アクテムラ・ケブザラってどんな薬?

この記事は患者さん向けです。

関節リウマチの治療薬の一つであるIL-6阻害薬(インターロイキン・シックス・そがいやく)について、わかりやすくまとめています。日本では、トシリズマブ(アクテムラ®)サリルマブ(ケブザラ®)の2種類が使用できます。

注射するタイプの薬剤ですが、効果が出るのが速やかで、非常に効果がでる方もいます。ここでは、どのような薬なのか使用上の注意点、副作用、使用している方の疑問にお答えします。

目次

関節リウマチの治療の流れ

関節リウマチの治療の中心は、免疫抑制薬です。

関節リウマチは、異常な「免疫」が原因でおきる病気です。なので異常な原因を抑える「免疫抑制薬」を使うことになります。

その中心を担うのが、メトトレキサートという薬剤です。

STEP
メトトレキサートが使えるなら、メトトレキサートを使う

メトトレキサートは、関節リウマチの治療の中心となる薬剤ですが、副作用や肺・肝臓・腎臓の調子が悪い方は、使えない場合も多いです。

メトトレキサートが使えない場合には、他のリウマチに対する飲み薬を使います。

STEP
メトトレキサートでよくならないなら、他の注射・飲み薬(JAK阻害薬)を使う

メトトレキサートや昔からあるリウマチの飲み薬で効果がない・足りない場合には、他の薬を追加することになります。大きく二種類あり、

  • 生物学的製剤(注射)
  • JAK阻害薬(飲み薬)

があります。いずれもメトトレキサートなどとの違いとして、

  • いい点
    • 関節リウマチに対しての効果が強い
    • 関節リウマチに対しての効果が早い
  • 悪い点
    • 値段が高い
    • (生物学的製剤は)注射しかない
    • 免疫を抑える作用が強い(感染症になりやすい)
STEP
新しい薬でもよくならない場合は、薬の種類を変えてみる

注射や飲み薬の種類を変えることで、効果がでてくることがあります。

また、最初が効果があっても、徐々に効果がなくなってしまうことがあるので、その場合も薬をかえる必要があります。

STEP
ステロイド(プレドニン®)の使用は最小限にする

IL-6阻害薬とは?

IL-6(インターロイキン・シックス)とは、体の免疫機能をやりとりしている「サイトカイン」の一つです。

サイトカイン」とは、細胞に情報を伝える物質のことです。これによって、細胞は様々な情報をやりとりしています。

IL-6は「炎症」を起こすサイトカインであり、関節リウマチ患者さんにおいては関節の痛みなどに関係していると考えられています。

よって、IL-6をさまざまな方法でブロックすることで、関節リウマチの病気を抑えることができます。

IL-6阻害薬の種類

IL-6阻害薬は、現在日本では2種類が使用できます。

  • トシリズマブ(アクテムラ®)
  • サリルマブ(ケブザラ®)

トシリズマブが、薬の一般名(薬剤の名前)、アクテムラ®が、商品の名前です。

ぞれぞれ詳しくみてみましょう

トシリズマブ(アクテムラ®)
  • 1ヶ月ごとの点滴 または 2週間に1回・自己注射
    • 効果が不充分な場合は、1週間に1回に短縮できる
  • 値段が高め
    • 2週間に1回・自己注射の場合)32,608円×2= 65,216円/月
    • つまり3割負担の方であれば、20,000円/月程度
    • とはいえ、リウマチに対する注射の中では真ん中ぐらいに位置します。
  • 自己注射の仕方については以下のページから確認できます。
サリルマブ(ケブザラ®)

IL-6阻害薬の利点

メトトレキサートなどの、古くから使われている薬剤に比べて、効果が高いことが多く、かつ効果がでるのが早いと言われています。

  • 効果が出るのが早い
    • 人によっては、投与した翌日から関節の痛みがよくなることもあります。
    • 1〜2週間で効果が出ることが多い印象です(個人差が大きい)
  • 効果が強い
    • もとの飲み薬だけでは、多くの方は症状が残ったままでした。
    • IL-6阻害薬が使えるようになったことで、より多くの方がリウマチがよくなるようになりました。

ではなぜ最初からIL-6阻害薬をすべての患者さんに使用しないのでしょうか。それは一定数の患者さんはメトトレキサートのみで全く症状がない状態まで改善することができるからです(30%ぐらいの確率といわれています)。

しかし、例えば関節リウマチの程度が非常に悪い方や、メトトレキサートを使用できず、古くから使われている薬剤で治療することが難しいと考えられる場合には、早めからIL-6阻害薬などを使用することもあります。最終的には主治医の判断が重要です。

IL-6阻害薬の欠点

効果が強力で、かつ早いIL-6阻害薬ですが、以下のような欠点もあります。

  • 注射でしか使えない
    • 自己注射の場合には冷所(冷蔵庫)で保存が必要など、特別な管理が必要な場合があります。
    • 自己注射(自分で注射する)の場合、手に痛みが強いとうまく打てない場合があります。場合によっては来院して注射したりなどが必要です。
  • 値段が高い
    • 3割負担の方であれば、1ヶ月あたり、2万円〜3万円かかります。
  • 免疫を抑える力が強いため、感染症の副作用が多いです
  • 頻度は高くはないが、特殊な副作用が報告されています

IL-6阻害薬の副作用

IL-6阻害薬には以下の副作用が報告されています。

  • 感染症
  • 注射部位反応
  • コレステロール増加(脂質異常症・高脂血症)
  • 血球減少
  • 憩室穿孔
  • CRPが低下してしまう

以下で詳しく説明します

感染症

IL-6阻害薬は異常な免疫を抑制してくれますが、広い範囲の免疫を抑制するため、本当は抑制したくない、正常な免疫まで抑制してしまいます。

これによって以下のようなことがおこりやすくなります。

  1. 普通は軽症で済む感染症が重症になりやすくなる。
  2. 普通の人がかからない感染症にかかりやすくなる。
  3. 昔に感染して、今はおさえられていた感染症がぶり返しやすくなる。

以下に詳しく説明します。

  • 普通は軽症で済む感染症が重症になりやすくなる。
    • 最も身近な感染症でいえば、インフルエンザや新型コロナウイルスでしょう。
    • 一部では重症化する方はいらっしゃいますが、普通は自然と治る程度の感染症が、命に関わることになるほど悪くなりやすくなります。
  • 普通の人がかからない感染症にかかりやすくなる。
    • たとえば真菌(カビ)による肺炎がこの代表例です。
    • そのなかでも「ニューモシスチス肺炎」が有名で、発症すると非常に重症な肺炎を起こします。
      • 「バクタ®」「ダイフェン®」という薬剤は、このニューモシスチス肺炎の予防のために初報されています。これを飲んでいれば、ニューモシスチス肺炎になることはほぼ防ぐことができます。
  • 昔に感染して、今はおさえられていた感染症がぶり返しやすくなる。
    • 結核・B型肝炎・C型肝炎・帯状疱疹が代表的です。
      • これらの病原体は特殊で、ヒトの体に感染しても、体から完全に排除することができません。完全に排除はできなくとも、通常は体の中で抑えられています。
      • 免疫抑制薬を使用すると、抑えられていたものが出現(再活性化)することがあります。
    • そのため、免疫を使用する前に、採血で感染したことがないかを確認させていただきます。
    • もし感染していた場合、再活性化が起きていないかを、症状や採血で適宜確認することが重要です。
      • 結核については、再燃を防ぐための薬を飲んでいただくこともあります。

 IL-6阻害薬を使用している限りは、免疫が抑えられた状態が続きます。

注射部位反応

注射する薬のため、注射したところが腫れる・赤くなる・かゆくなる・痛くなるなどの症状が出ることがあります。

通常は一時的なもので終わることが多いですが、激しい場合には医師に報告してください。

脂質異常症・高脂血症

脂質異常症のなかでも、中性脂肪(トリグリセリド)の値が高くなることがあることが知られています。それだけで何か症状が出ることはありませんが、長期間放置していると動脈硬化を来たし、心筋梗塞・脳梗塞などを起こす可能性が高くなるため、脂質異常症の薬が始まる場合もあります。

血球減少

「血球」というのは、血液の中の、赤血球・白血球・血小板の3つの成分を指す言葉です。

IL-6阻害薬では、その中の特に血小板・白血球が減少することがあります。

日常生活を送る上で問題になるほど下がることは稀ですが、外来の採血で確認させていただく必要があります。基本的に自覚症状はでませんが、極端に低下すると以下の症状が出ます。

  • 血小板減少 ・・・歯を磨くと出血する、軽く打ったところがアザになる
  • 白血球減少 ・・・ほとんど症状はでない(風邪を引いたときに悪くなるなど)

憩室穿孔・憩室炎

一部の方には、腸に「憩室」という部屋ができることがあります。これ自体は異常ではなく、多くの方にある正常な所見です。

その憩室に炎症が起きてお腹が痛くなったり発熱したりする状態を「憩室炎」といいます。また憩室から出血することを「憩室出血」といいます。

これらの病気になったことがある方は、IL-6阻害薬を使うと、憩室が炎症を起こして破れてしまう「憩室穿孔」を起こしやすい可能性が指摘されています。

「憩室炎」「憩室穿孔」があったかたは、主治医に申しでていただいたほうがよいと思います。

CRPが低下してしまう

  • CRP」は、採血のデータの1つ
  • 正常値はほぼ 0mg/dL(施設によって多少異なるが0.3mg/dLが上限)
  • イメージは「熱が出る」症状があると上昇する
    • 感染症 ・・・インフルエンザ・肺炎・尿路感染症などほぼすべてで上がります。
    • 膠原病 ・・・関節リウマチはもちろん、ほぼすべての膠原病で上がります。全身性エリテマトーデスでは通常上がりません。
    • 悪性腫瘍(がん) ・・・小さいがんでは上がらないこともあります。

IL-6(インターロイキン・シックス)というサイトカイン(免疫のシステムをやりとりする物質)の影響をうけて、肝臓で産生されます。

IL-6阻害薬は、このIL-6(インターロイキン・シックス)を抑えることで、関節リウマチの病気を抑える薬です。ですので、採血のデータ上の、CRPは基本的には0になります。

これのなにが問題かというと、普通の人は風邪を引いたり肺炎になるとCRPが上がるため、採血で「何かが起きている」ということを見つけることができますが、IL-6阻害薬を使用していると、肺炎などがあってもCRPが0のままのため、気がつきにくいことがあります。

したがって、患者さんの症状が非常に重要であるということです。また、膠原病リウマチ内科にとっては常識的な副作用ですが、普通の医師にとっては気がつきにくい副作用でもあります。採血をみて、大丈夫と言われても、ご自身でIL-6阻害薬を使用していますとおっしゃっていただくことが必要な場合もあると思います。

  • CRPが0になるため、採血のデータの信頼性が低下する。
    • 肺炎などを見落としてしまうことがある。
  • 患者さんの症状がより重要になる。
  • 医療者にIL-6阻害薬を使用している、ということを伝えてください。

Q&A

関節リウマチの薬全般の疑問

関節リウマチの治療は中止できる?

基本的には完全に中止することは難しいです。

一部の薬剤では、病気が安定すると減量できることがあります。

そのため、まずは病気の勢いをしっかり抑えることに専念し、半年から数年程度、病気が安定した状態が続いたあとで、減量を考えるというのが現実的な治療方針です。

病気が安定していたとしても、急に治療を減らすと、病気が再び悪くなってしまうことがあります。これを再燃といいます。再燃に十分注意しながら慎重に減量していく必要があるため、すぐに治療を軽くすることは難しい場合が多いです。

関節リウマチってどうやって治療するの?

治療には一定の原則がありますが、実際にどの薬を選ぶかはケースバイケース

どの薬が最も効果があるかは患者さんごとに異なり、はっきりと予測することが難しいです。

関節リウマチのタイプ、年齢、合併症、これまでにかかった病気、金銭面、薬の投与頻度、通院のしやすさなどを総合的に判断し、主治医が経験も踏まえて治療薬を選択しているのが実際のところです。

したがって、実際に患者さんを診察することなく、「この薬がおすすめです」と断定することはできません。

他の選択肢としては、最近では同じ注射薬である生物学的製剤にもさまざまな種類があります。それぞれ、向いている患者さん、値段、投与のタイミングが異なります。そのため、どの薬が自分に合っているかについては、主治医に相談してみてください。

使用開始中の疑問

アクテムラ®・ケブザラ®を使っているときに、気をつけることは?

免疫抑制薬は、免疫の働きを通常よりも抑える薬です。そのため、使用中は感染症に注意することが最も重要です。

  • 手洗い・うがい・マスクを心がける
  • 風邪をひいている方や小さいお子さんと接する際には注意
    • お子さんは、風邪や小児に多い感染症にかかっていることがあります。通常の大人であれば感染しなかったり、感染しても軽症で治ったりすることが多いですが、免疫が抑えられた状態では重症化してしまう可能性があります
  • 人混みにはできるだけ行かないようにする
    • 人混みでは感染症をうつされる可能性が高まります。
    • また、ほこりが多く舞っていることもあり、ほこりの中には、真菌、つまりカビが含まれていることがあります。通常は、気づかないうちにほこりを吸い込んでも、免疫によって排除されています。しかし、免疫が抑えられた状態では、真菌による肺炎を起こしてしまうことがあります。
アクテムラ®・ケブザラ®を使っているときに、食事はどのように気をつけたらいい?

バランスのよい食事をとっていただければ、特別に避けなければならない食品はありません。

ただし、ステロイド、たとえばプレドニン®やメドロール®などを使用している方は、いくつか注意すべき点があります

アクテムラ®・ケブザラ®と他の薬を一緒に使って大丈夫?

IL-6阻害薬は、基本的には他の薬との飲み合わせが問題になることは少ない。

ただし、他の生物学的製剤やJAK阻害薬と同時に使用することはできません。免疫抑制が強くなりすぎるためです。

具体的に心配な薬剤がある場合には、主治医に相談してください。

注射を打つ時間はどうしたらいい?

注射する時間は、安定して打てる時間を決めておくことがよいが、1日のうちいつでもいい。

朝は忙しくて注射を打つ時間がない方は夜がおすすめです。一方で、夜に帰宅する時間が不規則な方は、朝に打つ方がよいでしょう。

ご自身のライフスタイルに合わせて、継続しやすいタイミングを探してみてください。

ワクチンは打っても大丈夫?

多くは問題ないが、種類によっては打てないため、打つ前に必ず確認を!

ワクチンには大きく分けて2種類あり、打ってよいものと、打つべきではないものがあります。

ワクチンは、病原体に似た構造を体に入れることで、それに対する免疫をつけることを目的としています。この「病原体に似た構造」が、どの程度病原体に近いかによって種類が分かれます。

  • 不活化ワクチン
    • 病原体そのものではなく、感染力をなくしたものや一部の成分を用いたワクチンであり、免疫抑制状態でも接種できることが多いです。
  • 生ワクチン
    • 病原体に近い性質を持つワクチンです。そのため、免疫を抑えている状態では接種できません。

結論として、関節リウマチに対して免疫抑制薬を使用している方は、ワクチンを接種することはできません。(不活化ワクチンはOK!)

大人になってから接種するワクチンの多くは不活化ワクチンです。そのため、多くは問題なく摂取が可能です。たとえば、インフルエンザワクチンや新型コロナウイルスワクチンは、基本的には問題なく接種できます。

生ワクチンには、麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス、結核などがあります。これらは基本的には子どもで使用されることが多いワクチンです。また、帯状疱疹ワクチンのうち、ビケン®は生ワクチンであるため、免疫抑制薬を使用している方は接種できません。

一方、不活化ワクチンには、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチン、HPVワクチン、髄膜炎菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンのシングリックス®、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがあります。これらは、免疫抑制薬を使用していても接種できることが多いワクチンです。

ワクチンの種類
  • 不活化ワクチン ・・・免疫抑制薬を使用していても打てる
    • インフルエンザ
    • コロナウイルス
    • 肺炎球菌
    • HPV(ヒトパピローマウイルス)
    • 髄膜炎菌
    • 帯状疱疹(シングリックス®)
    • A型肝炎・B型肝炎
  • 生ワクチン ・・・免疫抑制薬を使用していると打てない
    • (基本的には、こどもしか使用しない)
    • 麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ・ロタウイルス・結核
    • 帯状疱疹(ビケン®)

むしろ、免疫が抑えられている方では、ワクチンによって感染症を予防することが望ましい

薬の種類や病状にもよりますが、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどは、接種が望ましいとされています。

ただし、帯状疱疹ワクチンには2種類あります。シングリックス®は不活化ワクチンであり、免疫抑制薬を使用している方でも接種できます。一方、ビケン®は生ワクチンであるため、免疫抑制薬を使用している方は接種できません。

アクテムラ®・ケブザラ®を使っていて妊娠しても大丈夫?

IL-6阻害薬であるトシリズマブ、商品名アクテムラ®、およびサリルマブ、商品名ケブザラ®は、妊婦の方に投与した場合、胎盤を通過することが分かっています。

つまり、胎児にもある程度影響する可能性があります。ただし、具体的にどのような影響があるのか、またどの程度の可能性で影響が起こるのかについては、はっきりとは分かっていません。

したがって、妊娠中にIL-6阻害薬を使用するかどうかは、主治医が、投与するメリットが考えられるデメリットを上回ると判断した場合に限られます。この判断は患者さんごとに異なり、ケースバイケースで考える必要があります。非常に慎重な判断が必要です。

アクテムラ®・ケブザラ®の効果はいつぐらいに出るの?

一般的には、3ヶ月以内に効果がなければ、その薬は十分な効果がないと考えることが多いです。

どれくらいで効果が出てくるかは,個人差の大きいところです。

実際は3ヶ月以内に効果が出現することが多いですが、人によっては1週間で出現したり、数ヶ月にわたってじわじわと効果が出現することもあります。

医師にとっても、いつごろから効果が出てきたかは重要な情報です。そのため、日記などに痛みの程度や朝のこわばり、腫れている関節、日常生活で困る動作などを記録していただけると、治療効果を判断するうえで大きな参考になります。

自己注射の薬についての疑問

注射の方法について知りたい

自己注射の方法は、薬の種類によって多少の違いはありますが、大きな流れはほとんど変わりません。

製薬会社が、パンフレットや投与方法の動画を公開していることも多いため、使用する薬が決まったら確認してみるとよいでしょう。たとえば、トシリズマブ、商品名アクテムラ®については、投与方法を確認できる患者さん向けのページがあります。

実際には、ご自身で一度使ってみることが一番分かりやすいです。練習用のキットが用意されていることもありますので、不安がある場合には、医師や看護師に相談してみてください。

注射の針の太さはどれくらい?

採血よりもさらに細い針が使われる

自己注射で使用される針は、太さでいうと25〜29G程度です。Gはゲージと読み、数字が小さいほど針は太く、数字が大きいほど針は細くなります。

注射の針の太さ (数字が小さいほど太い)
  • 18〜20G ・・・献血は18Gが使われる
  • 22〜24G ・・・採血や点滴で最も広く使われている
  • 23〜25G ・・・予防接種の針
  • 25〜29G ・・・自己注射で使用する針  
  • 32G   ・・・インスリンなどで使用する針

このように、自己注射で使用する針は、注射針の中でもかなり細いものです。注射針は太いほど痛みを感じやすいため、針を刺すこと自体の痛みは比較的少ない部類に入ります。予防接種の針より細いことも多いです。

ただし、針を刺す痛みが少なくても、薬剤が皮下に入る瞬間には、ある程度の痛みを感じることがあります。この痛みは、予防接種のときに薬が入る感覚に似ています。

患者さんに伺うと、投与を続けるうちに慣れていく方が多い印象です。一方で、最初は痛みや注射への不安を強く感じる方も少なくありません。不安が強い場合には、無理をせず、医師や看護師に相談して練習しながら始めるとよいでしょう。

自己注射のやり方はどこで教えてもらえるのか

施設によるが、看護師などからお教えすることが多い

自己注射薬は、最初の数回は院内で看護師などからやり方を教わりながら投与することが多いです。そのうえで、ご自身で安全に使用できると判断されれば、通常の薬と同じように外来で処方してもらうことになります。

注射薬の使い方は?

薬の種類によって注射の仕方は少しずつ異なるため、実際に使用する薬ごとの説明書を参考にしてください。ただし、基本的な操作は共通しています。

(トシリズマブ・アクテムラ®の投与方法) https://pat.actemra.j

STEP
薬を冷蔵庫から取り出し、室温に戻す

室温に戻す時間は薬によって異なりますが、30分から1時間程度が目安です。

STEP
注射する部分の皮膚を消毒

STEP
注射する

キャップを外し、注射器本体を握って、皮膚に押し当てます。

多くの自己注射キットでは、2回「カチッ」と音がし、確認窓が変化します。この間に薬が注入されます。音と確認窓の変化を確認してから、注射器を皮膚から離します

画像はサリルマブ、商品名ケブザラ®の例です。

注射はどこに打ったらいい?

自己注射を行う場所としては、お腹、太もも、二の腕が基本です

薬の種類によって扱い方は少しずつ異なりますが、基本的な注射部位は共通しています。

https://www.pmda.go.jp/RMP/www/780069/bb846bb1-f7d8-41b7-baef-3b1d3c90594f/780069_3999444G1022_03_001RMPm.pdf

お腹に注射する場合には、へその周囲5cmは避けてください。二の腕は、ご家族など他の方が注射する場合に使われる部位です。

注射する場所は、毎回ずらすことが重要です。同じ場所に繰り返し注射すると、皮膚が硬くなったり、腫れや痛みが出たりすることがあります。前回どこに打ったか忘れてしまう場合には、日記などに記録して、場所を変えるようにしましょう。

注射薬はどのように保管すればいい?

基本的に冷蔵庫で保存し、温度は2〜8℃が目安が多い

薬の種類によって薬の扱い方は少しずつ異なります。そのため、実際に使用する薬ごとの説明書を確認してください。ただし、基本的な保管方法は共通しています。

冷蔵庫に箱ごと保存し、冷凍庫には入れないようにしてください。また、室温で長時間保存することも避けてください。

注射の種類によっては、1回の外来で10本以上の量を持ち帰ることもあります。そのため、冷蔵庫のスペースを確保しておく必要がある場合もあります。

飛行機に持ち込んでも大丈夫?

自己注射キットや針は機内に持ち込めることが多いです。ただし、保安検査の際には、医療用の注射薬を持っていることを申し出た方がよいでしょう。

国際線では、基本的に100mLを超える液体は機内に持ち込めません。しかし、医療上必要な薬剤については、持ち込みが認められる場合が多いです。ただし、航空会社から保冷機器を借りられることは基本的にはないため、保冷方法は自分で準備する必要があります。

JALやANAでは、自己注射薬の機内持ち込みについて、医師の書類や診断書は不要とされています。

海外旅行に行っても大丈夫?

海外への薬の持ち出しは、基本的には可能です。

関節リウマチで使用する注射製剤については、日本側の許可は不要です。少なくともJALやANAでは、機内持ち込みが可能とされています。ただし、航空会社には事前に確認しておくことが理想です。

一方で、渡航先の国によっては、医師の診断書、事前の申請書、持ち込める薬の数の制限などがある場合があります。そのため、海外に薬を持って行く場合には、厚生労働省の海外渡航先への医薬品の携帯に関するページなどを確認するとよいでしょう。また、最も確実なのは、訪問先の在日外国公館に問い合わせることです。

注射薬はどのように捨てればいい?

お住まいの自治体の捨て方を参照してください。基本は病院で受け取ってもらえることが多いです。

使用後の注射キットは、基本的には処方された病院から廃棄袋を一緒に渡されます。その廃棄袋に入れて、外来受診の際に病院へ持参し、病院で廃棄してもらいましょう。家庭ごみとして捨てないようにしてください。

注射薬は痛い?

注射の針自体は採血よりもかなり細い。ただ注射したところが腫れたりすることはある。

注射の太さは、前述の通り以下のようになっています。

注射の針の太さ (数字が小さいほど太い)
  • 18〜20G ・・・献血は18Gが使われる
  • 22〜24G ・・・採血や点滴で最も広く使われている
  • 23〜25G ・・・予防接種の針
  • 25〜29G ・・・自己注射で使用する針  
  • 32G   ・・・インスリンなどで使用する針

私の経験では、最初は痛みを感じていた患者さんでも、3〜4回ほど続けるとかなり慣れてくる方が多いように思います。

ただし、あまりにも痛い場合や、注射した場所がかゆい、腫れる、赤くなるなどの症状がある場合には、我慢せず主治医に相談してください。

こんな時どうする

針を刺したところが出血したらどうすればいい?

血が出ているところをしっかり抑えて止血する

針が細いため、注射後に出血する可能性は高くありませんが、出血した場合にまず行うべきことは、圧迫止血です。これは、出血している部分を押さえて血を止める方法です。

もし出血した場合には、注射した場所を10秒ほどしっかり押さえてください。その後、一度確認し、それでも血がにじんでくるようであれば、さらに3分ほどその場所を押さえてみてください。

毎回血が止まりにくい場合や、止血に時間がかかって大変な場合には、主治医に相談してください。

自己注射の薬を「冷凍」してしまった

冷凍してしまった薬は、使用してはいけません。

一度冷凍してしまった薬は、仮に解凍したとしても使用しないでください。注射薬の多くはタンパク質でできているため、冷凍によって中の薬が変化してしまっている可能性があります。解凍しても、薬が元の状態に戻るわけではありません。

そのため、一度冷凍してしまった場合には、その薬は使用せず、主治医に連絡して新しい薬を処方してもらいましょう。

自己注射の薬を常温で放置してしまった

薬の種類によっては、ある程度の期間であれば、室温に置いていても使用できる場合がありますが、不安な場合は使用しない方が無難です。

室温で保存できる期間は薬によって異なります。また、一度室温に戻した薬を再び冷蔵してはいけない場合があります。

さらに、決められた温度より高い温度で保管してしまった場合には、薬が変性してしまう可能性があります。そのような場合には、使用しないでください。

たとえば、トシリズマブ(アクテムラ®)は、30℃以下であれば14日以内まで保存可能とされています。サリルマブ(ケブザラ®)は、25℃以下であれば14日以内まで保存可能とされています。

これらは、それぞれの薬剤の添付文書に基づく情報です。

このようなことが起きた場合、薬が足りなくなる可能性があります。そのため、主治医に連絡して、必要であれば外来の予約を取りましょう。

注射薬を落としてしまった

注射器を硬い床に落としてしまった場合や、強く振ってしまった場合には、その薬は使用しないでください。また、キャップを外した後に落としてしまった場合も、使用しないでください。

外見上は大きな変化がなくても、針や本体の内部に異常が起きている可能性があります。また、キャップを外した後に落とした場合には、針が汚染されている可能性があります。そのまま使用すると、感染症を起こす可能性があります。

薬が足りなくなる可能性がありますので、主治医に連絡して、必要であれば外来の予約を取りましょう。

投与し忘れてしまったときに、次に2回分打ってよいか

投与し忘れた場合でも、原則として、忘れた分を取り戻そうとして、1回に2回分を使用してはいけません。

1回で2回分を使用すると、免疫を抑える作用が強く出すぎてしまう可能性があるからです。

忘れたことに気がついたタイミングで投与するかどうかは、薬の種類や投与間隔によって異なります。そのため、ケースバイケースです。

たとえば、1ヶ月に1回投与する薬であれば、1週間程度ずれても大きな問題にならないことが多いです。一方で、1週間に1回投与する薬の場合、1週間程度ずれると、1回分の投与ができなくなってしまうことがあります。

いずれにしても、2〜3日程度ずれただけで大きな問題になることは少ないと考えられます。ただし、投与を忘れたことに気がついた場合には、次にいつ投与すればよいか、主治医に確認してください。

注射器が故障した・うまく作動しない

その注射器は使用せず、主治医に連絡しましょう。

たとえば、ボタンを押してもうまく作動しない、音が出ない、針が出ない、途中で止まって全量が入らない、本体やキャップにヒビがある、といった場合です。

このような場合には、薬が正しく投与されない可能性があります。また、主治医から製薬会社へ故障の事例を報告する必要がある場合もあります。そのため、自己判断で使い続けず、主治医に相談してください。

内視鏡検査や手術を予定しているが

基本的には手術を受ける前に主治医に相談が必要です。

胃カメラや大腸カメラ程度の検査であれば、基本的には薬剤を中止する必要はありません。

一方で、手術の場合には、一時的に薬を中止した方がよいことがあります。

薬を続けるか中止するかは、治療中の病気の状態、手術の大きさ、感染症のリスク、薬を止めることで病気が悪くなるリスクなどを総合的に考えて判断します。そのため、手術や検査を受ける予定がある場合には、必ず主治医に相談してください。

注射を失敗した

基本的には、注射器の確認窓が完全に変わっていれば、薬は投与されているため、問題ないことが多いです。一方で、確認窓が完全に変わっていない場合には、薬がうまく投与できていない可能性があります。

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カバーやキャップを外したときに、数滴ほど薬が漏れることがあります。この程度であれば、基本的には問題ありません。

ただし、明らかに注射器が破損している場合や、薬液が多く漏れている場合には、その注射器は使わないようにしましょう。また、注射器の故障や破損について、主治医に報告してください。

押し当てる時間が短かった場合や、斜めに打ってしまった場合などで、注射器の確認窓が完全に変わりきらなかったときには、薬がうまく投与できていない可能性があります。

途中になってしまった注射器は、再度使用しないでください。また、もう1本新しい薬を自己判断で代わりに投与しないでください。医師に連絡して、指示を仰ぐようにしましょう。

この場合も、途中になってしまった注射器は再度使用しないでください。また、もう1本新しい薬を自己判断で代わりに投与しないでください。医師に連絡して、指示を確認しましょう。

【更新情報】
2025/08/28 Q&Aを一部修正しました
2026/05/10 内容を改訂しました

本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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