シェーグレン病(SjD)の歩き方

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この記事は医療者向けです。
シェーグレン病(Sjögren Disease/SjD/旧:シェーグレン症候群)についてまとめたページです。

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ディップ先生

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シェーグレン病とは

シェーグレン病(Sjögren’s disease、SjD)は、涙腺・唾液腺に代表される外分泌腺への慢性的なリンパ球浸潤による乾燥症状(sicca症状)を代表的な症候とする自己免疫疾患です。
全身臓器が障害され、間質性肺炎、腎尿細管性アシドーシス、末梢神経障害、血管炎などの腺外病変(extraglandular manifestations)を伴うことがあります。
悪性リンパ腫の発症リスクが高いことも知られます。

以前はシェーグレン症候群でしたが、2023年に専門家79名+患者1,431名によるデルファイ法によって、シェーグレン病という名称に変更されました。
詳細については以下の記事を参考にしてください。

診断基準・分類基準

厚生労働省・シェーグレン症候群 診断基準

以下のページを参考にしてください。

依然として、名称は「シェーグレン症候群」です。
現在使用されている以下の分類基準よりさらに古い基準です。

2016年ACR/EULAR分類基準

現在最も広く使用されている国際分類基準です。

2012年にSICCA研究グループとEULAR Sjögren’s Task ForceがInternational Sjögren’s Syndrome Criteria Working Groupを結成し、2002年AECG基準と2012年ACR基準を統合・改良して作成されました。

  • 組み入れ条件(Inclusion Criteria)
    • 次のいずれかを満たす患者に分類基準を適用する。
    • A.眼または口腔乾燥症状が1つ以上ある
      • 3か月以上、毎日持続する、わずらわしい眼の乾燥
      • 眼に砂または砂利が入ったような反復する異物感
      • 1日3回を超える人工涙液の使用
      • 3か月以上、毎日持続する、口腔乾燥
      • 乾いた食物を飲み込むために頻回に飲水する
    • B.ESSDAIの少なくとも1領域に陽性所見があり、シェーグレン症候群が疑われる
  • 除外項目
    • 以下がある場合は原則として適用しない。
      • 頭頸部放射線治療歴
      • 活動性C型肝炎(PCR陽性)
      • AIDS
      • サルコイドーシス
      • アミロイドーシス
      • 移植片対宿主病(GVHD)
      • IgG4関連疾患
  • 点数項目
    • 3・・・ 口唇小唾液腺生検:巣状リンパ球性唾液腺炎かつfocus score 1以上/4 mm²
    • 3・・・ 抗SS-A/Ro抗体陽性
    • 1・・・ Ocular Staining Score(OSS) 5以上、またはvan Bijsterveldスコア4以上(少なくとも片眼)
    • 1・・・ Schirmer試験5 mm/5分以下(少なくとも片眼)
    • 1・・・ 無刺激全唾液分泌量0.1 mL/分以下
  • 組み入れ条件を満たし、除外項目がなく、合計4点以上の場合に一次性シェーグレン症候群に分類する。
ディップ先生

本邦では抗SS-B抗体陽性が入っていましたが、こちらは入っていません。(抗SS-B抗体陽性はSjDの診断において意義が乏しいと考えられている)
ESSDAIで陽性所見があればよいので、Sicca症状は必須ではありません。(他覚的なSicca所見も必須ではない。)
実質的に、口唇小唾液腺生検陽性 or 抗SS-A抗体陽性が必須です。

2012年ACR分類基準

NIHのSICCA(Sjögren’s International Collaborative Clinical Alliance)コホートを基に作成され、ACRが暫定承認した分類基準。
現在はこれを改訂した2016年ACR/EULAR分類基準がより広く使用されています。

項目陽性基準
1.血清学的所見抗SS-A/Ro抗体または抗SS-B/La抗体陽性、あるいは
RF陽性+ANA 1:320 以上
2.口唇小唾液腺生検巣状リンパ球性唾液腺炎 + focus score 1以上/4 mm²
3.眼表面障害Ocular Staining Score(OSS)3以上

除外項目は、頭頸部放射線治療歴、C型肝炎、AIDS、サルコイドーシス、アミロイドーシス、GVHD、IgG4関連疾患。

除外項目がなく、合計2項目以上を満たす場合に一次性シェーグレン症候群に分類する。

ディップ先生

非常にシンプルな、客観的所見のみで構成されています。
抗SS-B/La単独陽性や「RF陽性かつ高力価ANA」も血清学的項目として認められており、その点が大きく異なります。

臓器障害

腺症状(Sicca症状)

シェーグレン病の中心となる臓器障害です。
現在の厚生労働省では、腺症状(目の乾燥・口腔の乾燥)なしでは、シェーグレン病と診断することはできません。2016年ACR/EULAR分類基準では、線外症状があれば分類可能で、腺症状は必須ではなくなりました。

眼症状

  • 病態
    • 涙腺の破壊による涙液分泌減少と、涙液油層の伸展障害による涙液蒸発亢進を合併したドライアイが主病態。
    • すなわち、単なる涙液水層減少だけではなく、蒸発亢進型を合併し得る混合型ドライアイと考えられている。
    • 涙腺の組織破壊だけでなく、腺上皮の分泌機能障害、眼表面の炎症、杯細胞減少、角膜神経障害などが相互に関与する。
  • 症状
    • 眼の異物感(砂が入ったような)羞明、霧視、眼精疲労など。
    • 重症例では糸状角膜炎、角膜潰瘍・感染、角膜穿孔を生じる。

口腔症状

  • 病態
    • 唾液腺上皮を標的とするリンパ球浸潤、腺房細胞の機能障害・減少などにより、唾液分泌量と唾液組成が変化する。
    • 「唾液腺の破壊」のみでは説明できない分泌機能障害が存在するとされる。
  • 乾燥症状
    • 乾燥した食品の嚥下困難、頻回の飲水、味覚異常、口腔灼熱感など。
  • 炎症による症状
    • 耳下腺(>顎下腺・舌下腺)を中心とした唾液腺の反復性・持続性腫脹。
    • 急速な有痛性腫脹、発赤、発熱、排膿を伴う場合は、細菌性唾液腺炎、唾石・導管閉塞などを考慮する。
    • 持続性、片側性、硬い腫脹、限局性腫瘤、リンパ節腫脹を認める場合は、MALTリンパ腫などの除外が必要である。
ディップ先生

唾石が複数耳下腺に形成されることがあり、それによって唾液腺内に複数の嚢胞を形成することがあります。
嚢胞が感染すると反復性に感染を繰り返すこともあります。

  • 乾燥に伴う影響
    • 唾液による口腔粘膜の洗浄、抗菌作用が低下し、Candida属が増殖しやすくなる。
    • SjDに伴う口腔カンジダ症では、白苔を形成する偽膜性カンジダ症だけでなく、紅斑性・萎縮性カンジダ症や口角炎として発症することが多い。
    • 所見として、口腔粘膜や舌背のびまん性発赤、舌乳頭萎縮、灼熱感、口角炎などを認める。
  • 齲歯
    • 唾液分泌低下により、洗浄作用、酸の緩衝作用、抗菌作用が低下し、齲蝕リスクが上昇する。
    • 歯頸部、歯根面、切端部などに多発する非典型的な齲蝕を認めることがある。
    • 齲蝕の急速な増加や反復は、唾液腺機能低下を示唆する重要な臨床所見。
      • 私はSicca症状を聴取する際に、最近の虫歯の増加についても問診するようにしています。
  • 気道病変
    • 気道乾燥や粘液線毛クリアランスの低下により、乾性咳嗽、粘稠な気道分泌物、喀痰排出困難を生じ得る。
    • 分泌物の排出障害は、無気肺、反復性気管支炎・肺炎、気管支拡張症の一因となる。
    • 他にも、間質性肺疾患、気管支・細気管支粘膜へのリンパ球浸潤、濾胞性細気管支炎、気管支拡張症などの直接的な免疫炎症性病変も認められる。
    • 慢性咳嗽については、SjDによる気道乾燥だけでなく、喘息、胃食道逆流症、後鼻漏症候群、薬剤性(ACE阻害薬など)、間質性肺疾患などの鑑別が重要。
  • ほかの外分泌腺
    • 胃病変
      • 内視鏡・組織学的検討では、慢性萎縮性胃炎、胃粘膜へのリンパ球浸潤、低酸症・無酸症、低ペプシノゲン血症、高ガストリン血症などが報告されている。
      • Helicobacter pylori感染、薬剤性胃炎、一般的な自己免疫性胃炎などとの鑑別が必要である。
      • 報告される頻度には研究間で大きな差があり、解釈には内視鏡検査を受けた症候性患者を対象とした選択バイアスに注意が必要。
    • 膵病変
      • SjDにおいて膵外分泌機能低下、膵酵素異常、慢性膵炎様の画像変化などが報告されている。
      • 文献上、臨床的な膵炎または膵外分泌不全はおおむね0~7%とされる一方、小規模研究では無症候性の機能・画像異常がより高頻度に報告されている。
      • 自己免疫性膵炎(IgG4関連疾患に伴う1型が大半)は、時にSjDと類似した涙腺・唾液腺病変を呈するため、鑑別が必要になることがある。
      • また自己免疫性膵炎そのものは膵癌との鑑別が非常に重要。

末梢神経障害

シェーグレン病に生じる末梢神経障害の名称方法については、膠原病リウマチ内科と神経内科、また論文ごとに異なる用語を用いてきた歴史があり、混乱の元となっていました。
そのため、膠原病リウマチ内科と神経内科合同で、用語の整理が行われました。
これがすべての共通言語ではありませんが、実臨床でも使用しやすく、意義のあるものと思います。

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ディップ先生

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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