シェーグレン病(Sjögren’s disease、SjD)は、涙腺・唾液腺に代表される外分泌腺への慢性的なリンパ球浸潤による乾燥症状(sicca症状)を代表的な症候とする自己免疫疾患です。
そのため、これらの乾燥症状を客観的に証明する眼の検査はシェーグレン病の診断においても非常に重要で、診断・分類基準に組み込まれています。
シェーグレン病の
治療から調べる
シェーグレン病について知る
医療者向け
まとめ

ドライアイの評価方法
Schirmer試験
細長い濾紙を下眼瞼の外側寄りの結膜嚢内に挿入し、通常は閉眼した状態で5分間留置し、5分後に濾紙が涙液で濡れた長さをmm単位で測定する。通常、点眼麻酔を行わずに実施するため、基礎涙液分泌に加えて、濾紙による刺激で生じる反射性涙液分泌も含まれる。
確認すること
涙腺から供給される水層涙液の分泌低下、すなわち水分欠乏型ドライアイの存在を評価する。SjDでは涙腺の炎症・障害によって涙液分泌が低下するため、客観的検査として用いられる。
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- Schirmer試験が5 mm/5分以下 + ローズベンガル試験のvan Bijsterveldスコアが3点以上の場合に、眼科検査所見が陽性となる。
- 他に1項目陽性で診断可能。
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 少なくとも一眼で「5分間に5 mm以下」で1点が加算される。
- 組み入れ基準を満たした状態で、合計4点以上で分類可能になるため、これに加えて、抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
注意点
- 濾紙自体の刺激によって反射性流涙が生じ、値が高くなることがある。
- 挿入位置、閉眼・開眼、照明、室温、湿度、検査時刻などの影響を受ける。
- 不安、疼痛、点眼薬、薬剤、加齢などによって結果が変動する。
- 再現性が必ずしも高くなく、同じ患者でも測定ごとに異なることがある。
- 軽症例では正常範囲になることがあり、感度は十分ではない。
- 特異度は低く、加齢、薬剤などでも認められる。
ローズベンガル試験
ローズベンガル色素を結膜嚢内に点眼し、角膜・球結膜の染色を細隙灯顕微鏡で観察する。
染色の程度は通常、van Bijsterveldスコア(後述)によって評価する。
過去には死滅・変性した上皮細胞が染色されると考えられていたが、現在では、涙液やムチンによる保護が不十分となり、表面が露出した眼表面上皮が染色されると考えられている。
確認できること
涙液減少やムチン層の機能障害によって生じた角膜・結膜上皮の障害を評価するもののため、Schirmer試験とは異なり、涙液分泌量を直接測定するものではない。
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- Schirmer試験が5 mm/5分以下 + ローズベンガル試験のvan Bijsterveldスコアが3点以上の場合に、眼科検査所見が陽性となる。
- 2016年 ACR/EULAR分類基準
- OSS 5点以上またはBijsterveldスコアが4点以上の場合に、1点が加点される。
- 組み入れ基準を満たした状態で、合計4点以上で分類可能になるため、これに加えて、抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
ディップ先生厚生労働省診断基準のほうが、van Bijsterveldスコアが低いですが、Schirmer試験と併せて必要になっています。
ACR/EULAR分類基準では、Schirmer試験を満たすと別に1点追加できますが、合計4点以上のためには抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須です。
問題点・限界
- 点眼時の刺激痛や灼熱感が比較的強い。
- 色素量、濃度、観察時間、照明条件によって染色所見が変化する。
- 評価に主観が入るので、検者間差が生じる。
- シェーグレン病以外のドライアイ、眼瞼疾患、点眼薬障害などでも陽性になる。
- 現在は刺激性・細胞毒性がより少ないリサミングリーンで代用されることが多い。
フルオレセイン染色
フルオレセインナトリウムを眼表面に点眼し、角膜上皮障害を観察する検査である。
正常な角膜上皮では、上皮細胞間のバリア機能によってフルオレセインが組織内へ入りにくい。一方、上皮細胞の脱落や細胞間バリアの障害がある部位では色素が貯留し、青色光を当てると黄緑色の蛍光として観察される。
シェーグレン病(SjD)では、涙液分泌低下や涙液層の不安定化によって点状表層角膜症が生じるため、乾燥によって生じた角膜障害を客観的に評価する方法として用いられる。
検査方法
フルオレセイン含有試験紙を下眼瞼の結膜嚢内へ接触させるか、フルオレセイン溶液を点眼する。
細隙灯顕微鏡を使用し、コバルトブルーフィルター下で角膜を観察する。黄色のバリアフィルターを併用すると、角膜上の蛍光を確認しやすくなる。
色素の量、濃度、点眼から観察までの時間によって染色所見が変化するため、採用する評価法に従って条件を統一する必要がある。
Ocular Staining Score(OSS)では、角膜染色が時間とともに変化することを考慮し、フルオレセイン点眼後4~8分の間に角膜を評価する。
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- Schirmer試験が5 mm/5分以下 + フルオレセイン試験陽性(角膜に染色あり) の場合に、眼科検査所見が陽性となる。
- 2016年 ACR/EULAR分類基準
- フルオレセイン単独では点数かされず、OSSの角膜成分として評価される(OSSは後述)
- OSSを満たした上で、少なくとも抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
注意点
- 検査方法による結果の差異がある
- SjDに特異的ではない
- 軽度染色は正常眼でも認めることがある
van Bijsterveldスコア
ローズベンガルまたはリサミングリーンによる眼表面染色を数値化する評価法である。
一眼の眼表面を次の3領域に分けて、各領域を染色の程度に応じて0~3点で評価し、合計0~9点で評価する。点数が高いほど角結膜上皮障害が強い。
- 鼻側球結膜
- 角膜
- 耳側球結膜
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- Schirmer試験が5 mm/5分以下 + ローズベンガル試験のvan Bijsterveldスコアが3点以上の場合に、眼科検査所見が陽性となる。
- 2016年 ACR/EULAR分類基準
- Bijsterveldスコアが4点以上の場合に、1点が加点される。
- 組み入れ基準を満たした状態で、合計4点以上で分類可能になるため、これに加えて、抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
注意点
- 染色液、点眼量、観察時刻によって点数が変わわり、検者の主観が入りやすい。
- OSSより簡便である一方、角膜中央部の染色やフィラメントなどを詳細に反映しにくい。
- 境界値付近では再検査によって陽性・陰性が変わることがある。
- ローズベンガルを使用した場合は刺激痛・細胞毒性が問題となる。
- スコア高値はSjDに特異的ではない。
OSS(Ocular Staining Score)
OSSは、Sjögren’s International Collaborative Clinical Alliance(SICCA)が提唱した眼表面染色スコア。
次の染色所見を組み合わせて評価する。
角膜と結膜で使用する染色が指定されています。
- 角膜 ・・・フルオレセイン染色 ・・・ 0-6点
- 角膜では染色の点数(0〜3点)に加え、染色の融合(+1点)、瞳孔領域の染色(+1点)、角膜フィラメントの存在(+1点)について加点する。
- 鼻側・耳側の球結膜 ・・・ リサミングリーン染色 ・・・ 0-3点(鼻・耳で合計最大6点)
一眼につき合計0~12点で計算します。
(OSSでは角膜をフルオレセイン、鼻側・耳側球結膜をリサミングリーンで評価し、ローズベンガルは使用しません)
確認できること
乾燥によって眼表面に生じた角膜・結膜上皮障害」を評価する。
Schirmer試験では「涙液の量」を評価するため、OSSではこの結果を評価しているといえます。
そのため、単なる涙液の減少だけではなく、涙液の質の障害なども反映します。
診断・分類基準での扱い
2016年 ACR/EULAR分類基準では、少なくとも一眼でOSS 5点以上の場合に1点が加点される。
合計4点以上で分類可能になるため、これに加えて、抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
本邦の診断基準には含まれていません。
問題点・限界
- 染色液の量、濃度、点眼後から観察までの時間によって結果が変化する。
- 細隙灯顕微鏡と眼表面染色の評価に習熟した検者が必要で、検者間・検者内の判定差が生じやすい。
- コンタクトレンズ、眼科手術、点眼薬の毒性、感染、アレルギー性疾患などでも高値になり得る。
- van Bijsterveldスコアは古くから使用される簡便な評価方法であるのに対して、OSSは比較的新しく詳細な評価法である
- 角膜
- van Bijsterveldスコア ・・・ローズベンガル染色(リサミングリーンの場合もある)
- OSS ・・・フルオレセイン染色
- 結膜
- van Bijsterveldスコア ・・・ローズベンガル染色(リサミングリーンの場合もある)
- OSS ・・・リサミングリーン染色
- 評価方法
- van Bijsterveldスコア ・・・鼻側の結膜・角膜・耳側の結膜に分ける。
- 角膜・結膜の障害の程度を、それぞれ「0~3点」で分類して、合計9点で評価する。
- 結膜の合計が6点に対し、角膜は3点と結膜の比重が重い。
- OSS ・・・鼻側の結膜・角膜・耳側の結膜に分ける(分け方は同じ)
- 角膜を「0~6点」、結膜を「0〜3点」で分類して、合計12点で評価する。
- 角膜障害については、障害の0−3点だけでなく、瞳孔領域に染色で+1点加算されるなど、より角膜領域について加算が可能です。
- van Bijsterveldスコア ・・・鼻側の結膜・角膜・耳側の結膜に分ける。
ドライマウスの評価方法
サクソンテスト
あらかじめ重量を測定したガーゼを、2分間咀嚼し、終了後の重量と比較することで、唾液分泌量を測定する。
ガムテストと同様だが、2分間で終了する点はいいところ。ただガーゼをかむのは抵抗があるかもしれない。
確認できること
咀嚼刺激に反応して分泌される全唾液分泌量を評価する。
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- 2分間で2 g以下の場合を唾液分泌低下と判定します。
- ガムテスト または サクソンテストの低値 と 唾液腺シンチグラフィーにおける機能低下 が認められることで、1項目陽性になります。
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 記載なし。
問題点・限界
- ガーゼの大きさ、材質、折り方、吸水性によって測定値が変化する。
- 咀嚼力、咀嚼速度、顎関節疾患などの影響を受ける。
- 安静時の口腔乾燥や個々の唾液腺機能は評価できない。
ガムテスト
ガムを10分間咀嚼し、その間に分泌された唾液をすべて容器に吐き出して採取する検査。採取した唾液の容量をmL単位で測定して、口腔の乾燥を評価します。
確認できること
咀嚼刺激に反応して分泌される全唾液分泌量を評価する。
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- 10分間に10 mL以下 を唾液分泌低下とする。
- ガムテスト または サクソンテストの低値 と 唾液腺シンチグラフィーにおける機能低下 が認められることで、1項目陽性になります。
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 記載なし。
問題点・限界
- 咀嚼力、歯の状態、顎関節疾患、水分摂取、食事、薬剤などの影響を受ける。
- ガムの種類、硬さ、香料、味によって分泌量が変化する。
- 咀嚼速度や被検者の努力によって結果が異なる。
- 唾液の飲み込み、容器外への漏れ、採取方法による誤差が生じる。
- 刺激によって残存分泌能が引き出されるため、安静時には口腔乾燥があっても正常値を示すことがある。
- 低下はSjDに特異的ではなく、薬剤、脱水、加齢、放射線治療などでも認められる。



なんと定義上、ガムの味・種類について既定がありません。
梅ガムと無味のガムでは結果は流石に変わりそうですが・・・
無刺激全唾液分泌量(unstimulated whole saliva flow・UWS)
安静座位で口腔内の唾液をいったん嚥下または排出した後、自然に口腔内へ貯留する唾液を、一定時間、容器に垂らすか吐き出してその量を測定します。
15分間採取する方法が古典的だが、5分間採取などの方法があり、一定していないようです。本邦では前述のガムテストの方が多く行われていると思います。
診断・分類基準での扱い
刺激を加えない状態での基礎的な全唾液分泌を評価する。安静時唾液には顎下腺・舌下腺からの分泌が大きく関与する。ガムテストやサクソンテストが刺激による唾液分泌能を評価するのに対し、UWSは安静度の唾液腺分泌機能を反映する。
- 厚生労働省診断基準
- 記載なし
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 0.1 mL/分以下 を異常とし、1点が追加させる。(15分間採取では1.5 mL以下ということ)
- 組み入れ基準を満たした状態で、合計4点以上で分類可能になるため、これに加えて、抗SS-A抗体陽性か、小唾液腺生検陽性が必須。
問題点・限界
- 水分摂取、食事、薬剤(抗コリン薬、抗うつ薬、利尿薬)などの影響を受ける。
- 唾液を嚥下したり、採取容器外へ漏らしたりすると過小評価になる。
- 0.1 mL/分というカットオフは特異度を重視した厳しい値であり、軽症・早期SjDを見逃す可能性がある。
唾液腺造影(sialography)
耳下腺のステノン管、または顎下腺のワルトン管の開口部へ細いカニューレを挿入し、ヨード造影剤を逆行性に注入してX線撮影を行う。
SjDでは、唾液腺腺房や末梢導管の破壊によって、造影剤が点状・球状に貯留する「唾液腺拡張像(sialectasis)」が認められる。
評価方法
一般にRubin–Holt分類に従って評価する。
| Stage | 所見 |
|---|---|
| Stage 0 | 正常 |
| Stage I:punctate | 直径1 mm以下の小点状陰影 |
| Stage II:globular | 直径1~2 mm程度の球状陰影 |
| Stage III:cavitary | 直径2 mmを超える空洞状陰影 |
| Stage IV:destructive | 腺実質の高度破壊と広範な造影剤貯留 |
診断・分類基準での扱い
- 厚生労働省診断基準
- Stage I、すなわち「直径1 mm未満の小点状陰影」以上を異常とする
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 記載なし
問題点・限界
- 導管へのカニューレ挿入が必要な、侵襲的検査であり、疼痛や唾液腺腫脹を生じることがある。
- 唾液腺炎を誘発させたり、ヨード造影剤に対するアレルギー反応の可能性がある。
- 導管開口部を確保できず、実施できない場合がある。
- 早期SjDでは構造変化が乏しく、正常となることがある。
- 慢性唾液腺炎、唾石症、反復性耳下腺炎などでも異常を認めることがあり、SjDに特異的ではない。
- 検査手技と画像判定に熟練が必要である。
近年は、より低侵襲な唾液腺超音波検査やMR sialographyが補助的に用いられます。ただし、これらが厚生労働省基準の「唾液腺造影」を代替できるかは不明です。
唾液腺生検
唾液腺組織を採取し、SjDに特徴的なリンパ球浸潤を病理組織学的に確認する検査。
診断目的では、下口唇の小唾液腺を採取する「口唇小唾液腺生検」が最も一般的である。(最も侵襲が少ないため)
検査方法
下口唇内側を局所麻酔し、小さく切開して、粘膜下に存在する複数の小唾液腺を採取する。採取組織をホルマリン固定し、病理組織標本で評価する。
十分な診断精度を確保するため、おおむね4個以上の小唾液腺(小さい場合は6個)を採取し、合計8 mm²以上の評価可能な腺組織を確保することが推奨されている。
FocusとFocus score
Focusとは、通常50個以上のリンパ球・単核球からなる密な細胞集簇を指す。
このFocusがどの程度存在するかを定量化したものが、Focus scoreで組織面積4 mm²当たりのfocus数として標準化した値。
Focus scoreは次のように計算する。
Focus score =リンパ球focus数÷評価した唾液腺組織面積(mm²)×4
SjDに合致する所見は、比較的正常な腺房組織に隣接してリンパ球が導管周囲などへ集簇する「巣状リンパ球性唾液腺炎(focal lymphocytic sialadenitis)」である。
単なる腺房萎縮、線維化、脂肪置換や非特異的慢性唾液腺炎とは、典型的には所見が異なる。
診断基準上の位置づけ
- 厚生労働省診断基準
- 口唇腺組織でリンパ球浸潤が4 mm²当たり1 focus以上 で生検病理組織検査陽性。
- 2016年ACR/EULAR分類基準
- 口唇小唾液腺に巣状リンパ球性唾液腺炎があり、Focus score 1以上 で3点が追加される。
- 単なるFocus scoreを満たすことだけではなく、巣状リンパ球性唾液腺炎を呈すること、と明記されている。
- 抗SSA/Ro抗体陽性と並んで、最も配点が高い項目です。
問題点・限界
- 局所麻酔と組織採取を要する侵襲的検査である。
- 疼痛、出血、感染、瘢痕を生じる可能性がある。
- 下口唇の知覚神経枝を損傷し、感覚低下が起こることがある(一般的には一過性)
- 病変は唾液腺内で不均一に分布するため、採取部位によるサンプリング誤差がある。
- 加齢、他の自己免疫疾患、慢性唾液腺炎などでもリンパ球浸潤を認め、偽陽性となることがある。
- Focus scoreは診断・分類には有用だが、乾燥症状や全身疾患活動性と必ずしも比例しない。



ほかの生検部位として、涙腺・耳下腺・顎下腺は確かにSjDの診断に有用(ACR/EULAR分類基準には項目なし)ですが、侵襲性が大きいため、IgG4関連疾患やMALTリンパ腫などの鑑別が重要な場合のみ実施することが多いと思います










