EULARの高安動脈炎のrecommendations 2025がでましたのでまとめていきましょう。(guidelineではありません)
EULARの作成するこういった文章は「recommendations」と「points to consider」の2種類あり、(guidelineはない。ACRではあります。)recommendationsはそのまま訳すと「推奨」ですが、その立ち位置的には、より強く「勧告」とする向きがあります。
なお、EULAR的には、guidelineは「制約的に過ぎるように見えかねない(might appear too constraining)」という理由で採用されず、recommendationsは「助言を提供するものであり、適用されれば良質な診療の指標となる(providing advice, and if applied, as a measure of good quality)」という意味で使用されているようです。(Ann Rheum Dis. 2004;63(9):1172–1176.・Ann Rheum Dis. 2015;74(1):8–13.)
ここでは高安動脈炎(TAK)についてのみをまとめます。EULAR 2018年以来の改訂になります。
GCAとTAKに病態の類似性があることから、TAK・GCAと同時にrecommendationsが作成されました。
本文中の グルココルチコイド(GC) 用量は、すべてプレドニゾロン/プレドニゾン換算。
LoE = level of evidence(エビデンスレベル、Oxford CEBM 2011)、LoA = level of agreement(合意度、0–10 の NRS)。
一部抜粋ですので、全文は本文から確認ください。


2025 EULAR recommendations for the management of polymyalgia rheumatica and primary large vessel vasculitis
Annals of the Rheumatic Diseases 2026;00:1−16
背景
GCA と TAK の病態生理は類似しており、PMR と GCAの臨床像には重なりがある。この重複が、PMR・GCA・TAK を単一のrecommendationsで扱う理由である。
方法はEULAR の標準化された手順に従って作成され、ここでは省略します。
概要
- 提示されたのは 4つの包括的原則と12のrecommendations(図1〜3、表1に要約)
- 5つのrecommendationsは完全に新規であり、ほかは新たに作成されたものの、前版の更新にあたる。
包括的原則
分類基準は、研究目的で当該疾患を最も正確に代表する均質な患者群を同定し、研究結果の信頼性を高めるために用いられる。こうした基準は通常きわめて特異度が高くなるよう意図されており、その結果、臨床医が「best fit diagnosis」を用いない限り、診断名のつかない患者が生じてしまう。(best fit diagnosisの明確な定義はないが、最もそれらしい疾患を臨床医の判断で診断すること、という意味合い。)
分類基準は臨床医に情報を与えうるが、診断を下すために用いることはできない。
PMR、GCA、TAK は人生を変える疾患(life-changing disease)である。これらの疾患と治療の負担により、発症前のADLに戻ることができない場合がある。疾患の影響、治療の目標、再燃の警告、疾患および治療による障害に関する情報を、患者が継続的に利用できるようにすることは、直面する問題を乗り切る助けとなる。
TAKのManagement

Clinically active diseaseの有無で最初に分岐するが、本文中にClinically active diseaseとは何かについての記載はない。
- 目標(Target) : 寛解の導入とその維持。
- 「寛解」は明確に定義されていない。
- cDMARD:メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド
- TOC:tocilizumab・162 mg/週 皮下注 または 8mg/kg/4週 静注(以降はTCZと記載します)
- anti-TNFα・・・TNFα阻害薬
- IFX(infliximab):5mg/kg/8週 静注(Loading後)
- ADA(adalimumab):40mg /2週 皮下注
- ETN(etanercept):50mg /週 皮下注
ディップ先生本邦ではTCZ静注・IFX・ADA・ETNはTAKに対して適応がありません。
診断・治療開始時期
- 専門機関への紹介
- TAKが疑われる患者においては、理想的にはGC未使用(GC naïve)の状態で二次医療に紹介されるべきである。GCへの反応は感度の高い検査ではなく、GCの「診断的治療(diagnostic trial)」は推奨されない。
- 1度入れると、その修飾の下だと確定するための検査が制限されるため。
- 少数の患者が、脳血管障害などの重篤・緊急の虚血病態を呈することがある。しかしその状況でも、より一般的な原因を除外することが極めて重要である。(it is crucial to rule out more common causes.)
- TAKが疑われる患者においては、理想的にはGC未使用(GC naïve)の状態で二次医療に紹介されるべきである。GCへの反応は感度の高い検査ではなく、GCの「診断的治療(diagnostic trial)」は推奨されない。
- 治療開始
- TAK患者は障害(damage)を伴って受診することがあり、診断時に活動性病変を有していない場合もある。新規発症に対する治療の推奨は臨床的に活動性の疾患を有する患者を対象とする。疾患が非活動性と判断される患者では、直ちにGCを開始しないことが妥当である。
GC量(初発・再燃)
- 新規発症
- 寛解導入
- 初期用量 40〜60 mg/日、2〜3ヶ月で15〜20mg(60mg開始、2ヶ月で20mgにするなら、1週間で5mgずつ減量する計算)12〜18ヶ月で中止(20mgから10ヶ月でオフにする場合、1ヶ月2mg減量)
- (GCの導入・減量方法はすべてGCAと同じです。)
- 減量方法
- 後述のTCZ・TNF阻害薬を併用した場合で、GC投与期間を短くするべきかどうかは、明確なデータがない。(GCAではTCZ・UPA等を併用した場合には6ヶ月間の短期間投与が勧められている。)
- (c/b)DMARDの漸減前に、12〜18か月にわたるGC漸減を目指すことを提案する。
- 寛解導入
- 再燃
- 軽微な再燃(minor relapse)= GC を最後に有効であった用量まで増量する。
- 重大な再燃の定義を満たさない再燃のこと。
- 重大な再燃(major relapse)= 新規発症として扱う。
- 再燃の大小は判別困難(2018年は、「進行性の構造的変化を伴う大型血管炎」と定義されていたが、TAKではすでに大血管に構造的障害を呈していることが多いため、使用できない)
- 従って、大小の区別は臨床的判断に委ねられるものと思います(私見)
- 軽微な再燃(minor relapse)= GC を最後に有効であった用量まで増量する。



GCを12〜18ヶ月で中止することを目標にするというのは、非常に野心的なrecommendationと思います。(本文中にもrecognising the ambitious nature of this targetと記載あり)
この記載の元となったのはTAKT studyで、これはTCZ群で40%超が18か月時点でGC <0.1 mg/kg/日を達成した、という結果を受けてのものです。 Rheumatology (Oxford). 2020;59(9):2427–34.
最初の寛解導入ではcDMARD+GCのみをrecommendしており、TCZなしでGC offを目指すのは非常に高い壁と考えられます。(現にTAKT studyのプラセボ群は8〜16週に約80%が再燃しています)また、TAKT study自身も、GC offではなく、GC <0.1 mg/kg/日を達成したに過ぎません。
TAKはGCによる心血管合併症も大きな問題となるため、それだけ減量が重要ということですが、強力なGC減量を目標として掲げるならば、TNF阻害薬・TCZが再燃・難治例で初めて登場するのではなく、初期から使用できる選択を設ける必要があるのではとも思います。(私見)
GC以外の免疫抑制薬
- 新規発症
- すべてのTAK患者に対して、cDMARDs(従来型DMARDs)による補助療法を開始するべき。
- 本recommendationは前版と同様で、GCAと比較して構造的障害がより高度であり、解剖学的な罹患範囲がより広範な傾向にあるため。
- メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミドの使用については限られた後ろ向きデータしか存在しない
- すべてのTAK患者に対して、cDMARDs(従来型DMARDs)による補助療法を開始するべき。
- 再燃・難治性
- cDMARDs併用にもかかわらず再燃性または難治性の場合には、TCZまたはTNF阻害薬を考慮しうる。(具体的な投与量は上に記載)
- TAK患者におけるTNF阻害薬とトシリズマブを比較したデータは、さらなる検討を要する
再燃・難治性の注意点
TAKに関連するところを抜粋しました。
- モニタリングおよび再燃の診断は、実質的には画像に基づく。
- TAKで画像が決定的に重要であるのは、再燃が主に非特異的な全身症状を伴って生じ、しばしば急性期反応が正常であるためである
- 難治性
- 標準治療を用いても寛解を導入できないこと
血管治療について
- TAKでは、待機的な血管内治療または再建手術は、安定した寛解期に施行されるべき
- 確実に動脈の炎症を消すため、また処置後の再狭窄リスクを低減するために、周術期にGC 用量を増量することが望ましいこともある。
- 手技は開放手術でも血管内治療でもよい。熟練した術者では両者の成功率は同程度であるが、長期の開存率は開放手術のほうが良好な可能性がある。
フォローについて
- フォローの最適な方法について、エビデンスに基づく推奨を行うためのデータはなく、フォローについてのrecommendationは、2018年からほぼ変更がない。
- TAKにおける再燃性病変の診断には、常に画像からの情報が必要である。
- 18F-FDG-PET/CT画像で集積があっても、必ずしも活動性病変を反映しない場合がある。
- TAKにおいて、特に腎動脈が障害されている場合に、心血管疾患の高リスクと関連している。
- 単一施設のTAK 215例で、多変量調整ロジスティック回帰分析、および傾向スコアマッチングを使用して腎動脈病変の有無で臨床像・血管造影所見・生存を比較した。215例中、117例(54.4%)に腎動脈病変あり。うち66例(56.4%)が両側性だった。腎動脈病変のある群で、高血圧・心不全・腹部大動脈病変・上腸間膜動脈病変・慢性腎不全の割合が高かった。しかし死亡リスクは、腎動脈病変のない群と比較してHR 2.32(0.61–8.78)と有意ではなかった。 Clin Rheumatol. 2024;43(1):67–80.
- 10年間の骨折リスク(FRAXを指すものと思われます)、そして外来受診のたびに血圧と血糖コントロールを特にモニタリングすることが妥当であろう。
- EULAR 2022のrecommendationsに基づいて管理すること。
ほか
- 抗血小板療法・抗凝固療法
- 冠動脈疾患・椎骨動脈疾患・末梢動脈疾患など他疾患の適応を超えた使用を支持する一貫した質の高いデータがないこと、およびその使用に伴う潜在的リスクを踏まえ、2018 年のrecommendationsでは、LVVにおけるルーチンかつ非選択的な使用に反対するrecommendationを出していた。
- 前回更新以降、このrecommendationの変更を正当化する新しいデータは発表されていない。
- 利用可能なエビデンスによって、得られる新規のrecommendationはないため、抗血小板・抗凝固療法に関する表記が削除された。
recommendationの元となったstudy
- 難治性TAKに対するTCZ TAKT study Ann Rheum Dis. 2018;77(3):348–54.
- 日本で実施された難治性TAKに対するTCZの無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験。
- 主要評価項目を達成しなかった。プラセボ群のGC漸減(4週以降で、週10%で減量するプロトコル)では8〜16週に約80%が再燃したことから、2018年版が「TAKのGC漸減はGCAよりゆっくり」とした。
- TAKT studyの長期最終成績 Rheumatology (Oxford). 2020;59(9):2427–34.
- TAKT試験の長期追跡最終成績。
- TCZ治療患者の40%超が18か月時点でGC <0.1 mg/kg/日を達成した。
- 2025年版がGC目標を「1年で≤10 mg」から「12〜18か月で完全中止」へ変更した根拠。
- TAKにおけるTNF阻害薬 vs TCZ
- Rheumatology (Oxford). 2024;63(5):1359–67.
- 活動性かつ重症のTAKにおけるADA vs TCZの非盲検試験
- Autoimmun Rev. 2023;22(3):103275.
- TCZの有効性およびTNFα阻害薬との比較に関する系統的レビュー・メタ解析
- Rheumatology (Oxford). 2024;63(5):1359–67.
2018年版との比較
- シクロホスファミドの記載が消失
- 2018年版では、他剤が無効または不耐容の場合のみシクロホスファミドを検討することが記載されていましたが、今回のrecommendationsからはシクロホスファミドの記載は一切ありません。
- 妊孕性のある女性が主体、AAVと違い急性致死的疾患ではないことなどが理由と考えられます。
- GC量の違い
- 2018年では、GC減量目標が、1年で10mg以下に減量 → 12〜18ヶ月で終了。
- 2018年では限局性病変に対して、25〜30 mg/日で開始する選択肢があったが、すべて40〜60mg/日に。
- 2018年ではGCAより緩徐に減量することとの記載があったが、GCAと同程度に。
- 2018年では、TAKT試験のプラセボ群(4週以降、週10%漸減)で8〜16週に約80%が再燃したこと、およびアバタセプトRCTでも同様の再燃率であったことがこの根拠だった。
- 再燃・難治性・持続寛解等の定義が消失
- 2018年では以下の様に用語が定義されていましたが、2025年版では記載されなくなりました。
- Major relapse:活動性病変の再発で、以下のいずれかを伴うもの
- (a) 虚血の臨床像(顎跛行、視覚症状、GCAによる視力喪失、頭皮壊死、脳卒中、四肢跛行)
- (b) 進行性の大動脈または大血管の拡張・狭窄・解離をきたす活動性大動脈炎症の所見
- Minor relapse:major の基準を満たさない活動性病変の再発
- Sustained remission:6か月以上の寛解+個別目標GC用量の達成
- GC-free remission:Sustained remission + GC中止(他の免疫抑制薬は継続していてもよい)
- Refractoryのみは、本文中に「2018年に定義がある」と言及あり
- 2018年の定義:標準治療にもかかわらず寛解導入ができないことです。
- 免疫抑制薬
- TCZ 静注のオプションが追加されています。


今後の研究課題(research agenda)
- 臨床パラメータと検査パラメータに基づく GC 漸減を最適化すること。
- 検査パラメータ、アウトカム指標、患者報告アウトカム指標を用いた head-to-head 試験で、併用を含む利用可能な治療を比較検討すること。
- 臨床的および医療経済的アウトカムに基づき、必要な免疫抑制療法の期間を決定すること。
- GC 関連合併症に関する免疫抑制療法の長期的利益を明らかにすること。
- モニタリングのための疾患特異的バイオマーカーを発見すること。
- 大動脈瘤や血管狭窄を含む構造的血管障害に対する治療の影響を明らかにすること。
- 血管の構造的障害を予防/回復させる抗線維化療法の価値を明らかにすること








