプト(エンブレル®)
エンブレル皮下注ペン 剤形写真
https://www.pfizermedicalinformation.jp/エンブレル皮下注ペン/ji-xing-xie-zhen
エタネルセプトの特徴
- 週1回 自己注射
- メトトレキサートを使用した方が効果が高い(なくても使用自体は可能)
- バイオシミラー製剤があり、値段が安い。
- 50mg製剤 11,768/週 × 4 = 47,072円(1月あたり)
- 病気が安定すると投与する量を減らせる。
- 50mgで初めて、25mgに減量できる。投与間隔は同じ。
- 公式サイト https://www.enbrel.jp/
アダリムマブ(ヒュミラ®)
ゴリムマブ(シンポニー®)
セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)
オゾラリズマブ(ナノゾラ®)
TNFα阻害薬の利点
メトトレキサートなどの、古くから使われている薬剤に比べて、効果が高いことが多く、かつ効果がでるのが早いと言われています。
TNFα阻害薬の利点
- (古くから使われている薬剤に比べて)効果が出るのが早い
- 人によっては、投与した翌日から関節の痛みがよくなることもある。
- 1〜2週間で効果が出ることが多い
- 効果が強い
- TNFα阻害薬が使えるようになったことで、関節リウマチの治療は大きく進展したといわれる
- 一部の薬には「バイオシミラー」があり、他の生物学的製剤より値段が安い
ではなぜ最初からTNFαをすべての患者さんに使用しないのでしょうか。それは一定数の患者さんはメトトレキサートのみで全く症状がない状態まで改善することができるからです。(およそ3−4割程度が最初の内服でよくなると言われています)
TNFα阻害薬などの新しい薬は高額で免疫を抑える作用も強いことから、まずはそれらを使わずに治療しようという方針になっています。
しかし、例えば関節リウマチの程度が非常に悪い方や、メトトレキサートを使用できず、古くから使われている薬剤で治療することが難しいと考えられる場合には、早めからTNFα阻害薬などを使用することもあります。最終的には主治医の判断が重要です。
TNFα阻害薬の欠点
効果が強力で、かつ早いTNFα阻害薬ですが、以下のような欠点もあります。
TNFα阻害薬の欠点
- 注射でしか使えない
- 冷所で保存が必要。
- 手に痛みが強いと使えない場合がある
- 値段が高い(最近はより安い薬剤がでてきている)
- 免疫を抑える力が強いため、感染症の副作用が多い
- 頻度は高くはないが、感染症以外にもさまざまな副作用が報告されている
Q&A
関節リウマチの薬全般の疑問
- 関節リウマチの治療は中止できる?
-
基本的には完全に中止することは難しいです。
一部の薬剤では、病気が安定すると減量できることがあります。
そのため、まずは病気の勢いをしっかり抑えることに専念し、半年から数年程度、病気が安定した状態が続いたあとで、減量を考えるというのが現実的な治療方針です。
病気が安定していたとしても、急に治療を減らすと、病気が再び悪くなってしまうことがあります。これを再燃といいます。再燃に十分注意しながら慎重に減量していく必要があるため、すぐに治療を軽くすることは難しい場合が多いです。
- 関節リウマチってどうやって治療するの?
-
治療には一定の原則がありますが、実際にどの薬を選ぶかはケースバイケース
どの薬が最も効果があるかは患者さんごとに異なり、はっきりと予測することが難しいです。
関節リウマチのタイプ、年齢、合併症、これまでにかかった病気、金銭面、薬の投与頻度、通院のしやすさなどを総合的に判断し、主治医が経験も踏まえて治療薬を選択しているのが実際のところです。
したがって、実際に患者さんを診察することなく、「この薬がおすすめです」と断定することはできません。
他の選択肢としては、最近では同じ注射薬である生物学的製剤にもさまざまな種類があります。それぞれ、向いている患者さん、値段、投与のタイミングが異なります。そのため、どの薬が自分に合っているかについては、主治医に相談してみてください。
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使用開始中の疑問
- TNFα阻害薬を使っているときに、気をつけることは?
-
免疫抑制薬は、免疫の働きを通常よりも抑える薬です。そのため、使用中は感染症に注意することが最も重要です。
- 手洗い・うがい・マスクを心がける
- 風邪をひいている方や小さいお子さんと接する際には注意
- お子さんは、風邪や小児に多い感染症にかかっていることがあります。通常の大人であれば感染しなかったり、感染しても軽症で治ったりすることが多いですが、免疫が抑えられた状態では重症化してしまう可能性があります
- 人混みにはできるだけ行かないようにする
- 人混みでは感染症をうつされる可能性が高まります。
- また、ほこりが多く舞っていることもあり、ほこりの中には、真菌、つまりカビが含まれていることがあります。通常は、気づかないうちにほこりを吸い込んでも、免疫によって排除されています。しかし、免疫が抑えられた状態では、真菌による肺炎を起こしてしまうことがあります。
- TNFα阻害薬を使っているときに、食事はどのように気をつけたらいい?
-
バランスのよい食事をとっていただければ、特別に避けなければならない食品はありません。
ただし、ステロイド、たとえばプレドニン®やメドロール®などを使用している方は、いくつか注意すべき点があります
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- TNFα阻害薬と他の薬を一緒に使って大丈夫?
-
TNFα阻害薬は、基本的には他の薬との飲み合わせが問題になることは少ない。
ただし、他の生物学的製剤やJAK阻害薬と同時に使用することはできません。免疫抑制が強くなりすぎるためです。
具体的に心配な薬剤がある場合には、主治医に相談してください。
- 注射を打つ時間はどうしたらいい?
-
注射する時間は、安定して打てる時間を決めておくことがよいが、1日のうちいつでもいい。
朝は忙しくて注射を打つ時間がない方は夜がおすすめです。一方で、夜に帰宅する時間が不規則な方は、朝に打つ方がよいでしょう。
ご自身のライフスタイルに合わせて、継続しやすいタイミングを探してみてください。
- ワクチンは打っても大丈夫?
-
多くは問題ないが、種類によっては打てないため、打つ前に必ず確認を!
ワクチンには大きく分けて2種類あり、打ってよいものと、打つべきではないものがあります。
ワクチンは、病原体に似た構造を体に入れることで、それに対する免疫をつけることを目的としています。この「病原体に似た構造」が、どの程度病原体に近いかによって種類が分かれます。
ワクチンの種類
- 不活化ワクチン
- 病原体そのものではなく、感染力をなくしたものや一部の成分を用いたワクチンであり、免疫抑制状態でも接種できることが多いです。
- 生ワクチン
- 病原体に近い性質を持つワクチンです。そのため、免疫を抑えている状態では接種できません。
結論として、関節リウマチに対して免疫抑制薬を使用している方は、生ワクチンを接種することはできません。(不活化ワクチンはOK!)
大人になってから接種するワクチンの多くは不活化ワクチンです。そのため、多くは問題なく摂取が可能です。たとえば、インフルエンザワクチンや新型コロナウイルスワクチンは、基本的には問題なく接種できます。
生ワクチンには、麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス、結核などがあります。これらは基本的には子どもで使用されることが多いワクチンです。また、帯状疱疹ワクチンのうち、ビケン®は生ワクチンであるため、免疫抑制薬を使用している方は接種できません。
一方、不活化ワクチンには、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチン、HPVワクチン、髄膜炎菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンのシングリックス®、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがあります。これらは、免疫抑制薬を使用していても接種できることが多いワクチンです。
具体的なワクチンの種類
- 不活化ワクチン ・・・免疫抑制薬を使用していても打てる
- インフルエンザ
- コロナウイルス
- 肺炎球菌
- HPV(ヒトパピローマウイルス)
- 髄膜炎菌
- 帯状疱疹(シングリックス®)
- A型肝炎・B型肝炎
- 生ワクチン ・・・免疫抑制薬を使用していると打てない
- (基本的には、こどもしか使用しない)
- 麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ・ロタウイルス・結核
- 帯状疱疹(ビケン®)
むしろ、免疫が抑えられている方では、ワクチンによって感染症を予防することが望ましい
薬の種類や病状にもよりますが、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどは、接種が望ましいとされています。
ただし、帯状疱疹ワクチンには2種類あります。シングリックス®は不活化ワクチンであり、免疫抑制薬を使用している方でも接種できます。一方、ビケン®は生ワクチンであるため、免疫抑制薬を使用している方は接種できません。
- TNFα阻害薬を使っていて妊娠しても大丈夫?
-
製剤にもよりますがTNFα阻害薬は、妊婦の方に投与した場合、胎盤を通過することが分かっています。
つまり、胎児にもある程度影響する可能性があります。ただし、具体的にどのような影響があるのか、またどの程度の可能性で影響が起こるのかについては、はっきりとは分かっていません。
したがって、妊娠中にIL-6阻害薬を使用するかどうかは、主治医が、投与するメリットが考えられるデメリットを上回ると判断した場合に限られます。この判断は患者さんごとに異なり、ケースバイケースで考える必要があります。非常に慎重な判断が必要です。
- TNFα阻害薬の効果はいつぐらいに出るの?
-
どれくらいで効果が出てくるかは,個人差の大きいところです。
一般的には、3ヶ月以内に効果がなければ、その薬は十分な効果がないと考えることが多いです。
実際は3ヶ月以内に効果が出現することが多いですが、人によっては1週間で出現したり、数ヶ月にわたってじわじわと効果が出現することもあります。
医師にとっても、いつごろから効果が出てきたかは重要な情報です。そのため、日記などに痛みの程度や朝のこわばり、腫れている関節、日常生活で困る動作などを記録していただけると、治療効果を判断するうえで大きな参考になります。
自己注射の薬についての疑問
- 注射の方法について知りたい
-
自己注射の方法は、薬の種類によって多少の違いはありますが、大きな流れはほとんど変わりません。
製薬会社が、パンフレットや投与方法の動画を公開していることも多いため、使用する薬が決まったら確認してみるとよいでしょう。
実際には、ご自身で一度使ってみることが一番分かりやすいです。練習用のキットが用意されていることもありますので、不安がある場合には、医師や看護師に相談してみてください。
- 注射の針の太さはどれくらい?
-
採血よりもさらに細い針が使われる
自己注射で使用される針は、太さでいうと25〜29G程度です。Gはゲージと読み、数字が小さいほど針は太く、数字が大きいほど針は細くなります。
注射の針の太さ (数字が小さいほど太い)
- 18〜20G ・・・献血は18Gが使われる
- 22〜24G ・・・採血や点滴で最も広く使われている
- 23〜25G ・・・予防接種の針
- 25〜29G ・・・自己注射で使用する針
- 32G ・・・インスリンなどで使用する針
このように、自己注射で使用する針は、注射針の中でもかなり細いものです。注射針は太いほど痛みを感じやすいため、針を刺すこと自体の痛みは比較的少ない部類に入ります。予防接種の針より細いことも多いです。
ただし、針を刺す痛みが少なくても、薬剤が皮下に入る瞬間には、ある程度の痛みを感じることがあります。この痛みは、予防接種のときに薬が入る感覚に似ています。
患者さんに伺うと、投与を続けるうちに慣れていく方が多い印象です。一方で、最初は痛みや注射への不安を強く感じる方も少なくありません。不安が強い場合には、無理をせず、医師や看護師に相談して練習しながら始めるとよいでしょう。
- 自己注射のやり方はどこで教えてもらえるのか
-
施設によるが、看護師などからお教えすることが多い
自己注射薬は、最初の数回は院内で看護師などからやり方を教わりながら投与することが多いです。そのうえで、ご自身で安全に使用できると判断されれば、通常の薬と同じように外来で処方してもらうことになります。
- 注射薬の使い方は?
-
薬の種類によって注射の仕方は少しずつ異なるため、実際に使用する薬ごとの説明書を参考にしてください。ただし、基本的な操作は共通しています。
(一般的な生物学的の投与方法・例としてアクテムラ®を示します) https://pat.actemra.j
STEP
薬を冷蔵庫から取り出し、室温に戻す
室温に戻す時間は薬によって異なりますが、30分から1時間程度が目安です。
STEP
注射する
キャップを外し、注射器本体を握って、皮膚に押し当てます。
多くの自己注射キットでは、2回「カチッ」と音がし、確認窓が変化します。この間に薬が注入されます。音と確認窓の変化を確認してから、注射器を皮膚から離します。
画像はサリルマブ、商品名ケブザラ®の例です。
- 注射薬はどのように保管すればいい?
-
基本的に冷蔵庫で保存し、温度は2〜8℃が目安が多い
薬の種類によって薬の扱い方は少しずつ異なります。そのため、実際に使用する薬ごとの説明書を確認してください。ただし、基本的な保管方法は共通しています。
冷蔵庫に箱ごと保存し、冷凍庫には入れないようにしてください。また、室温で長時間保存することも避けてください。
注射の種類によっては、1回の外来で10本以上の量を持ち帰ることもあります。そのため、冷蔵庫のスペースを確保しておく必要がある場合もあります。
- 飛行機に持ち込んでも大丈夫?
-
自己注射キットや針は機内に持ち込めることが多いです。ただし、保安検査の際には、医療用の注射薬を持っていることを申し出た方がよいでしょう。
国際線では、基本的に100mLを超える液体は機内に持ち込めません。しかし、医療上必要な薬剤については、持ち込みが認められる場合が多いです。ただし、航空会社から保冷機器を借りられることは基本的にはないため、保冷方法は自分で準備する必要があります。
JALやANAでは、自己注射薬の機内持ち込みについて、医師の書類や診断書は不要とされています。
- 海外旅行に行っても大丈夫?
-
海外への薬の持ち出しは、基本的には可能です。
関節リウマチで使用する注射製剤については、日本側の許可は不要です。少なくともJALやANAでは、機内持ち込みが可能とされています。ただし、航空会社には事前に確認しておくことが理想です。
一方で、渡航先の国によっては、医師の診断書、事前の申請書、持ち込める薬の数の制限などがある場合があります。そのため、海外に薬を持って行く場合には、厚生労働省の海外渡航先への医薬品の携帯に関するページなどを確認するとよいでしょう。また、最も確実なのは、訪問先の在日外国公館に問い合わせることです。
- 注射薬はどのように捨てればいい?
-
お住まいの自治体の捨て方を参照してください。基本は病院で受け取ってもらえることが多いです。
使用後の注射キットは、基本的には処方された病院から廃棄袋を一緒に渡されます。その廃棄袋に入れて、外来受診の際に病院へ持参し、病院で廃棄してもらいましょう。家庭ごみとして捨てないようにしてください。
- 注射薬は痛い?
-
注射の針自体は採血よりもかなり細い。ただ注射したところが腫れたりすることはある。
注射の太さは、前述の通り以下のようになっています。
注射の針の太さ (数字が小さいほど太い)
- 18〜20G ・・・献血は18Gが使われる
- 22〜24G ・・・採血や点滴で最も広く使われている
- 23〜25G ・・・予防接種の針
- 25〜29G ・・・自己注射で使用する針
- 32G ・・・インスリンなどで使用する針
私の経験では、最初は痛みを感じていた患者さんでも、3〜4回ほど続けるとかなり慣れてくる方が多いように思います。
ただし、あまりにも痛い場合や、注射した場所がかゆい、腫れる、赤くなるなどの症状がある場合には、我慢せず主治医に相談してください。
こんな時どうする
- 針を刺したところが出血したらどうすればいい?
-
血が出ているところをしっかり抑えて止血する
針が細いため、注射後に出血する可能性は高くありませんが、出血した場合にまず行うべきことは、圧迫止血です。これは、出血している部分を押さえて血を止める方法です。
もし出血した場合には、注射した場所を10秒ほどしっかり押さえてください。その後、一度確認し、それでも血がにじんでくるようであれば、さらに3分ほどその場所を押さえてみてください。
毎回血が止まりにくい場合や、止血に時間がかかって大変な場合には、主治医に相談してください。
- 自己注射の薬を「冷凍」してしまった
-
冷凍してしまった薬は、使用してはいけません。
一度冷凍してしまった薬は、仮に解凍したとしても使用しないでください。注射薬の多くはタンパク質でできているため、冷凍によって中の薬が変化してしまっている可能性があります。解凍しても、薬が元の状態に戻るわけではありません。
そのため、一度冷凍してしまった場合には、その薬は使用せず、主治医に連絡して新しい薬を処方してもらいましょう。
- 自己注射の薬を常温で放置してしまった
-
薬の種類によっては、ある程度の期間であれば、室温に置いていても使用できる場合がありますが、不安な場合は使用しない方が無難です。
室温で保存できる期間は薬によって異なります。また、一度室温に戻した薬を再び冷蔵してはいけない場合があります。
さらに、決められた温度より高い温度で保管してしまった場合には、薬が変性してしまう可能性があります。そのような場合には、使用しないでください。
たとえば、トシリズマブ(アクテムラ®)は、30℃以下であれば14日以内まで保存可能とされています。
これらは、それぞれの薬剤の添付文書に基づく情報です。
このようなことが起きた場合、薬が足りなくなる可能性があります。そのため、主治医に連絡して、必要であれば外来の予約を取りましょう。
- 注射薬を落としてしまった
-
注射器を硬い床に落としてしまった場合や、強く振ってしまった場合には、その薬は使用しないでください。また、キャップを外した後に落としてしまった場合も、使用しないでください。
外見上は大きな変化がなくても、針や本体の内部に異常が起きている可能性があります。また、キャップを外した後に落とした場合には、針が汚染されている可能性があります。そのまま使用すると、感染症を起こす可能性があります。
薬が足りなくなる可能性がありますので、主治医に連絡して、必要であれば外来の予約を取りましょう。
- 投与し忘れてしまったときに、次に2回分打ってよいか
-
投与し忘れた場合でも、原則として、忘れた分を取り戻そうとして、1回に2回分を使用してはいけません。
1回で2回分を使用すると、免疫を抑える作用が強く出すぎてしまう可能性があるからです。
忘れたことに気がついたタイミングで投与するかどうかは、薬の種類や投与間隔によって異なります。そのため、ケースバイケースです。
たとえば、1ヶ月に1回投与する薬であれば、1週間程度ずれても大きな問題にならないことが多いです。一方で、1週間に1回投与する薬の場合、1週間程度ずれると、1回分の投与ができなくなってしまうことがあります。
いずれにしても、2〜3日程度ずれただけで大きな問題になることは少ないと考えられます。ただし、投与を忘れたことに気がついた場合には、次にいつ投与すればよいか、主治医に確認してください。
- 注射器が故障した・うまく作動しない
-
その注射器は使用せず、主治医に連絡しましょう。
たとえば、ボタンを押してもうまく作動しない、音が出ない、針が出ない、途中で止まって全量が入らない、本体やキャップにヒビがある、といった場合です。
このような場合には、薬が正しく投与されない可能性があります。また、主治医から製薬会社へ故障の事例を報告する必要がある場合もあります。そのため、自己判断で使い続けず、主治医に相談してください。
- 内視鏡検査や手術を予定しているが
-
基本的には手術を受ける前に主治医に相談が必要です。
胃カメラや大腸カメラ程度の検査であれば、基本的には薬剤を中止する必要はありません。
一方で、手術の場合には、一時的に薬を中止した方がよいことがあります。
薬を続けるか中止するかは、治療中の病気の状態、手術の大きさ、感染症のリスク、薬を止めることで病気が悪くなるリスクなどを総合的に考えて判断します。そのため、手術や検査を受ける予定がある場合には、必ず主治医に相談してください。
- 注射を失敗した
-
基本的には、注射器の確認窓が完全に変わっていれば、薬は投与されているため、問題ないことが多いです。一方で、確認窓が完全に変わっていない場合には、薬がうまく投与できていない可能性があります。
中外製薬 アクテムラ皮下注162mgシリンジ・オートインジェクター
カバーやキャップを外したときに、数滴ほど薬が漏れることがあります。この程度であれば、基本的には問題ありません。
ただし、明らかに注射器が破損している場合や、薬液が多く漏れている場合には、その注射器は使わないようにしましょう。また、注射器の故障や破損について、主治医に報告してください。
押し当てる時間が短かった場合や、斜めに打ってしまった場合などで、注射器の確認窓が完全に変わりきらなかったときには、薬がうまく投与できていない可能性があります。
途中になってしまった注射器は、再度使用しないでください。また、もう1本新しい薬を自己判断で代わりに投与しないでください。医師に連絡して、指示を仰ぐようにしましょう。
この場合も、途中になってしまった注射器は再度使用しないでください。また、もう1本新しい薬を自己判断で代わりに投与しないでください。医師に連絡して、指示を確認しましょう。
2025/08/26 Q&Aを追加しました
2026/07/10 体裁が乱れていたので修正しました。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。
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