関節リウマチの治療薬の一つであるJAK阻害薬(ジャック阻害薬)について、わかりやすくまとめました。
JAK阻害薬とは、関節リウマチなどに使われる免疫抑制薬の一つです。現在以下の5種類の薬剤が関節リウマチに対して使用できます。
- オルミエント®(バリシチニブ)
- ジセレカ®(フィルゴチニブ)
- スマイラフ®(ペフィシチニブ)
- ゼルヤンツ®(トファシチニブ)
- リンヴォック®(ウパダシチニブ) 注)記載は五十音順で、使用される順番ではありません
すべて内服するタイプの薬剤ですが、効果が出るのが速やかで、非常に効果がでる方もいます。ここでは、どのような薬なのか使用上の注意点、副作用、使用している方の疑問にお答えします。
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関節リウマチの治療の流れ
関節リウマチの治療の中心は、免疫抑制薬です。
関節リウマチは、異常な「免疫」が原因でおきる病気です。なので異常な原因を抑える「免疫抑制薬」を使うことになります。
その中心を担うのが、メトトレキサートという薬剤です。

メトトレキサートは、関節リウマチの治療の中心となる薬剤ですが、副作用や肺・肝臓・腎臓の調子が悪い方は、使えない場合も多いです。
メトトレキサートが使えない場合には、他のリウマチに対する飲み薬を使います。
メトトレキサートや昔からあるリウマチの飲み薬で効果がない・足りない場合には、他の薬を追加することになります。大きく二種類あり、
- 生物学的製剤(注射)
- JAK阻害薬(飲み薬)
があります。いずれもメトトレキサートなどとの違いとして、
- いい点
- 関節リウマチに対しての効果が強い
- 関節リウマチに対しての効果が早い
- 悪い点
- 値段が高い
- (生物学的製剤は)注射しかない
- 免疫を抑える作用が強い(感染症になりやすい)
注射や飲み薬の種類を変えることで、効果がでてくることがあります。
また、最初が効果があっても、徐々に効果がなくなってしまうことがあるので、その場合も薬をかえる必要があります。

JAK阻害薬とは?
JAK阻害薬とは、細胞の中で免疫の連絡を担当しているJAK(ヤヌスキナーゼと読みます)を抑えることによって効果を発揮する免疫抑制薬の種類の一つ。
内服で比較的高価だが、その分効果も高い。
関節リウマチでは、炎症を起こす サイトカイン(TNF-α や IL-6 など)という物質が、血液や関節の中に過剰に放出されています。このサイトカインが細胞の表面にある「受容体」に結合すると、その刺激が細胞の中に伝わり、さらに炎症を引き起こす物質が作られ、炎症が続いてしまいます。
このとき、細胞の中で刺激を伝える「中継役」として働く酵素が JAK(ヤヌスキナーゼ/Janus kinase) です。JAKには JAK1・JAK2・JAK3・TYK2 の4種類があります。
JAK阻害薬は、この JAK の働きを止めることで、サイトカインの刺激が細胞の中に伝わるのをブロックし、炎症を抑えます。
生物学的製剤が「TNF-α」や「IL-6」といった 1つ1つのサイトカインをピンポイントで抑えるのに対して、JAK阻害薬は、複数のサイトカインが共通して使う「細胞の中の伝達経路(JAK経路)」というより 根っこ(上流)の部分 をまとめて抑えるイメージです。これが高い効果につながっていると考えられていますが、同時に、免疫を広く抑えることが副作用にも関係しています。
JAK阻害薬の種類
日本では5種類が使用できます。
- オルミエント®(バリシチニブ)
- ジセレカ®(フィルゴチニブ)
- スマイラフ®(ペフィシチニブ)
- ゼルヤンツ®(トファシチニブ)
- リンヴォック®(ウパダシチニブ) 注)記載は五十音順で、使用される順番ではありません
- 1日1回・毎日内服(飲み薬)
- 通常は4mg(1錠)を1日1回内服します。効果が安定すれば2mgに減量できることがあります。
- オルミエント錠4mg ・・・ 1錠あたり 約4,484円
- オルミエント錠2mg ・・・ 1錠あたり 約2,300円
- 腎機能が低下している場合や、減量する場合に使用します。
- 1ヶ月あたり 約125,500円/月(4mg・28日分) / 約64,400円/月(2mg・28日分)
- つまり3割負担の方であれば、4mgで約38,000円/月、2mgで約19,000円/月程度。(実際には診察料・検査費などが別途かかります)
- 特徴
- JAK1・2を特に強く抑え、円形脱毛症や新型コロナウイルス肺炎にも使われます。
- 主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している場合は減量が必要で、重度の腎機能障害(透析中など)では使用できません。
くわしくは主治医・薬剤師、または下記の患者さん向けサイトを参照してください。
- オルミエント患者さん向けサイト(日本イーライリリー) https://jp.lilly.com/olumiant-patient/
1日1回・毎日内服(飲み薬)
- 通常は200mg(1錠)を1日1回内服します。腎機能が低下した方では減量します。
- ジセレカ錠200mg ・・・ 1錠あたり 約4,160円
- 1ヶ月あたり 約116,500円/月(200mg・28日分)
- つまり3割負担の方であれば、約35,000円/月程度。(実際には診察料・検査費などが別途かかります)
- 特徴
- 5番目に登場したJAK1選択的阻害薬です。特有の酵素で代謝されるため、併用薬にあまり注意が要らないのが利点です。
- 活性代謝物の大半が尿に排泄されるため、腎機能が低下している方では減量が必要で、重度の腎機能障害(透析中など)では使用できません。
1日1回・毎日内服(飲み薬)
- スマイラフ錠150mg(100mg錠+50mg錠) ・・・ 1日あたり 約3,891円
- 通常は150mg(100mg錠と50mg錠を1錠ずつ)を1日1回内服します。状態により100mgで使うこともあります。
- 1ヶ月あたり 約109,000円/月(150mg・28日分)
- つまり3割負担の方であれば、約33,000円/月程度。(実際には診察料・検査費などが別途かかります)
- 特徴
- 日本で創製・開発された3番目のJAK阻害薬で、JAK1・2・3・TYK2の4つすべてを阻害します。
- 特有の酵素で代謝されるため、併用薬にあまり注意が要らず、腎機能による用量制限もないのが利点です。ただし中等度の肝機能低下では50mgに減量、重度では使用できません。
1日2回・毎日内服(飲み薬)
- ゼルヤンツ錠5mg ・・・ 1錠あたり 約2,261円
- 1回5mg(1錠)を1日2回、あわせて1日2錠を内服します。
- 1ヶ月あたり 約126,600円/月(28日分・1日2錠)
- つまり3割負担の方であれば、約38,000円/月程度。(実際には診察料・検査費などが別途かかります)
- 特徴
- 2013年に登場した、日本で最初のJAK阻害薬。JAK1・2・3を阻害します。
- 肝臓で代謝されるため、同じ酵素で代謝される薬との併用に注意が必要です。グレープフルーツジュースは作用を強めるおそれがあり、一緒に飲まないようにします。
- 中等度〜重度の腎機能障害・中等度の肝機能障害では、1日1回に減量します。
1日1回・毎日内服(飲み薬)
- リンヴォック錠15mg ・・・ 1錠あたり 約4,326円
- 通常は15mg(1錠)を1日1回内服します。体重の少ない方や肝機能障害がある方などでは7.5mgで使うこともあります。
- 1ヶ月あたり 約121,100円/月(15mg・28日分)
- つまり3割負担の方であれば、約36,000円/月程度。(実際には診察料・検査費などが別途かかります)
- 特徴
- JAK1を選択的に阻害する薬です。乾癬性関節炎など、他の膠原病や自己免疫疾患にも使われます。
- 肝臓で代謝されるため、同じ酵素で代謝される薬との併用に注意が必要です。
くわしくは主治医・薬剤師、または下記の患者さん向けサイトを参照してください。
- リンヴォック®.jp(患者さん向け情報サイト) https://rinvoq.jp/ra/
また、日本リウマチ財団からも詳しく情報が掲載されています。
リウマチ情報センター(JAK阻害薬) https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/dtherapy/jak/
JAK阻害薬の利点
メトトレキサートなどの、古くから使われている薬剤に比べて、リウマチに対する効果が高いと言われています。
ではなぜ最初からJAK阻害薬をすべての患者さんに使用しないのでしょうか。それは一定数の患者さんはメトトレキサートのみで全く症状がない状態まで改善することができるからです(30%ぐらいの確率といわれています)。
しかし、例えば関節リウマチの程度が非常に悪い方や、メトトレキサートを使用できず、古くから使われている薬剤で治療することが難しいと考えられる場合には、早めからJAK阻害薬などを使用することもあります。最終的には主治医の判断が重要です。
JAK阻害薬の欠点
従来の内服薬よりも効果が強力で、他の生物学的製剤よりも使いやすいですが、以下のような欠点もあります。
- 値段が高い
- 3割負担の方でも、薬剤費だけで1ヶ月あたり3万〜5万円程度かかります。
- 生物学的製剤も同程度かかるものもありますが、JAK阻害薬よりも安いものが多いです。
- 免疫を抑える力が強く、感染症の副作用が多い
- 特に日本人では 帯状疱疹 が起こりやすいことがわかっており、注意が必要です。
- 帯状疱疹以外にも肺炎・尿路感染症など、様々な感染症になりやすくなり、かつなった場合に重症化しやすくなります。
- また、元々B型肝炎・C型肝炎・結核にかかったことのある方は、本来であれば抑えられている感染症が再活性化する可能性があります。
- 心血管障害・悪性腫瘍・血栓症のリスクへの懸念
- JAK阻害薬の一つ、トファシチニブで海外の大規模試験(ORAL-Surveillance試験)で、リスクのある患者さんでは、TNF阻害薬(生物学的製剤の一種)と比べて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント、悪性腫瘍(がん)、血栓症、死亡が増える可能性が示されました。
- それ以外のJAK阻害薬でも、同様のリスクがある可能性が考えられています。
- 特に65歳以上の高齢の方、喫煙歴のある方、心血管系の危険因子やがんの既往がある方では、慎重な判断が必要です。
- 妊娠中は使用できない
- 動物実験で催奇形性が認められており、妊娠中・妊娠を希望されている方は使用できません。
JAK阻害薬の副作用
JAK阻害薬には以下の副作用が報告されています。
まず特に重要なものを抜粋します。詳しくは以下で説明していきます。
- 感染症(帯状疱疹を含む)
- 血球減少(貧血・白血球減少・血小板減少)
- 肝機能障害
- コレステロール値・CK(クレアチンキナーゼ)値の上昇
- 悪性腫瘍(がん)の可能性
- 血栓症(血管内に血の塊ができる)
- 心血管障害の可能性(例えば心筋梗塞など)
- (まれに)間質性肺炎・消化管穿孔・横紋筋融解症
以下で詳しく説明します。
感染症
JAK阻害薬は異常な免疫を抑制してくれますが、本当は抑制したくない、正常な免疫まで抑制してしまいます。
これによって以下のようなことがおこりやすくなります。
- 普通は軽症で済む感染症が重症になりやすくなる。
- 普通の人がかからない感染症にかかりやすくなる。
- 昔に感染して、今はおさえられていた感染症がぶり返しやすくなる。
以下に詳しく説明します。
- 普通は軽症で済む感染症が重症になりやすくなる。
- 最も身近な感染症でいえば、インフルエンザや新型コロナウイルスです。
- 一部では重症化する方はいらっしゃいますが、普通は自然と治る程度の感染症が、命に関わることになるほど悪くなりやすくなります。
- 普通の人がかからない感染症にかかりやすくなる。
- たとえば真菌(カビ)による肺炎がこの代表例です。
- そのなかでも「ニューモシスチス肺炎」が有名で、発症すると非常に重症な肺炎を起こします。
- 「バクタ®」「ダイフェン®」という薬剤は、このニューモシスチス肺炎の予防のために処方されています。これを飲んでいれば、ニューモシスチス肺炎になる可能性を大きく下げることができます。
- 昔に感染して、今はおさえられていた感染症がぶり返しやすくなる。
- 結核・B型肝炎・C型肝炎・帯状疱疹が代表的です。
- これらの病原体は特殊で、ヒトの体に感染しても、体から完全に排除することができません。完全に排除はできなくとも、通常は体の中で抑えられています。
- 免疫抑制薬を使用すると、抑えられていたものが出現(再活性化)することがあります。
- そのため、免疫抑制薬を使用する前に、採血で感染したことがないかを確認させていただきます。
- もし感染していた場合、再活性化が起きていないかを、症状や採血で適宜確認することが重要です。
- 結核については、再燃を防ぐための薬を飲んでいただくこともあります。
- 結核・B型肝炎・C型肝炎・帯状疱疹が代表的です。
JAK阻害薬を使用している限りは、免疫が抑えられた状態が続きます。
血球減少
「血球」というのは、血液の中の、赤血球・白血球・血小板の3つの成分を指す言葉です。
JAK阻害薬では、血球が減少することがあります。
日常生活を送る上で問題になるほど下がることは稀ですが、外来の採血で確認させていただく必要があります。基本的に自覚症状はでませんが、極端に低下すると以下の症状が出ます。
悪性腫瘍(がん)の可能性
「血球」というのは、血液の中の、赤血球・白血球・血小板の3つの成分を指す言葉です。
JAK阻害薬では、血球が減少することがあります。
日常生活を送る上で問題になるほど下がることは稀ですが、外来の採血で確認させていただく必要があります。基本的に自覚症状はでませんが、極端に低下すると以下の症状が出ます。
心血管障害の可能性(心筋梗塞など)
「血球」というのは、血液の中の、赤血球・白血球・血小板の3つの成分を指す言葉です。
JAK阻害薬では、血球が減少することがあります。
日常生活を送る上で問題になるほど下がることは稀ですが、外来の採血で確認させていただく必要があります。基本的に自覚症状はでませんが、極端に低下すると以下の症状が出ます。
血栓症(血管に血の塊ができる)
「血球」というのは、血液の中の、赤血球・白血球・血小板の3つの成分を指す言葉です。
JAK阻害薬では、血球が減少することがあります。
日常生活を送る上で問題になるほど下がることは稀ですが、外来の採血で確認させていただく必要があります。基本的に自覚症状はでませんが、極端に低下すると以下の症状が出ます。
Q&A
関節リウマチの薬全般の疑問
使用開始中の疑問
こんな時どうする
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。


