definition of remission in SLEの略で、その名の通り、全身性エリテマトーデスの寛解基準の一つです。
全身性エリテマトーデスを評価する指標のまとめは、こちらのページを参考にしてください。
歴史
もともと全身性エリテマトーデスには、明確な基準はありませんでした。そのため、臨床試験において、様々な定義があり、臨床試験間で比較することが難しい状況でした。
2015年に設立された、国際的なタスクフォースによって、2017年にDORIS frameworkが提示されました。 Ann Rheum Dis. 2017 Mar;76(3):554-561.
ここでは、Clinical Remission(臨床的活動性はなし)・Complete Remission(血清学的活動性もなし)という指標が考えられ、これに治療薬を使用していないOff treatmentと、使用しているOn treatmentを組み合わせた、4種類で定義されました。

しかし、後の研究では、血清学的活動は、臨床的アウトカムに影響しにくいこと、このうちの、Clinical remission on treatmentが最も再現性・予測性が高いという結果から、2021年に改訂がなされました。
これが2021DORISで、Remission in SLEという一種類で寛解が定義されました。Ann Rheum Dis. 2021; 80(12):1508-1517.
内容
以下の3つの指標で定義されています。
- SLEの活動性
- Clinical SELDAI–2K=0
- 医師による評価
- PGA<0.5 (0〜3のスケール)
- 治療薬
- グルココルチコイド(プレドニン換算)≦ 5mg/day
寛解を達成している期間や、血清学的指標(補体・抗dsDNA抗体)などは含まれていません。
SLEの活動性
Clinical SLEDAIは、SLEDAIから、低補体血症と、抗dsDNA抗体陽性を除いた指標です。SLEDAIにも、SLEDAI-2K・SELENA-SLEDAIなど複数の指標がありますが、2021 DORISでは、SLEDAI-2Kを用いています。
またSLEDAIの評価時期として、10日間または30日間の二通りが大きくありますが、2021DORIS基準においては、直近10日間の臨床所見を用いて評価します。
詳しくはSLEDAIのページを参考にしてください。
医師による評価
広く使用されているPGAが用いられます。
治療薬
寛解基準としてステロイド使用量が具体的に決定されている点が特長と言えます。仮に設定していないと、高用量でステロイドを維持している症例でも寛解と見なされますが、実際にはステロイドによる副作用の影響を強く受け、決して臨床的に目指すべき状況とは言えません。
この、5mgという値については、大規模SLEコホートによって、プレドニゾロン5mg以下では、損傷リスクは有意に増加しないとされ、5mg以上では線形にリスクが増加するという結果が示されたからです。 Lupus Sci Med. 2018; 5:e000234. Lupus Sci Med. 2018; 5:e000234. など
欠点
- cSLEDAIについての欠点
- 臨床的な寛解の基準を、cSLEDAI=0とした場合、SLEDAIにない臓器障害がある場合や、臓器障害は残存しているが、増悪はしていない場合、0としてカウントされうります。これがPGA<0.5で拾われない場合に、寛解と評価される可能性はあります。
- また評価期間が10日間と短いという点もあります。
- ステロイド量についての欠点
- 5mgは、確かに損傷リスクの増加しない量として抽出された値ではありますが、ステロイドが5mgであれば維持しても副作用が生じないと言うことではありません。(特に骨粗鬆症などは1mgでもリスクになることが分かっている)
- 本来目指すべきは、ステロイド0mgであることを認識する必要があります。


コメント