全身性エリテマトーデスかもしれない、全身性エリテマトーデスと診断された。そんな不安を抱える患者さんたちのための、関節リウマチという病気についてをまとめたページです。
膠原病リウマチ内科医である筆者が、実臨床で患者さんから受けた質問や、知っておいた方がよいと思うことも含めてまとめました。
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全身性エリテマトーデスについて
免疫の異常のせいで、皮膚・関節・腎臓・神経など全身の様々な臓器に異常がでる病気。
人によって同じ病気でも症状が大きく異なる。
全身性エリテマトーデスの人全員が、共通して持つ症状というものはありません。
多くの方は、発熱・関節痛・皮疹(皮膚が赤くなったりかゆくなったり)・腎障害などが生じます。
それだけではなく「全身性」とついているように、ほぼすべての臓器に問題を起こす可能性のある病気です。
残念ながら、誰に、どのような臓器の問題が起きるかを事前に予想することは現代の医学では不可能です。
全身性エリテマトーデスのように、自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気のことを、膠原病と呼びます。

全身性エリテマトーデスの名前の由来
全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus / SLE)の名前の由来についてご説明しておきます。全身性エリテマトーデスという名前は、英語名のSystemic Lupus Erythematosus の訳語です。
- Systemic(=全身性)・・・全身に症状がおこること
- Lupus・Erythematosus(=狼瘡・ろうそう)・・・狼に噛まれた痕のような見た目の赤みがかった皮膚
全身性エリテマトーデスの患者さんの特徴的な皮膚所見と考えられていたのが、狼瘡です。
狼瘡とは、「顔などの皮膚が赤くただれ、えぐられるように壊れていく病変」を指す古い医学用語です。その見た目が、あたかも狼に噛まれた(食いちぎられた)痕のようであることから、ラテン語で狼を意味する “lupus” にちなんで名づけられました。(”lupus” は14世紀後半ごろから、皮膚に潰瘍をつくる複数の病気を指す言葉として使われ、全身性エリテマトーデスのみを指す言葉ではありませんでした。)
現代では狼瘡という言葉は使われず、SLEという用語にその名残があるのみになっています。
また、実際はこのような狼瘡がみられない患者さんも多く、逆に狼瘡のように見えてもSLEではない方もいらっしゃるため、これだけで診断するのは非常に難しいです。
全身性エリテマトーデスの患者さんの数
日本には6−10万人の患者さんがいると推定されています。
実際に指定難病を受給されている方は6,6000人程度いらっしゃいます(2023年)。
SLEは、20〜40代に多く、患者さんの約9割が女性です。
難病情報センター「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」(令和5年度)
全身性エリテマトーデスになる原因
原因は明確には分かっていません。
遺伝的要因と、環境要因の2つの原因があわさったときに発症しやすいと考えられています。
遺伝的要因
「遺伝的要因」とは、SLEになりやすい体質のことです。SLEそのものが親から子へそのまま遺伝する「遺伝病」ではありませんが、なりやすさには体質が関わっていると考えられています。
その一つの根拠として、遺伝子がまったく同じである一卵性双生児では、一方がSLEになったとき、もう一方もSLEを発症する確率が およそ25% と、一般よりずっと高いことが分かっています。
一方で、遺伝子が同じ双子でも「必ず両方が発症する(100%)」わけではありません。このことから、体質だけでなく環境要因も発症に関わっていると考えられています。
環境要因
環境要因とは、関節リウマチを引き起こす可能性のある要素のことです。
紫外線(日光)・感染・性ホルモン・一部の薬剤 などが引き金になりうると考えられています。
特に紫外線は発症に関わるだけでなく、症状を悪くすることが知られています。そのため、全身性エリテマトーデスの患者さんには、日焼け対策が重要です。
全身性エリテマトーデスは指定難病?
全身性エリテマトーデスは指定難病です。
指定難病とは、厚生労働省が定める一部の病気を呼びます。
全身性エリテマトーデスはこれに定められています。
指定難病とは、厚生労働省が定める一部の病気のことで、「原因が不明」「治療法が未確立」「長期の療養が必要」といった条件を満たすものが指定され、重症度を満たせば、一部の方は医療費の助成を受けることができます。
出典:難病情報センター「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」
症状について

全身性エリテマトーデスは、発熱・だるさや、皮膚・関節の症状など、さまざまな症状が出ます。
皆さんに共通した症状というものはなく、誰にどのような症状がでるかを予想することは非常に難しいです。
全身の症状
- 発熱・全身のだるさ(倦怠感)・疲れやすさ などです
- 発熱は37度程度の微熱のことが多いですが、時に38-39度程度の高熱が出ることもあります。
- インフルエンザなどに感染したときに全身がだるくなることがあると思いますが、病気の原理的にはこれと同じことが体で起きています。
関節の症状
「手の指」「足の指」「手首・足首」など小さい関節が腫れて、痛みがでることが多いです。
関節痛・関節炎
このような、関節が「腫れて」「痛みがでる」状態を、関節「炎」といいます。
とくに関節リウマチの場合、手の指・足の指・手関節・足関節など小さい関節に痛みが出ることが多いです。
しかし、特にご高齢の方では、肩・肘・膝など、大きな関節にも痛みが出ることがありえます。
関節炎が生じる病気は、関節リウマチ以外にも様々あり、関節が腫れているからといって関節リウマチとは限りません。
皮膚・粘膜
全身性エリテマトーデスに比較的特徴的なのが皮膚の症状です。
- 蝶形紅斑(ちょうけいこうはん) …両頬から鼻にかけて、蝶が羽を広げたような形の赤みが出ます。
- 全身性エリテマトーデスの皮膚の症状として代表的と考えられています。
- しかし他の病気や、病気でなくても似たような皮膚の症状を呈することはあり、この皮膚の見た目だけで全身性エリテマトーデスと診断することは非常に難しいです。
- 日光過敏(光線過敏) …日光に当たると日焼けが激しくでることです。
- 全身性エリテマトーデスそのものが悪化することもあります。
- そのため、全身性エリテマトーデスと診断された方は基本的には日焼け止め・日傘・長袖など、太陽を避けていただくことが重要です。
- 脱毛 ・・・主に頭皮の毛が抜けることがあります。
- すべての毛が抜けるというよりは、一部の毛が薄くなる方が多いです。
- 髪の毛の質が変わり、もろく・抜けやすい毛になることがあります。
- 口内炎 ・・・口の中に潰瘍(皮膚がえぐれた状態)になることです。
- 全身性エリテマトーデスの口内炎は、上顎にできて、痛みを伴わない(無痛性)であることが特徴的です。
- 爪囲紅斑 ・・・爪の生え際の皮膚が赤みがかかることです。
- 全身性エリテマトーデス以外でも起きますが、膠原病でよく見られる皮膚です。
関節の症状
関節炎
- 指・手・肘・肩・膝・足首など、どの関節でもありえます
- 関節が腫れる
- 痛みが出る(じっとしていても、動かしても痛い)
- 関節が熱をもつ
このような症状がそろうと関節炎と呼ばれる状態です。
関節炎は様々な病気や感染症などの原因でおき、全身性エリテマトーデスに限らないため、関節炎だけから全身性エリテマトーデスと診断することはすぐには難しいことが多いです。
朝手がこわばる・動かしにくい
朝起きると「手がこわばって動かしにくい」症状があり、これが30分〜半日持続します。
動かすことによって徐々に改善することが大半です。
全身性エリテマトーデスの患者さんに関節炎があるとみられることがあります。
しかし関節リウマチなどでも起きることはあり、これがあるからといって関節リウマチとは限りません。

関節リウマチとの違い
関節リウマチは関節に症状が出る代表的な膠原病ですが、全身性エリテマトーデスの関節の症状とは違いがあります。
それは基本的には全身性エリテマトーデスでは骨が破壊されて変形することはないということです。
腎臓(ループス腎炎)
全身性エリテマトーデスでとても重要なのが、腎臓に炎症が起きる 「ループス腎炎」 です。
- 日本ではSLE患者さんの およそ45〜86% に合併すると報告されています。
- 生命予後(命の経過)を左右することもある、重要な臓器障害 です。
- おなじループス腎炎でも様々な種類があり、種類によって治療が異なります
- そのため、治療前に種類を判断することが重要で、そのためには「腎生検」といって、腎臓を針で刺して中を確認することもあります。
ループス腎炎では、初期には自覚症状がほとんどなく、尿にタンパクや血液が出る(タンパク尿・血尿) ことで気づかれることが多いです。そのため、症状がなくても定期的な尿検査が大切になります。進行するとむくみ(浮腫)や高血圧、腎機能の低下がみられます。
難しいのは、一番最初にループス腎炎のない方でも、全身性エリテマトーデスが進むとでてくることがあったり、元々ループス腎炎がある方でも、違う腎炎の種類で悪くなることがあることです。
そのため、1度診断がついていても、もう一度腎生検を実施する必要があることがあります。
Yokoyama H, et al. Clin Exp Nephrol. 2011; 15: 321-330.
そのほか
全身性エリテマトーデスはその名の通り、全身のありとあらゆる臓器に問題を起こします。
- 神経(神経精神ループス・NPSLE)
- 全身性エリテマトーデスの最も重症なパターンの一つです。
- うつ状態になったり、体に力が入らなくなったりなど一定の症状というものはありません。
- 症状は多彩で、診断が非常に難しい病気です。薬の副作用やせん妄といわれる状態と区別することが困難な場合が多く、非常に難しいことが多いです。
- 腸管(ループス腸炎)
- 重症になる臓器障害の一つで、腹痛・下痢・悪心・血便など様々なお腹の症状が出ます。
- 最初に症状がループス腸炎だけの場合には、普通の腸炎と見分けることができず、診断が難しい場合もあります。
- 早期に治療しないと腸管に穴が空くなど、重症になることもあります。
- 貧血(自己免疫性溶血性貧血など)・血小板減少(免疫性血小板減少性紫斑病)など
- 貧血 ・・・さまざまな原因によって全身性エリテマトーデスの方は貧血になることがあります。
- なかでも「自己免疫性溶血性貧血=AIHA」は、自分の免疫のせいで赤血球を壊してしまい貧血になる病気で、全身性エリテマトーデスとと同時に起きることがあります。
- 血小板減少 ・・・さまざまな原因によって血小板が減ることがあります。
- なかでも「免疫性血小板減少性紫斑病=ITP」は、自分の免疫のせいで赤血球を壊してしまい貧血になる病気で、全身性エリテマトーデスとと同時に起きることがあります。
- 貧血 ・・・さまざまな原因によって全身性エリテマトーデスの方は貧血になることがあります。
- 膀胱(ループス膀胱炎)
- 頻尿や排尿するときに痛みが出るなど膀胱炎のような症状がでます。
- 最初に症状がループス膀胱炎だけの場合には、普通の膀胱炎と見分けることができず、診断が難しい場合もあります。
- 肺胞出血
- 肺から血でしまい、血痰がでたり、呼吸が苦しくなったりする状態です。
- 非常に重症で命に関わる状態のため、強力な治療が必要です。
- 肺高血圧症
- 普通の高血圧と異なり、肺の血圧が上がります。
- 動くと呼吸が苦しいといった症状がでます。
- 心臓の超音波検査や、カテーテル検査を行うことで診断します。
- 間質性肺炎
- 膠原病ではよく見られる症状ですが、全身性エリテマトーデスにおいては少ないです。
診断について

問診・身体所見・採血・画像の検査を組み合わせ、
全身性エリテマトーデスらしい症状があること
ほかの病気ではないことを除外した上で、初めて診断することができます。
膠原病すべてにいえることですが、全身性エリテマトーデスは、1つの検査(採血やレントゲン)で診断が確定する病気ではありません。
診察などで臓器障害を確認する
体のどの臓器が障害されているかを確認します。
上で述べたような様々な臓器の障害がないかを、診察・採血・画像検査(レントゲン、CT検査、MRI検査)などで調べていきます。
例えば腎臓に問題があれば「腎生検」、脳に問題があれば「髄液検査」など、考えられる臓器障害に応じた検査を行います。
したがって、全員に同じ検査が行われるわけではありません。
採血で「自己抗体」を確認する
全身性エリテマトーデスの診断をするにあたって、採血で「自己抗体」を確認することは必須です。
自己抗体とは、自分に対する抗体のことです。本来、抗体とはばい菌やウイルスなどの外敵に対して作られるものですが、これが自分に対して作られてしまいます。そして自分の体を攻撃することで、さらに攻撃が増加するという負の連鎖をたどることになります。
自己抗体には様々な種類が存在しますが、全身性エリテマトーデスの場合には以下の抗体が重要と考えられています。
- 抗核抗体
- 「自分の核」に対する抗体で、全身性エリテマトーデスの診断に非常に重要です。
- 全身性エリテマトーデスの方ではほぼ全員が陽性になります。
- ただ病気でない方でも陽性になったり、他の病気や感染症でも陽性になることがあるため、これが陽性だからといって、全身性エリテマトーデスとは限りません。
- 抗dsDNA抗体
- この抗体が陽性の場合、約93〜97%の方が全身性エリテマトーデスと診断されます。
- 逆に全身性エリテマトーデスの患者さんだと、57−70%で陽性になるため、陰性だからといって、全身性エリテマトーデスとはいえません。
- 抗Sm抗体
- この抗体が陽性の場合、約99%の方が全身性エリテマトーデスと診断されます。
- 逆に全身性エリテマトーデスの患者さんだと、10%程度しか陽性になりません。そのため、陰性だからといって、全身性エリテマトーデスとはいえません。

他の病気を除外する
他の病気ではないことを確認することを「除外」といいますが、この除外することが膠原病においては重要です。
例えば全身性エリテマトーデスの場合は、ウイルスの感染や薬剤でも、非常によく似た症状を呈することがあります。
そのため、採血やレントゲンなどだけで全身性エリテマトーデスということは難しいことが多いです。
必要な検査のまとめ
関節リウマチを診断するために必要な検査は以下の3種類です。
- 臓器障害をみる検査
- 全身性エリテマトーデスらしさを確認する自己抗体
- 全身性エリテマトーデス以外の病気を除外する検査
それぞれ簡単に説明すると、
- 臓器障害をみる検査
- 採血・レントゲン・CT検査など
- 腎臓に問題がある場合:腎生検・尿検査
- 脳に問題がある場合:髄液検査・頭のMRI検査 など
- 全身性エリテマトーデスらしさを確認する自己抗体
- 抗核抗体:全身性エリテマトーデスの方はほぼ陽性になる
- 抗dsDNA抗体:陽性だと全身性エリテマトーデスらしさが上がる
- 抗Sm抗体:陽性だと全身性エリテマトーデスらしさが上がる
- 全身性エリテマトーデス以外の病気を除外する検査
- 血液培養検査 ・・・細菌(バクテリア)の感染症で同じような症状が出ることがあるため、行う場合があります。
- ウイルスの検査 ・・・ 主には採血で確認します
- 他の膠原病の検査
上の検査は、関節リウマチを診断する際にすべての検査を行っているわけではありませんが、医師に応じて、必要な検査を行います。
治療について

- やられている臓器に応じた、量や種類の免疫抑制薬を使用する。
- 免疫抑制薬の効果は個人差が大きい。
- 効果が乏しい場合には、薬を変更したり、追加していく。
- 免疫抑制薬には、感染症の副作用があり、他にも様々な薬ごとの副作用がある。
全身性エリテマトーデスは、「膠原病」といわれる、自分の免疫で自分の体を攻撃することによって起きる病気と考えられています。
したがって、これを治療するためには異常な免疫を抑える=免疫抑制を行うことが必要です。
このために使用される薬剤が、免疫抑制薬です。
免疫抑制薬は様々な種類がありますが、効果は個人差が大きいです。人によって非常に良く効く方、あまり効果のない方がいらっしゃいます。現状では治療してみないとどれほど効果が出るかは分からないことが多いです。
基本的なイメージとしては、徐々に強い薬を足したり、違う薬に変えたりして効果のある薬剤を探していくことになります。
予後について
SLEは「難病」ではありますが、診断と治療の進歩によって、予後(命に影響するかどうか)は大きく改善しています。
かつては命に関わることも少なくありませんでしたが、免疫抑制薬などの発展により、現在では アジア人の10年生存率は約92.8%、10年後に腎臓が保たれている割合(10年腎生存率)は81〜97% と報告されています。
多くの患者さんが、治療を続けながら、学業・仕事・妊娠出産・育児といった日常生活を送っています。
一方で、いまも治療が難しい患者さんがいることや、感染症・骨粗鬆症などの、病気や治療に関連した合併症の管理が大切であることも事実です。
そのため、患者さん個人個人に合わせた治療を行うことが非常に重要です。そのため、主治医と協力して、病気に立ち向かっていきましょう。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。

