全身性エリテマトーデスかもしれない、全身性エリテマトーデスと診断された。そんな不安を抱える患者さんたちのための、病気についてをまとめたページです。
膠原病リウマチ内科医である筆者が、実臨床で患者さんから受けた質問や、知っておいた方がよいと思うことも含めてまとめました。
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全身性エリテマトーデスについて
免疫の異常のせいで、皮膚・関節・腎臓・神経など全身の様々な臓器に異常がでる病気。
人によって同じ病気でも症状が大きく異なる。
免疫とは、 体を外敵から守る機能 のことです。
例えば、インフルエンザになっても、多くは1週間程度で自然に改善しますよね。これは免疫がインフルエンザを攻撃して体を守ってくれている証拠です。
しかし、この免疫が時として自分を敵と認識して、攻撃してしまうことがあります。
このような病気を、自己免疫疾患・膠原病(こうげんびょう)と呼びます。
そのため、SLEをはじめとした膠原病の治療の基本は、「免疫抑制薬」をつかって、自分の暴れる免疫を抑えることです。


全身性エリテマトーデスの名前の由来
全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus / SLE)の名前の由来についてご説明しておきます。全身性エリテマトーデスという名前は、英語名のSystemic Lupus Erythematosus の訳語です。
- Systemic(=全身性)・・・全身に症状がおこること
- Lupus(=狼瘡・ろうそう)・・・狼に噛まれた痕のような見た目になる皮膚のこと
- Erythematosus(=紅斑)・・・赤みがかった皮膚のこと
全身性エリテマトーデスの患者さんの特徴的な皮膚所見と考えられていたのが、狼瘡です。
狼瘡とは、「顔などの皮膚が赤くただれ、えぐられるように壊れていく病変」を指す古い医学用語です。その見た目が、あたかも狼に噛まれた(食いちぎられた)痕のようであることから、ラテン語で狼を意味する “lupus” にちなんで名づけられました。(”lupus” は14世紀後半ごろから、皮膚に潰瘍をつくる複数の病気を指す言葉として使われ、全身性エリテマトーデスのみを指す言葉ではありませんでした。)
現代では狼瘡という言葉は使われず、SLEという用語にその名残があるのみになっています。
また、実際はこのような狼瘡がみられない患者さんも多く、逆に狼瘡のように見えてもSLEではない方もいらっしゃるため、これだけで診断するのは非常に難しいです。
全身性エリテマトーデスの患者さんの数
日本には6−10万人の患者さんがいると推定されています。
実際に指定難病を受給されている方は66,000人程度いらっしゃいます(2023年)。
SLEは、20〜40代に多く、患者さんの約9割が女性です。
難病情報センター「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」(令和5年度)
全身性エリテマトーデスになる原因
原因は明確には分かっていません。
遺伝的要因と、環境要因の2つの原因があわさったときに発症しやすいと考えられています。
遺伝的要因
「遺伝的要因」とは、SLEになりやすい体質のことです。SLEそのものが親から子へそのまま遺伝する「遺伝病」ではありませんが、なりやすさには体質が関わっていると考えられています。
その一つの根拠として、遺伝子がまったく同じである一卵性双生児では、一方がSLEになったとき、もう一方もSLEを発症する確率が およそ25% と、一般よりずっと高いことが分かっています。
一方で、遺伝子が同じ双子でも「必ず両方が発症する(100%)」わけではありません。このことから、体質だけでなく環境要因も発症に関わっていると考えられています。
環境要因
環境要因とは、全身性エリテマトーデスを引き起こす可能性のある要素のことです。
紫外線(日光)・感染・性ホルモン・一部の薬剤 などが引き金になりうると考えられています。
特に紫外線は発症に関わるだけでなく、症状を悪くすることが知られています。そのため、全身性エリテマトーデスの患者さんには、日焼け対策が重要です。
全身性エリテマトーデスと難病制度
全身性エリテマトーデスは指定難病です。
指定難病とは、厚生労働省が定める一部の病気のことで、「原因が不明」「治療法が未確立」「長期の療養が必要」といった条件を満たすものが指定され、重症度を満たせば、一部の方は医療費の助成を受けることができます。
全身性エリテマトーデスはこれに定められています。
出典:難病情報センター「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」
症状について


全身性エリテマトーデスは、発熱・だるさや、皮膚・関節の症状など、さまざまな症状が出ます。
ものによっては命に関わるものもあり、注意が必要です。
詳しくは以下のページをご覧ください。


診断のための検査について


問診・身体所見・採血・画像の検査を組み合わせ、
全身性エリテマトーデスらしい症状があること
ほかの病気ではないことを除外した上で、初めて診断することができます。
膠原病すべてにいえることですが、全身性エリテマトーデスは、1つの検査(採血やレントゲン)で診断が確定する病気ではありません。
診察などで臓器障害を確認する
体のどの臓器が障害されているかを確認します。
上で述べたような様々な臓器の障害がないかを、診察・採血・画像検査(レントゲン、CT検査、MRI検査)などで調べていきます。
例えば腎臓に問題があれば「腎生検」、脳に問題があれば「髄液検査」など、考えられる臓器障害に応じた検査を行います。
したがって、全員に同じ検査が行われるわけではありません。
採血で「自己抗体」を確認する
全身性エリテマトーデスの診断をするにあたって、採血で「自己抗体」を確認することは必須です。
自己抗体とは、自分に対する抗体のことです。本来、抗体とはばい菌やウイルスなどの外敵に対して作られるものですが、これが自分に対して作られてしまいます。そして自分の体を攻撃することで、さらに攻撃が増加するという負の連鎖をたどることになります。
自己抗体には様々な種類が存在しますが、全身性エリテマトーデスの場合には以下の抗体が重要と考えられています。
- 抗核抗体
- 「自分の核」に対する抗体で、全身性エリテマトーデスの診断に非常に重要です。
- 全身性エリテマトーデスの方ではほぼ全員が陽性になります。
- ただ病気でない方でも陽性になったり、他の病気や感染症でも陽性になることがあるため、これが陽性だからといって、全身性エリテマトーデスとは限りません。
- 抗dsDNA抗体
- 全身性エリテマトーデスでない人では、ほとんど陽性になりません。
- 逆に全身性エリテマトーデスの患者さんだと、57−70%で陽性になるため、陰性だからといって、全身性エリテマトーデスとはいえません。
- 抗Sm抗体
- 全身性エリテマトーデスでない人では、ほとんど陽性になりません。
- 逆に全身性エリテマトーデスの患者さんだと、10%程度しか陽性になりません。そのため、陰性だからといって、全身性エリテマトーデスとはいえません。


他の病気を除外する
他の病気ではないことを確認することを「除外」といいますが、この除外することが膠原病においては重要です。
例えば全身性エリテマトーデスの場合は、ウイルスの感染や薬剤でも、非常によく似た症状を呈することがあります。
そのため、採血やレントゲンなどだけで全身性エリテマトーデスということは難しいことが多いです。
必要な検査のまとめ
全身性エリテマトーデスを診断するために必要な検査は以下の3種類です。
- 臓器障害をみる検査
- 全身性エリテマトーデスらしさを確認する自己抗体
- 全身性エリテマトーデス以外の病気を除外する検査
それぞれ簡単に説明すると、
- 臓器障害をみる検査
- 採血・レントゲン・CT検査など
- 腎臓に問題がある場合:腎生検・尿検査
- 脳に問題がある場合:髄液検査・頭のMRI検査 など
- 全身性エリテマトーデスらしさを確認する自己抗体
- 抗核抗体:全身性エリテマトーデスの方はほぼ陽性になる
- 抗dsDNA抗体:陽性だと全身性エリテマトーデスらしさが上がる
- 抗Sm抗体:陽性だと全身性エリテマトーデスらしさが上がる
- 全身性エリテマトーデス以外の病気を除外する検査
- 血液培養検査 ・・・細菌(バクテリア)の感染症で同じような症状が出ることがあるため、行う場合があります。
- ウイルスの検査 ・・・ 主には採血で確認します
- 他の膠原病の検査
上の検査は、全身性エリテマトーデスを診断する際にすべての検査を行っているわけではありませんが、医師に応じて、必要な検査を行います。
各症状・臓器ごとの必要な検査は症状の記事を参考にしてください。


治療について
治療については、以下のページで解説しています。




予後について
SLEは「難病」ではありますが、診断と治療の進歩によって、予後(命に影響するかどうか)は大きく改善しています。
かつては命に関わることも少なくありませんでしたが、免疫抑制薬などの発展により、現在では アジア人の10年生存率は約92.8%、10年後に腎臓が保たれている割合(10年腎生存率)は81〜97% と報告されています。
多くの患者さんが、治療を続けながら、学業・仕事・妊娠出産・育児といった日常生活を送っています。
一方で、いまも治療が難しい患者さんがいることや、感染症・骨粗鬆症などの、病気や治療に関連した合併症の管理が大切であることも事実です。
そのため、患者さん個人個人に合わせた治療を行うことが非常に重要です。そのため、主治医と協力して、病気に立ち向かっていきましょう。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。
2026/07/16 誤字を修正し、追記しました。























