シェーグレン病の末梢神経障害の用語の整理

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シェーグレン病(Sjögren’s disease・SjD)では末梢神経障害が重要な臓器障害ですが、その用語・分類が膠原病リウマチ内科・神経内科で異なることが問題でした。

Sjögren’s Foundationによって膠原病リウマチ内科・神経内科によってまとめられました。

シェーグレン病の
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目次

Recommendations for Aligned Nomenclature of Peripheral Nervous System Disorders Across Rheumatology and Neurology

Arthritis Rheumatol. 2025 Apr;77(4):383-389.

前提

シェーグレン病においては、末梢神経障害がSjDに先行することがため、正確に評価してフォローすることが重要です。
末梢神経障害については、分類軸が複数あることが、その理解を難しくしています。
その用語が、その分類軸で定義されたものかを意識することが重要です。

  • 症状:運動失調性か非運動失調性か、疼痛性か非疼痛性か
  • 解剖学的な障害分布:多発ニューロパチー、単ニューロパチー、多発単ニューロパチー、長さ依存性
  • 解剖学的な障害部位:末梢神経、神経根、後根神経節
  • 障害される神経線維:大径線維、小径線維、感覚線維、運動線維、自律神経線維
  • 電気生理学的所見:軸索性、脱髄性
  • 病態生理・病因:血管炎性、毒性、免疫介在性

今までは論文ごとに、末梢神経障害の定義が大きく異なることが例示されています。

今までのシェーグレン病に対する末梢神経障害の分類
Arthritis Rheumatol. 2025 Apr;77(4):383-389.

本論文では7つに分類しました。

7つに分類
  • 単神経障害
  • 大径線維(軸索性)ニューロパチー
  • 小径線維ニューロパチー
  • 脱髄性多発神経根ニューロパチー
  • 神経節障害
  • 血管炎性ニューロパチー
  • 自律神経ニューロパチー

単ニューロパチー

解剖学的な障害分布:多発ニューロパチー、単ニューロパチー、多発単ニューロパチー によって定義された概念です。

定義

単ニューロパチーとは、1本の神経に生じる機能不全または障害を指す。

臨床像

障害される神経が1本であるため、症状は非対称となる。
1本の神経が支配する領域に、感覚症状・運動症状(またはその両方)が現れる。
単神経が完全に障害された場合は、運動・感覚の複合神経なら両方に障害が生じるが、一般的には部分障害が多いため、必ずしも両方そろわない。

  • 感覚症状
    • 感覚鈍麻
    • チクチク・ピリピリする異常感覚
    • 神経障害性疼痛
  • 運動症状
    • 筋力低下や筋肉量の減少

診察

  • 感覚障害
    • 障害された神経の皮膚支配領域に限定され、その神経が支配する筋に筋力低下または萎縮が認められる。
  • 腱反射低下・消失
    • 障害された神経が深部腱反射に関与している場合、その反射が低下または消失することがある。
  • Tinel徴候
    • 障害された神経を叩打すると、その神経の皮膚支配領域に電撃感やピリピリする異常感覚が生じる「Tinel徴候」が誘発されることもある。

顔面神経や三叉神経などの脳神経が障害された場合には、顔面にも徴候や症状が現れる。

病因・鑑別診断

単ニューロパチーは、神経の圧迫や絞扼によって機械的に生じることがある。
例えば最も一般的な単ニューロパチーである手根管症候群(手関節部での正中神経障害)など。

そのほか、感染、炎症、外傷、虚血、血管炎なども原因となる。

病態生理

原因によって異なり、軸索性の場合と脱髄性の場合がある

評価

神経伝導検査(NCS)筋電図検査(EMG)によって、神経の走行に沿って障害部位を特定する。

構造的な原因を評価するため、超音波検査や磁気共鳴画像検査(MRI)が有用な場合もある。

大径線維(軸索性)ニューロパチー

障害される神経線維:大径線維、小径線維、感覚線維、運動線維、自律神経線維 によって定義された概念です。
基本的には軸索が障害されるタイプになります。

別名として、感覚性多発ニューロパチー(遠位神経の純粋感覚性軸索ニューロパチー)・感覚運動性多発ニューロパチー(軸索性感覚運動ニューロパチー)と定義されることもあります。

定義

大径線維である、Aβ線維の、軸索の損傷で定義される神経傷害。基本的には多発神経傷害。

Aβ線維は主として位置覚、振動覚、触覚を伝える感覚神経であるため、主として感覚障害が主体となる。

同じく大径線維である運動神経が障害されることもあり、その場合は感覚・運動性、または感覚運動性多発ニューロパチーとなる

臨床像

多発神経傷害なので、通常は対称性である。
位置覚、振動覚、触覚に異常が生じる。通常は、慢性・緩徐進行性にすすむ。
(本論文には記載なく筆者作成)

  • 自覚症状
    • 足先のピリピリする異常感覚、感覚低下(足裏に膜がはったような感覚)
  • 分布
    • 典型的には両足趾・足底から始まり、下腿へ上行し、手指に至る。
    • 多発神経傷害であり、手袋靴下型
  • 触覚・圧覚
    • 上の分布に触覚が低下。
  • 振動覚
    • 足趾・足関節から低下。
  • 位置覚
    • 足趾の位置が分かりにくくなる。高度になると指にも及ぶ。
    • 暗所や閉眼時に悪化するふらつきとして認める。
      つまり夜間・目をつぶるとき(髪を洗う)などの視覚情報が低下していることでふらつきが悪くなる。
    • 足元を見ないと不安定のため、床を強く踏んで歩く傾向がある

診察

(本論文には記載なし)

  • 触覚・圧覚
    • 触覚低下を診察で確認。
  • 振動覚
    • 音叉で振動覚を確認。(下肢は内果・膝蓋骨、上肢は橈骨・尺骨茎状突起・肘頭など)
  • 位置覚
    • Romberg徴候陽性
      • 目をつぶるとふらつきが増悪する。勘違いされやすいが、起立だけでふらついて、閉眼で変化ないものは、陰性。
    • 関節位置覚
      • 閉眼してもらい、関節を小さく上下に動かし、その方向を答えてもらう(このとき指の横を持つことが重要)
    • 偽性アテトーゼ
      • 上肢を前方挙上し、指を広げて閉眼させる。(いわゆる上肢Barreの手のひらを裏返した版)
      • 位置覚が高度に低下すると指がゆっくり不規則に動く。頚椎症性脊髄症などでもみられます。
    • 指鼻試験・踵膝試験
      • 開眼では可能だが閉眼で著しく悪化すれば、感覚性運動失調を示唆する。
      • 小脳失調で行う「指華指」ではなく、患者自身の鼻と上肢をまっすぐ伸ばした状態を左右交互に繰り返させます。これを開眼・閉眼時で行い、差を見ます。

病因・鑑別診断

特発性の場合のほか、免疫介在性、代謝性、遺伝性、感染性、毒性の原因によって生じる可能性がある。

病態生理

Aβ線維の軸索の損傷である。

大径線維は運動神経であるAα線維と、今回問題であるAβ線維の2種類あります。
神経伝導検査ではAα線維・Aβ線維のみを評価できます。
また、生理学的には固有感覚には筋紡錘由来のIa群(Aα相当)およびII群(Aβ相当)などが関与します。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施する。さらに、以下を検討する。

  • 腰椎穿刺
    • 炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(AIDPおよびCIDPを含む)、神経節障害、腫瘍性疾患、感染症が疑われる場合の評価に限定して行う。
  • 脂肪組織生検
    • アミロイドーシスなどの浸潤性病変を評価できる。
  • 神経生検
    • 血管炎、腫瘍、アミロイドーシスなどの浸潤性病変が強く疑われる場合に検討する。
    • 基本的には、腓腹神経から行うことが多い。

小径線維ニューロパチー(Small Fiber Neuropathy)

障害される神経線維:大径線維、小径線維、感覚線維、運動線維、自律神経線維 によって定義された概念です。

別名、小径線維多発ニューロパチー(small fiber polyneuropathy)・小径線維感覚ニューロパチー(small fiber sensory neuropathy)

「小径線維感覚ニューロパチー」は体性感覚線維の障害を強調する名称である。一方、自律神経線維も障害され得るため、総称としては小径線維ニューロパチー(SFN)が適切である。(実臨床でもそちらの方が使用されていると思います。)

定義

小径有髄Aδ線維および無髄C線維の機能障害または脱落によって生じる末梢神経障害。

  • Aδ線維 ・・・主として刺すような速い痛み、冷覚 を伝達。
  • C線維 ・・・主として灼熱性の遅い痛み、温覚、掻痒感 を伝達。
  • 末梢自律神経線維 ・・・発汗、血管運動、心拍・血圧、消化管・膀胱機能など

ただし、各感覚障害と障害されている線維の対応は完全な一対一ではない。

純粋なSFNでは大径線維と運動線維が保たれるため、通常は筋力、腱反射、振動覚、位置覚、協調運動が保たれる。これらに明らかな異常があれば、純粋なSFNではなく、大径線維を併発した可能性(混合型ニューロパチー)などを考える。 Pract Neurol. 2014 Dec;14(6):368-79.

なお、C線維は無髄、Aδ線維は薄い髄鞘を有するが、いずれも通常の神経伝導検査では直接評価できないため、通常の神経伝導検査上の「軸索性・脱髄性」に分類することは難しい。

臨床像

Aδ線維・C線維による症状が主体です。

分布は以下のようになります。

  • 長さ依存性 ・・・典型的
    • 左右対称・手袋靴下型
    • 両足趾・足底 → 足関節、下腿 → 手指 と上行することが一般的。
    • distal dying-back型の軸索変性によって生じると考えられています。
  • 長さ非依存性 
    • 斑状・多巣性、左右非対称にみられうる
    • 顔面、頭皮・体幹上肢や大腿などの近位部に生じることが多い。
    • 後根神経節の小径感覚ニューロンの障害を示唆すると考えられています。

自覚症状としては、以下を認めます。

  • 自覚症状
    • 異常感覚
      • 灼けるような持続痛(灼熱痛)
      • 電撃痛、刺すような痛み
      • ピリピリ、チクチクする異常感覚
      • 不快な皮膚感覚、むずむず感
    • 感覚鈍麻
      • 温度が分かりにくい
      • 熱さや冷たさに気づきにくい
      • 痛みに気づきにくい
  • 刺激誘発性疼痛
    • アロディニア
      • 通常は痛みを起こさない刺激(衣服、寝具、軽く皮膚をなでる刺激)によって痛みが生じるものを、動的機械性アロディニアという。
      • 軽い圧迫で痛む静的機械性アロディニアや、通常は痛くない温度で痛む温熱性アロディニアなど。
    • 痛覚過敏
      • ピン刺激や熱刺激など、本来痛みを起こす刺激を通常より強く痛いと感じる。
  • 自律神経症状
    • 循環器症状
      • 繰り返す起立性低血圧・失神
      • 動悸
      • 「立位で増悪する倦怠感、頭が働かない感じ、運動耐容能の低下」と訴えることもある
    • 消化管症状
      • 便秘と下痢の反復(一般的な自律神経障害では特徴的とされる)
      • 早期満腹感、胃もたれ、腹部膨満感、悪心、嘔吐
    • 泌尿生殖器症状
      • 尿閉、尿勢低下
      • 尿失禁
      • 勃起障害、射精障害などの性機能障害
    • 発汗・体温調節障害
      • 発汗量低下、体温調節障害(高体温
      • 手足の皮膚温・色調の変化
    • 瞳孔・分泌障害
      • 羞明
ディップ先生

患者さんはおそらく、痛み・しびれ、として訴えることが多いと思います。
「しびれ」が運動麻痺・感覚鈍麻・異常感覚のどれかであることはもちろん、異常感覚の性状や誘発因子を問診で確認することが診断に重要です。

診察

(本論文には記載なし)

  • 痛覚
    • 爪楊枝などで確認
    • 痛覚低下・痛覚脱失
    • 通常以上に痛く感じる痛覚過敏・刺激後も痛みが残るafter-sensation
  • 温度覚
    • 冷覚をアルコール綿などで確認する。
  • アロディニア
    • ティッシュなどで皮膚を軽くなでて、本来痛くない刺激を「痛い」と感じるか確認する
    • 最も痛む部位と健常部位を比較する。
  • 大径線維が保たれていることの確認
    • 純粋SFNでは原則として他の神経傷害は正常である。明らかな筋力低下、反射低下、位置覚・振動覚障害、感覚性運動失調があれば、混合型ニューロパチー、感覚性ニューロノパチー、脊髄後索病変などを検討する。
    • 徒手筋力検査(MMT)
    • 深部腱反射
    • 振動覚
    • 関節位置覚
    • 指鼻試験・踵膝試験
    • Romberg試験
  • 自律神経診察
    • 臥位・立位の血圧および心拍数(起立性低血圧)
      • 立位または60度以上のhead-up tilt後3分以内に収縮期血圧20 mmHg以上または拡張期血圧10 mmHg以上低下と定義されています。 Neurology. 1996 May;46(5):1470.
      • 正確にはHead Up Chilt試験などを行います。
    • 瞳孔の左右差
    • 発汗の左右差
    • 皮膚乾燥

病因・鑑別診断

原因不明のことも多いが、以下を検討する。
シェーグレン病関連SFNは抗SSA抗体陰性例でも起こり得るため、血清反応陰性だけでは除外できない。必要に応じて口唇小唾液腺生検を含めて評価する。

  • 代謝性
    • 糖尿病(最多)、甲状腺疾患、腎障害
  • 免疫・炎症性
    • サルコイドーシス、セリアック病など
  • 異常蛋白・浸潤性
    • 単クローン性免疫グロブリン血症(多発性骨髄腫など)、アミロイドーシス
  • 感染性
    • HIV、肝炎など
  • 薬剤・毒性
    • 抗がん薬、ビタミンB6過剰など
  • 遺伝性
    • Fabry病、Naチャネル異常症など
  • 特発性

病態生理

Aδ線維およびC線維の機能障害または脱落

障害には二つの側面がある。

  • 機能脱落:痛覚・温度覚低下、発汗低下
  • 機能亢進:自発痛、灼熱痛、電撃痛、アロディニア、痛覚過敏

なぜ同じ小径線維障害から、無痛性の感覚低下と疼痛性異常感覚の双方が生じるかは完全には解明されていない。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施する。さらに、以下を検討する。

  • 神経伝導検査・筋電図
    • 純粋SFNでは通常正常である。(神経伝導検査では、より太いAα・Aβ線維しか評価できない)
    • 検査目的はSFNを直接証明することではなく、他神経傷害の合併を評価すること。
  • 皮膚生検
    • 通常は3 mmパンチ生検を行い、表皮内神経線維密度(IENFD)を測定する。
    • 長さ依存性を疑う場合は、遠位下腿を。非依存性なら大体近位部も評価する。
    • 年齢・性別などを考慮した施設基準値と比較する。皮膚生検は小径線維の構造的脱落を示すが、機能を直接測定する検査ではなく、正常でもSFNを完全には否定できない
  • 自律神経機能検査
    • QSART(Quantitative Sudomotor Axon Reflex Test・定量的発汗運動軸索反射検査)
      • 発汗に関与する節後性交感神経線維を評価する検査です。汗腺は神経終末からノルアドレナリンではなくアセチルコリンが放出されます。
      • アセチルコリンをイオントフォレーシスで皮膚内へ導入すると、まずC線維の興奮が軸索を逆行し、分岐部から別の終末へ順行します。そして隣接する汗腺から発汗が起きます。
      • この過程に異常があると、発汗の潜時、量、持続時間が障害されます。
      • ただ、汗腺機能、年齢、薬剤、温度、技術条件などの影響を受け、正常でもSFNを否定できません。
    • 自律神経反射検査(Autonomic reflex screen)
      • 自律神経の主要領域を評価する複数の検査のまとめを指すようです。
      • 心臓迷走神経機能(副交感神経、特に心臓迷走神経系を評価)
        • 深呼吸時の心拍変動
        • Valsalva比(Valsalva負荷によって生じる「頻脈とそれに伴う反射性徐脈」の大きさを、心電図のR–R間隔から求めた値)
      • 交感神経アドレナリン作動性機能(血管収縮を担う交感神経機能や圧受容器反射を評価)
        • Valsalva負荷中の連続血圧
        • Head-up tilt testでの血圧・心拍変化
      • 発汗運動機能
        • QSARTなど
      • 結果から、心臓迷走神経・交感神経アドレナリン作動性・発汗運動の障害をそれぞれ評価し、場合によってはComposite Autonomic Severity Score(CASS)で重症度を定量する。
    • 心拍変動
      • 起立試験・Head-up tilt test(tilt table test)
    • sympathetic skin response(交感神経性皮膚反応)
      • 手掌や足底に表面電極を置き、末梢神経への電気刺激・深呼吸・音刺激・精神的刺激などを加えて、刺激後に生じる一過性の皮膚電位変化を記録することで、汗腺活動に伴って変化する皮膚の電気的性質を記録するようです。

脱髄性多発神経根ニューロパチー

解剖学的な障害部位:末梢神経、神経根、後根神経節+電気生理学的所見:軸索性、脱髄性 で定義された概念です。

定義

脱髄性多発神経根ニューロパチーとは、感覚・運動神経根および、それらに連続する末梢神経の髄鞘を主病変とするニューロパチーである。

  • 感覚神経根および運動神経根
  • それらに連続する遠位末梢神経

これらにまたがって広がりうる、脱髄性ニューロパチーを指す。
必ずしも、両方に存在するわけではないため、注意が必要。

GBS・AIDP・CIDPと本症の関係

まずGBS・AIDP・CIDPの用語の定義について整理します。(神経根の定義や病態生理の詳細は下の脱髄の原因を参考にしてください)

  • CIDP(Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy):8週間以上持続・また再発する免疫介在性多発神経根ニューロパチーの総称
  • GBS(Guillain–Barré症候群):急性に発症する免疫介在性多発神経根ニューロパチーの総称
  • AIDP(Acute Inflammatory Demyelinating Polyradicuroneuropathy):GBSのうち、主に髄鞘が障害される脱髄型
  • AMAN(Acute Motor Axonal Neuropathy):運動神経の軸索型
  • AMSAN(Acute Motor Sensory Axonal Neuropathy):運動・感覚神経の軸索型
  • Miller Fisher症候群:眼球運動障害・運動失調・腱反射消失を特徴とするGBS関連病型
神経根の解剖と脱髄の原因
  • 神経根は、脊髄と末梢神経をつなぐ根元部分で、感覚神経の束である後根と、運動神経の束である前根がある。
  • 神経根は中枢神経である脊髄からでた末梢神経であり、髄鞘はSchwann細胞によって形成される。
  • 神経根や神経叢などの近位部では、血液中の免疫細胞や抗体が神経内へ入るのを防ぐ血液「神経」関門が、末梢神経より不完全です。そのため免疫反応の影響を受けやすいと考えられており、脱髄型のギラン・バレー症候群(GBS)では、神経根から近位末梢神経に炎症と脱髄が生じやすいと考えられています。(そのため、脱髄性・多発・神経根ニューロパチーを呈する)
    • ただし、バリアの脆弱性だけが原因ではなく、Schwann細胞、髄鞘、ランヴィエ絞輪周辺に対する免疫反応も関与すると考えられている。

臨床像

通常は対称性であるが、局所性または多巣性に現れることもある。
通常は単相性に進行し、4週間以内に極期へ達する場合(AIDP)や、緩徐に進行したり、再発・寛解を繰り返す場合(CIDP)がある。

神経根という、末梢神経の束ともいえる部分の障害なので、広い範囲に症状が出ることが多い

  • AIDP ・・・運動障害が中心・数日から4週間以内に筋力低下が進行して極期に達する
  • CIDP ・・・運動+感覚がいずれもでる。8週間以上かけて進行するか、増悪と改善を繰り返すものを指す。
    • これらは臨床病型で分類されており、クリアカットに分類できないこともある。例えば発症時にGBSと考えられても、8週間を超えて悪化する場合や、治療後の再増悪を3回以上繰り返す場合は急性発症型CIDPと分類されることもある。
  • 感覚症状
    • 異常感覚、感覚低下
  • 運動症状
    • 両下肢の筋力低下
    • 筋量低下、筋萎縮
  • SjDにおける臨床像
    • SjDに伴う重症ニューロパチー44例の研究では、84%に左右対称性の筋力低下、57%に四肢不全麻痺、27%に対麻痺を認めた。ただし、筋力低下を組み入れ条件とした集団であり、軸索型・脱髄型・混合型が含まれ、全例がCIDPではない。
    • SjD合併CIDPと通常のCIDPを比較した研究では、四肢の筋力低下、感覚障害、電気生理所見は概ね同様だった。一方、脳神経障害はSjD合併例で多かった。

診察

筋力・感覚の分布を確認することが重要です。

  • 筋力
    • 典型的には、近位・遠位が同時に障害されることが、遠位優位の長さ依存性軸索ニューロパチーとの鑑別になる。
  • 感覚障害
    • 感覚障害は遠位が優位なことも多いようです(四肢末端など)
    • 近位が障害されにくい、というわけではなく、近位の方が隣接するデルマトームが重なり、皮膚感覚低下として現れにくい、また振動覚・位置覚を定量しにくいなどの理由があるようです。
  • 腱反射
    • 典型的CIDPでは上下肢に広く反射低下・消失を認める。
    • 遠位型ではアキレス腱反射から低下しやすく、限局型・多巣型では障害部位に対応した反射だけが低下することがある。

病因・鑑別診断

原著には「CIDPは免疫介在性である」の一文だけでした。
ここでは詳述しませんが、以下が参考になります。

  • Arthritis Care Res (Hoboken). 2026 Jul;78(7):860-74.
  • J Peripher Nerv Syst. 2021 Sep;26(3):242-68.
  • 日本神経学会 CIDP/MMN診療ガイドライン2024

病態生理

一般的なCIDPの機序としては、神経根・神経叢・末梢神経に対する免疫反応によって血液神経関門が障害され、T細胞、抗体、補体、マクロファージなどが神経内へ侵入する。マクロファージによる髄鞘剥離やRanvier絞輪周辺の機能障害によって、脱髄が生じる。

SjD合併例でも免疫介在性機序が推定されるが、SjD固有の標的抗原や、通常のCIDPとは異なる機序は確立していない。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施します。

  • 神経伝導検査・針筋電図
    • 脱髄を特定するために非常に重要な検査です。(これだけで病巣が神経根だけに由来するかは不明。)
    • 二次性軸索障害が進むと、複合筋活動電位の振幅低下や、針筋電図における脱神経所見・慢性神経原性変化が加わる。
  • 腰椎穿刺
    • 髄液検査は神経伝導検査を補助するものであり、すべての患者に必須ではない。電気生理学的診断が不十分な場合や、感染症、悪性疾患、中枢神経病変などを除外する必要がある場合に検討する。
    • 基本的には以下を測定します
      • 初圧
      • 細胞数・分画
      • 総蛋白
      • 髄液・血清アルブミン比(QAlb)
    • CIDPでは、細胞数増加が乏しいにもかかわらず総蛋白またはQAlbが上昇する蛋白細胞解離を認めることがある。ただし、髄液蛋白上昇の感度は42~77%程度で、正常でもCIDPを否定できない。逆に蛋白上昇だけでCIDPと診断できない。
    • 明らかな細胞数増加がある場合は、感染症、悪性腫瘍、サルコイドーシスなど別の原因を再検討する。
    • IgG index、髄液特異的オリゴクローナルバンド(OCB)などは、純粋なCIDPのルーチン診断指標ではない。SjDの中枢神経病変、髄膜炎、感染症などが鑑別に入る場合に、髄液と血清を同時採取して追加する。
    • SjD関連重症ニューロパチー44例では、総蛋白上昇51%、QAlb上昇46%に対し、髄腔内IgG産生は5%、髄液特異的オリゴクローナルバンドは7%だった。末梢神経障害の評価ではIgG indexより、細胞数・総蛋白・QAlbが直接的な指標といえる(IgG index・OCBは否定にも使用できない)

参考文献

感覚性神経節障害(ganglionopathy/sensory neuronopathy)

障解剖学的な障害部位:末梢神経、神経根、後根神経節 によって定義された概念です。
大径感覚ニューロンの障害が主体となり、感覚性運動失調を呈する病型です。

他の名称として、後根神経節障害(dorsal root ganglionopathy)・感覚性ニューロノパチー(sensory neuronopathy)・感覚性失調性ニューロパチー(sensory ataxic neuronopathy)があります。

注意点として、神経障害・sensory neuro「no」pathy・ニューロ「」パチー であり、ニューロパチーとは異なる点に注意が必要です。

定義

脊髄後根神経節に存在する一次感覚ニューロンの細胞体が障害されることによって生じる、純粋感覚性の末梢神経障害である。

後根神経節には、大径有髄線維(Aβ線維)に連続する感覚ニューロンと、小径線維に連続する感覚ニューロンの両方が存在する。そのため、障害される細胞の種類によって、位置覚・振動覚・触覚から、痛覚・温度覚まで、さまざまな感覚が障害され得る

一方、運動ニューロンの細胞体は後根神経節には存在しない。このため、純粋な感覚性神経節障害では、運動神経は障害されない。明らかな筋力低下や運動神経伝導異常があれば、運動神経根・末梢神経などの障害が併存していると考える。

後根神経節の解剖学的な部位。

臨床像

細胞体自体の障害のため、基本的には非長さ依存性
左右対称性・非対称性はいずれもあり得る。

発症様式は一定ではなく、急性・亜急性・慢性のいずれもあり得る。突然重度の感覚性運動失調を発症する例から、数年かけて緩徐に進行する例まで存在する。

SjDの感覚性ニューロノパチー13例の報告では、全体として慢性・潜行性に進行する傾向があり、11例では神経症状がSjDの診断に先行するか、ほぼ同時に出現していた。従ってSjDの診断がついていなくても、本病態を疑った場合にはSjDを確認しにいく必要がある。

典型的には長さ非依存性となる。複数の後根神経節が不均一に障害されるため、通常は単一の末梢神経領域や単一デルマトームには一致しない。

  • 大径線維の細胞体の障害 ・・・大径線維(軸索性)ニューロパチーに類似した症状
    • SjDの典型的な感覚性失調性ニューロパチーでは、大径感覚ニューロンの障害が強いことが多い。むしろ小径線維は保たれることもある。
    • 上肢・下肢の遠位部と近位部、体幹、顔面などに分布する。
    • 位置覚や触覚が主体に障害され、以下のような症状が生じる。
    • 暗い場所や閉眼時にふらつく・足元を見ないと歩けない(視覚情報の低下で症状が増悪)
    • 床を強く踏みつけるように歩く・手元を見ないと手をうまく動かせない(位置を確認するため)
    • ボタン掛けや箸の操作が難しい
    • 力が入らない」「手足が自分のものではない」と感じる
      • 位置覚情報が失われて運動を適切に調節できないため「力が入らない」という主訴になることがある。当然、徒手筋力検査では筋力が保たれているため、その場合には深部感覚障害を疑うべき。
  • 小径線維の細胞体の障害 ・・・小径線維ニューロパチー(Small Fiber Neuropathy)に類似した症状
    • 分布は同じく長さ非依存性で、顔面、頭皮、舌、体幹、近位四肢、手などから障害されることがある。左右対称性のことも、斑状・非対称性のこともある。
    • 灼熱感・電撃痛・ピリピリ、チクチクする異常感覚など
    • 小径線維ニューロパチーとの区別が難しい場合がある。

診察

典型的には振動覚・位置覚障害が主に生じます。
感覚障害が手袋靴下型に限定されず、上肢や体幹にも早期から認められる場合が典型的です。

  • 振動覚
    • 音叉で振動覚を確認。(下肢は内果・膝蓋骨、上肢は橈骨・尺骨茎状突起・肘頭など)
  • 位置覚
    • Romberg徴候陽性
      • 目をつぶるとふらつきが増悪する。勘違いされやすいが、起立だけでふらついて、閉眼で変化ないものは、陰性。
    • 関節位置覚
      • 閉眼してもらい、関節を小さく上下に動かし、その方向を答えてもらう(このとき指の横を持つことが重要)
    • 偽性アテトーゼ
      • 上肢を前方挙上し、指を広げて閉眼させる。(いわゆる上肢Barreの手のひらを裏返した版)
      • 位置覚が高度に低下すると指がゆっくり不規則に動く。頚椎症性脊髄症などでもみられます。
    • 指鼻試験・踵膝試験
      • 開眼では可能だが閉眼で著しく悪化すれば、感覚性運動失調を示唆する。
      • 小脳失調で行う「指華指」ではなく、患者自身の鼻と上肢をまっすぐ伸ばした状態を左右交互に繰り返させます。これを開眼・閉眼時で行い、差を見ます。
  • 痛覚・温度覚・触覚
    • 大径線維優位の病型では位置覚・振動覚障害ほど強くないことが多いが、小径ニューロンも障害されれば痛覚・温度覚低下を認める。触覚も障害され得るため、「触覚が保たれていること」を診断条件とはしない。
  • 深部腱反射
    • 感覚性神経節障害では、反射弓の求心路であるIa感覚線維が障害されるため、運動神経と筋力が保たれていても反射が低下・消失する。
  • 筋力
    • 純粋な感覚性神経節障害では筋力は保たれる。

病因・鑑別診断

特に以下を鑑別する。

  • 傍腫瘍性神経症候群
    • 小細胞肺癌を中心とする悪性腫瘍・抗Hu(ANNA-1)抗体 など
    • 感覚性ニューロノパチーは悪性腫瘍との関連が比較的強い神経症候であるため、急性・亜急性発症、高齢、体重減少、喫煙歴、炎症性髄液所見、真の運動障害を伴う場合は、傍腫瘍性病変を優先して検索する。
  • 薬剤・毒性
    • シスプラチンなどの白金製剤・ビタミンB6(ピリドキシン)の過剰摂取
  • 自己免疫性・感染性疾患
    • セリアック病・全身性エリテマトーデス・HIVなど
  • 遺伝性・変性疾患
    • RFC1反復配列伸長によるCANVAS/RFC1関連疾患・Friedreich失調症・ミトコンドリア病
  • 臨床像の類似する疾患
    • 遠位優位の軸索性感覚性多発ニューロパチー
    • 感覚型CIDPなどの感覚神経根障害
    • ビタミンB12欠乏、銅欠乏などによる後索障害
    • 小脳性運動失調、両側前庭障害
    • 血管炎性多発単ニューロパチー

Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021 Jul;8(4):e1014.
Muscle Nerve. 2016 Jan;53(1):8-19.

病態生理

後根神経節の血管は末梢神経幹の血液神経関門より透過性が高く、血中の抗体、免疫細胞、薬剤・毒性物質の影響を受けやすい。この解剖学的特徴が、自己免疫疾患、傍腫瘍性疾患、抗癌薬などで後根神経節が選択的に障害される一因と考えられている。

SjDでは、後根および後根神経節へのT細胞浸潤と、感覚ニューロンの変性・脱落が病理学的に報告されている。細胞体が失われると末梢側軸索と中枢側軸索の両方が変性するため、SNAP低下、末梢神経の軸索脱落、脊髄後索の二次変性が同時に説明できる。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施する。さらに、以下を検討する。

  • 神経伝導検査
    • 最も重要な所見は、長さ非依存性に感覚神経活動電位(SNAP)が低下または消失することである。
    • 運動神経伝導検査は原則として正常
    • 針筋電図も原則として正常
    • 感覚神経伝導速度よりもSNAP振幅の低下が目立つ(軸索障害様)
  • 脊髄MRI
    • 慢性例では、後根神経節から脊髄へ入る中枢側軸索が変性し、頚髄後索の薄束・楔状束にT2高信号を認めることがある。これは後根神経節障害に続く二次性変性であり、必ずしも原発性脊髄炎を意味しない。
    • SjD関連ニューロノパチー14例では12例に頚髄後索の高信号を認め、広範な後索病変ほど四肢・体幹の感覚障害が高度だった。ただし、MRIが正常でも感覚性神経節障害は否定できず、後索高信号自体も特異的ではない。 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001 Oct;71(4):488-92.
  • 腰椎穿刺
    • 炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(AIDPおよびCIDPを含む)、神経節障害、腫瘍性疾患、感染症が疑われる場合の評価に限定して行う。
  • 体性感覚誘発電位(SEP)
    • 振幅または導出不能となることがある。ただし、末梢感覚神経から後索までの障害を意味するのみで、神経節障害特異的ではない。
  • 腰椎穿刺
    • 原著には「考慮してよい」とだけ記載。
    • 感覚性神経節障害に特有の髄液所見は示されていない。急速進行例、感染症、悪性腫瘍、髄膜病変、神経根障害または中枢神経障害の併存が疑われる場合に行う。

血管炎性ニューロパチー

用語自体は、病態生理・病因:血管炎性、毒性、免疫介在性 によって定義されていますが、実質多発単神経炎を指し、解剖学的な障害分布:多発ニューロパチー、単ニューロパチー、多発単ニューロパチー、長さ依存性 によっても定義されていると言えます。

別名、多発単ニューロパチー(multiple mononeuropathy)・多発性単神経炎(mononeuritis multiplex)。

ディップ先生

血管炎性ニューロパチーと、多発単神経炎は1対1ではありませんが、比較的特徴的であり、その介入の緊急性も加味して思い切った分類にしていると思います。 J Peripher Nerv Syst. 2010 Sep;15(3):176-84.

定義

末梢神経を栄養する血管である神経栄養血管(vasa nervorum)に血管炎が生じ、神経が虚血性に障害されるニューロパチーである。

病理学的に確実な血管炎性ニューロパチーと診断するには、単なる血管周囲の炎症細胞だけでは不十分であり、血管壁内への炎症細胞浸潤に加えて、血管壁破壊、フィブリノイド壊死、血栓形成などの血管障害を認める必要がある。

皮膚生検で白血球破砕性血管炎(leucocytoclastic vasculitis)などはられますが、これだけでは不充分ということです。

臨床像

障害された領域に含まれる線維構成に応じて、感覚優位または感覚運動性の臨床像を呈し、大径・小径線維の障害程度にも差が生じ得るが、典型的には感覚・運動がいずれも障害される

通常は、急性にすすみ、強い疼痛を伴うことが多い。

多発「単」神経炎症状であり、単神経障害が多発する。
経時的に進行していくこともある。進行すると、多発神経傷害と区別ができない場合がある

  • 強い疼痛・異常感覚
    • 急性発症の片側の足背・脛骨前面外側に生じることが典型的。(総腓骨神経の範囲)
    • 上肢では、第5指・第4指尺側に生じる(尺骨神経の範囲)
      • 第4指では、尺側と橈側(つまり左右)で症状に違いがあることが重要。これがあれば、ほぼ尺骨神経の障害(Ring Finger Splitting)。
    • 灼ける、刺される、電気が走るような痛みなどと表現される。
  • 感覚鈍麻
    • 一枚膜が張っている感じなど。
  • 運動麻痺
    • 片側の下垂足が最も典型的(総腓骨神経麻痺による前脛骨筋の筋力低下)
    • 上肢では、手指外転・内転低下が典型的(尺骨神経による。手を広げにくいといった症状。)
    • 手指が動かしにくい、物を落とす

診察

特異的な診察があるわけではなく、丁寧に運動と感覚を診察して、単神経障害が多発していることを確認します。初期では、単神経障害で発症することももちろんあり得ます

  • 筋力
  • 感覚

病因・鑑別診断

  • クリオグロブリン血症やANCA関連血管炎など、SjD以外の全身性血管炎
  • SjDに伴う遠位軸索性感覚運動ニューロパチー
    • 分布が異なる(慢性・対称性・遠位優位)。
  • 感覚性神経節障害
    • 非長さ依存性だが、原則として純粋感覚性で筋力は保たれる。
  • CIDP
    • 一般的には遠位・近位いずれも障害される。
  • 複数の絞扼性ニューロパチー
    • 手根管、肘部管、腓骨頭部など解剖学的圧迫部位に一致するかを確認する。(遺伝性圧脆弱性ニューロパチーなどで生じる)
  • アミロイドーシス、サルコイドーシス
  • HCV、HIV、ハンセン病などの感染症
  • リンパ腫(特に血管内リンパ腫)、神経リンパ腫症

病態生理

血管炎では、神経上膜・神経周膜の栄養血管が局所的に障害され、その下流の神経束または神経束内の一部に区域性虚血が生じる。神経内膜毛細血管の分布、側副血行路、各線維の虚血感受性が異なるため、軸索障害は神経幹全体に均一には生じない
また、虚血が生じると神経束が浮腫に陥り、神経周膜は伸展しにくいため、神経束内圧が上昇し、毛細血管がさらに圧迫され、より虚血になると考えられている。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施する。さらに、以下を検討する。

  • 神経伝導検査
    • 左右の運動神経と感覚神経を比較し、非対称性・多巣性の軸索性感覚運動ニューロパチーを確認する。
    • 早期には局所的な軸索機能不全が伝導ブロックのように見えることがあるが、これは脱髄による伝導ブロックとは異なる「偽性伝導ブロック(Pseudo conduction block)」であり、時間経過とともにCMAP低下や脱神経所見が明らかになる。
  • 血液検査
    • 血算・白血球分画、特に好酸球 ・・・特に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症で多いため。
    • RF・C3、C4、CH50・クリオグロブリン ・・・クリオグロブリン血症ではRFがほぼ陽性になる。
    • HBV、HCV、HIV
    • MPO-ANCA、PR3)ANCA など。
  • 神経生検
    • 病理では、血管炎の所見(血管壁内の炎症細胞浸潤・フィブリノイド壊死・血管内腔狭窄など)に加えて、神経束ごとに程度の異なる軸索脱落、活動性軸索変性、ワーラー変性、出血・ヘモジデリン沈着などを認める。
    • 注意点として、血管炎は神経内にまだらに存在するため、神経生検の感度は概ね50~60%にとどまる。陰性でも血管炎性ニューロパチーを完全には否定できない。
    • 基本的には、腓腹神経から行うことが多い。

自律神経系ニューロパチー

別名、自律神経ニューロパチー(autonomic neuropathy)・自律神経節障害(autonomic ganglionopathy)。

ただし、両者は厳密には同義ではなく、自律神経ニューロパチーは末梢自律神経系の障害全般を指す広い概念であり、自律神経節障害は、そのうち交感・副交感神経節が主な障害部位となる病型である。

定義

交感神経・副交感神経を含む末梢自律神経系が障害され、循環、消化管、排尿・性機能、発汗・体温調節、瞳孔、分泌機能などに異常を生じるニューロパチーである。

主な障害部位は以下のように分けられる。

  • 自律神経節障害:神経節における節前線維から節後線維への伝達が障害される。
  • 節後性自律神経ニューロパチー:主として無髄C線維からなる節後線維が障害される。小径線維ニューロパチーに伴うことがある。
  • 節前性・中枢性自律神経障害:脊髄や脳幹、中枢自律神経路の障害であり、狭義の末梢神経障害とは区別する。

臨床像

典型的には亜急性〜慢性経過が多い。数日単位で経過した場合には他の疾患の鑑別が重要。(後述)
非常に症状は多彩である。
SjDそのもので、高体温や口腔乾燥等は認めるため、鑑別が重要。

  • 循環器症状
    • 繰り返す起立性低血圧・失神
    • 動悸
    • 「立位で増悪する倦怠感、頭が働かない感じ、運動耐容能の低下」と訴えることもある
  • 消化管症状
    • 便秘と下痢の反復が特徴的とされる(特に夜間下痢)
    • 早期満腹感、胃もたれ、腹部膨満感、悪心、嘔吐
  • 泌尿生殖器症状
    • 尿閉、尿勢低下
    • 尿失禁
    • 勃起障害、射精障害などの性機能障害
  • 発汗・体温調節障害
    • 発汗量低下(高体温
    • 手足の皮膚温・色調の変化
  • 瞳孔・分泌障害
    • 羞明

診察

症状ベースで自律神経障害が存在する例と、客観的検査で特定できる例は
SjD関連ニューロパチー92例の病型分類では、自律神経ニューロパチーは約3%でしたが、317例の質問票調査では54.6%が自律神経症状の基準を満たしました。(Brain. 2005 Nov;128(Pt 11):2518-34.・Ann Rheum Dis. 2012 Dec;71(12):1973-9.)

  • 起立性低血圧
    • 安静臥位で血圧・脈拍を測定し、立位後1分、3分で再測定する。同時に、めまいや眼前暗黒感の出現を確認する。
    • 一般に、立位または60度以上の傾斜後3分以内に、収縮期血圧が20 mmHg以上低下 または 拡張期血圧が10 mmHg以上低下した場合を起立性低血圧とする。(脱水・降圧薬などの影響を除外する) Neurology. 1996 May;46(5):1470.
  • 自律神経診察
    • 臥位・立位の血圧および心拍数(起立性低血圧)
      • 一般的には、立位で20mmHg以上低下すれば優位。正確にはHead Up Chilt試験などを行います。
    • 瞳孔の左右差
    • 発汗の左右差
    • 皮膚乾燥

病因・鑑別診断

  • 循環血液量・薬剤
  • 代謝性・浸潤性ニューロパチー
    • 糖尿病、アミロイドーシス
    • 腎不全、ビタミンB12欠乏
  • 免疫性・感染性
    • 自己免疫性自律神経節障害
    • Guillain–Barré症候群
    • 傍腫瘍性ニューロパチー
    • 感染後自律神経障害
  • 神経変性疾患
    • 多系統萎縮症
    • Parkinson病、Lewy小体型認知症
    • 純粋自律神経不全症
  • 自律神経症候群
    • 体位性頻脈症候群
    • 反射性失神
  • 臓器固有の疾患
    • 心疾患、消化管疾患、泌尿器疾患
  • SjD自体による乾燥

病態生理

SjDでは、節後性小径線維障害、自律神経節障害、受容体に対する自己抗体などが提唱されているが、SjDに固有の単一機序は確立していない。したがって、SjD患者に自律神経症状があることを、そのまま自己免疫性自律神経節障害と同一視してはならない。

評価

神経伝導検査および筋電図検査を実施する。さらに、以下を検討する。

  • 自律神経機能検査
    • QSART(Quantitative Sudomotor Axon Reflex Test・定量的発汗運動軸索反射検査)
      • 発汗に関与する節後性交感神経線維を評価する検査です。汗腺は神経終末からノルアドレナリンではなくアセチルコリンが放出されます。
      • アセチルコリンをイオントフォレーシスで皮膚内へ導入すると、まずC線維の興奮が軸索を逆行し、分岐部から別の終末へ順行します。そして隣接する汗腺から発汗が起きます。
      • この過程に異常があると、発汗の潜時、量、持続時間が障害されます。
      • ただ、汗腺機能、年齢、薬剤、温度、技術条件などの影響を受け、正常でもSFNを否定できません。
    • 自律神経反射検査(Autonomic reflex screen)
      • 自律神経の主要領域を評価する複数の検査のまとめを指すようです。
      • 心臓迷走神経機能(副交感神経、特に心臓迷走神経系を評価)
        • 深呼吸時の心拍変動
        • Valsalva比(Valsalva負荷によって生じる「頻脈とそれに伴う反射性徐脈」の大きさを、心電図のR–R間隔から求めた値)
      • 交感神経アドレナリン作動性機能(血管収縮を担う交感神経機能や圧受容器反射を評価)
        • Valsalva負荷中の連続血圧
        • Head-up tilt testでの血圧・心拍変化
      • 発汗運動機能
        • QSARTなど
      • 結果から、心臓迷走神経・交感神経アドレナリン作動性・発汗運動の障害をそれぞれ評価し、場合によってはComposite Autonomic Severity Score(CASS)で重症度を定量する。
    • 心拍変動
      • 起立試験・Head-up tilt test(tilt table test)
    • sympathetic skin response(交感神経性皮膚反応)
      • 手掌や足底に表面電極を置き、末梢神経への電気刺激・深呼吸・音刺激・精神的刺激などを加えて、刺激後に生じる一過性の皮膚電位変化を記録することで、汗腺活動に伴って変化する皮膚の電気的性質を記録するようです。
  • 臓器別検査
    • 排尿後残尿測定
    • 心電図、Holter心電図
    • 眼科的な瞳孔・調節機能評価
  • 急性または亜急性の広範な自律神経障害
    • 抗ganglionic acetylcholine receptor抗体や抗Hu抗体などの傍腫瘍性抗体を検討する。
    • 抗ganglionic acetylcholine receptor抗体陽性は自己免疫性自律神経節障害を支持するが、陰性でも否定できない。
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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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