シェーグレン病/シェーグレン症候群は指定難病に指定されています。
指定難病とは、難病の中でも、医療費助成を受けられる病気のことです。
しかしシェーグレン病の方が全員医療費助成を受けられるわけではなく、むしろ難病を申請するメリットがない方もいらっしゃいます。
ここではシェーグレン病で難病申請が勧められる方は?、どのように診断されるのか?、最近の指定難病の動向について解説します。
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病名の変更について
かつてはシェーグレン症候群(Sjögren症候群・SjS)と呼ばれていましたが、近年シェーグレン病(Sjögren disease・SjD)と呼ばれるようになってきました。
ただ、難病の書類上は、令和9年以降も「シェーグレン症候群」のままの予定になっています。
難病の病名の変更は毎回ちょっと遅いような気がします。

ここは指定難病の話なので、正確にはシェーグレン症候群と書く方が正しいかもしれませんが、国際的な潮流に倣ってシェーグレン病に統一して記載します。
シェーグレン病で難病を申請した方がよい人
シェーグレン病は指定難病ですが、必ずしも患者さん全員が難病を申請した方がいいわけではありません。
難病を申請するメリットは主に医療費の助成を受けられるということです。
そして医療費助成を受けるためには、診断されるだけでなく、重症度分類を満たす必要があります。
さらに、医療費助成は、月の医療費が一定の額を超えると、超えた分が免除されます。
シェーグレン病は、重症度基準を満たす患者さんが少ないと考えられます。
そして高額な医療を継続して必要とする方も、重症度を満たしていないのであれば多くありません。
以上の理由から、シェーグレン病の患者さんにとって、難病を申請することは、必ずしもメリットとはいえません。
シェーグレン病の診断基準・重症度分類
厚生労働省が提示している、診断基準・重症度分類をそのまま提示します。
シェーグレン病の診断基準
(厚生労働省研究班、1999 年)
- 生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
- A)口唇腺組織でリンパ球浸潤が 1/4m ㎡当たり 1focus 以上
- B)涙腺組織でリンパ球浸潤が 1/4m ㎡当たり 1focus 以上
- 口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
- A)唾液腺造影で stage I(直径 1mm 以下の小点状陰影)以上の異常所見
- B)唾液分泌量低下(ガムテスト 10 分間で 10mL 以下,またはサクソンテスト 2 分間 2g 以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見
- 眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
- A)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつローズベンガルテスト(van Bijsterveld スコア)で陽性
- B)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつ蛍光色素(フルオレセイン)試験で陽性
- 血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
- A)抗 SS-A 抗体陽性
- B)抗 SS-B 抗体陽性
診断
以上1、2、3、4のいずれか2項目が陽性であればシェーグレン症候群と診断する。
ディップ先生これは1999年に作られた日本独自の基準です。
すべて客観的指標で作られており、患者さんの症状の有無は診断上は使われません。
国際的な分類基準は2016年のACR/EULAR 分類基準などがあります。
分類基準と診断基準は、その意味や背景が大きく異なります(詳しく知りたい方は下のサイトを参照ください)
https://note.com/rheumtomoni/n/n13d6c2e17671
シェーグレン病の重症度分類
ESSDAI(EULAR Sjögren’s Syndrome Disease Activity Index)による重症度分類
重症(5点以上)を対象とする。


【計算方法】
係数 × 活動性 = 臓器の点数 として、各臓器の点数の合計を疾患活動性とする。
そのため、中枢神経障害は低でもみたすが、生物学的所見は中だけでは重症にはならない。
- 健康状態【係数3】
- 0:以下の症状がない
- 1:微熱、間欠熱(37.5〜38.5℃)、盗汗、あるいは5〜10%の体重減少
- 2:高熱(>38.5℃)、盗汗、あるいは>10%の体重減少(感染症由来の発熱や自発的な減量を除く)
- リンパ節腫脹【係数4】
- 0:以下の症状がない
- 1:リンパ節腫脹:領域不問≧1cm または鼡径≧2cm
- 2:リンパ節腫脹:領域不問≧2cm または鼡径≧3cm、あるいは脾腫(触診、画像のいずれか)
- 3:現在の悪性B細胞増殖性疾患
- 腺症状【係数2】
- 0:腺腫脹なし
- 1:耳下腺腫脹(≦3cm)、あるいは限局した顎下腺または涙腺の腫脹
- 2:耳下腺腫脹(>3cm)、あるいは目立った顎下腺または涙腺の腫脹(結石、感染を除く)
- 関節症状【係数2】
- 0:現在、活動性の関節症状なし
- 1:朝のこわばり(>30分)を伴う手指、手首、足首、足根、足趾の関節痛
- 2:28関節のうち1〜5個の関節滑膜炎
- 3:28関節のうち6個以上の関節滑膜炎(変形性関節症を除く)
- 皮膚症状【係数3】
- 0:現在、活動性の皮膚症状なし
- 1:多型紅斑
- 2:蕁麻疹様血管炎、足首以遠の紫斑、あるいはSCLEを含む限局した皮膚血管炎
- 3:蕁麻疹様血管炎、広範囲の紫斑、あるいは血管炎関連潰瘍を含むびまん性皮膚血管炎(不可逆的障害による安定した長期の症状は活動性なしとする)
- 正確には多形紅斑ですが、原文ママです。
- 肺病変【係数5】
- 0:現在、活動性の肺病変なし
- 1:以下の2項目のいずれかを満たす持続する咳や気管支病変で、X線で異常を認めないX線あるいはHRCTで間質性肺病変を認め、息切れがなくて呼吸機能検査が正常
- 2:中等度の活動性肺病変で、HRCTで間質性肺病変があり、以下の2項目のいずれかを満たす労作時息切れあり(NYHA II)呼吸機能検査以上(70%>DLCO≧40%、あるいは80%>FVC≧60%)
- 3:高度の活動性肺病変で、HRCTで間質性肺病変があり、≧の2項目のいずれかを満たす安静時息切れあり(NYHA III、IV)呼吸機能検査以上(DLCO<40%、あるいはFVC<60%)(不可逆的障害による安定した長期の症状や疾患に無関係の呼吸器障害(喫煙など)は活動性なしとする)
- 「呼吸機能検査以上」「≧」となっているのは誤字ですが、原文ママです。
- 腎病変【係数5】
- 0:現在、活動性腎病変なし(蛋白尿<0.5g/dL、血尿なし、膿尿なし、かつアシドーシスなし)あるいは不可逆的な障害による安定した持続性蛋白尿
- 1:以下に示すような腎不全のない軽度の活動性腎病変(GFR≧60mL/分)尿細管アシドーシス糸球体病変で蛋白尿(0.5〜1g/日)を伴い、かつ血尿がない
- 2:以下に示すような中等度活動性腎病変腎不全(GFR<60mL/分)を伴う尿細管性アシドーシス糸球体病変で蛋白尿(1〜1.5g/日)を伴い、かつ血尿や腎不全がない組織学的に膜性腎症以外の糸球体腎炎、あるいは間質の目立ったリンパ球浸潤を認める
- 3:以下に示すような高活動性腎病変糸球体病変で蛋白尿(>1.5g/日)を伴う、あるいは血尿、あるいは腎不全を認める組織学的に増殖性糸球体腎炎あるいは、クリオグロブリン関連腎病変を認める(不可逆的障害による安定した長期の症状または疾患に無関係の腎病変は活動性なしとする、腎生検が施行済みなら、組織学的所見を優先した活動性評価をすること)
- 筋症状【係数6】
- 0:現在、活動性の筋症状なし
- 1:筋電図や筋生検で異常がある軽い筋炎で、以下の2項目の両方を満たす脱力はないCKは基準値(N)の2倍以下(N<CK≦2N)
- 2:筋電図や筋生検で異常がある中等度活動性筋炎で、以下の2項目をいずれかを満たす脱力(MMT≧4)CK上昇を伴う(2N<CK≦4N)
- 3:筋電図や筋生検で異常を認める高度活動性筋炎で、以下の2項目のいずれかを満たす脱力(MMT≦3)CK上昇を伴う(CK>4N)(ステロイドによる筋脱力を除く)
- 2項目「を」は誤字ですが、原文ママです。
- 末梢神経障害【係数5】
- 0:現在、活動性の末梢神経障害なし
- 1:以下に示すような軽度活動性末梢神経障害神経伝導速度検査(NCS)で証明された純粋感覚性軸索多発ニューロパチー、三叉神経痛
- 2:以下に示すような中等度活動性末梢神経障害NCSで証明された運動障害を伴わない軸索性感覚運動ニューロパチー、クリオグロブリン性血管炎を伴う純粋感覚ニューロパチー、軽度か中等度の運動失調のみを伴う神経節炎、軽度の機能障害(運動障害がないか軽度の運動失調がある)を伴ったCIDP、末梢神経由来の脳神経障害(三叉神経痛を除く)
- 3:以下に示すような高度活動性末梢神経障害最大運動障害≦3/5を伴う軸索性感覚運動ニューロパチー、血管炎による末梢神経障害(多発単神経炎など)、神経節炎による重度の運動失調、重度の機能障害(最大運動障害≦3/5、あるいは重度の運動失調)を伴ったCIDP(不可逆的障害による安定した長期の症状または疾患に無関係の末梢神経障害は活動性なしとする)
- 中枢神経障害【係数5】
- 0:現在、活動性の中枢神経障害なし
- 1:以下に示すような中等度の活動性中枢神経障害中枢由来の脳神経障害、視神経炎、純粋感覚障害か知的障害の証明に限られた症状を伴う多発硬化症様症候群
- 3:以下に示すような高度活動性中枢神経障害脳血管障害を伴う脳血管炎または一過性脳虚血発作、けいれん、横断性脊髄炎、リンパ球性髄膜炎、運動障害を伴う多発性硬化症様症候群(不可逆的障害による安定した長期の症状または疾患に無関係の中枢神経障害は活動性なしとする)
- 血液障害【係数2】
- 0:自己免疫性血球減少なし
- 1:自己免疫性血球減少で以下の3項目のいずれかを満たす好中球減少(1000<好中球<1500/mm³)を伴う貧血(10<Hb<12g/dL)を伴う血小板減少(10万<血小板<15万)を伴うあるいはリンパ球減少(500<リンパ球<1000/mm³)を認める
- 2:自己免疫性血球減少で以下の3項目のいずれかを満たす好中球減少(500≦好中球≦1000/mm³)を伴う貧血(8≦Hb≦10g/dL)を伴う血小板減少(5万≦血小板≦10万)を伴うあるいはリンパ球減少(リンパ球≦500/mm³)を認める
- 3:自己免疫性血球減少で以下の3項目のいずれかを満たす好中球減少(好中球<500)を伴う貧血(Hb<8g/dL)を伴う血小板減少(血小板<5万)を伴う(貧血、好中球減少、血小板減少については自己免疫性血球減少のみ考慮すること、ビタミン欠乏、鉄欠乏、薬剤誘発性血球減少を除く)
- 生物学的所見【係数1】
- 0:下記の生物学的所見なし
- 1:以下の3項目のいずれかを認めるクローン成分低補体(低C4または低C3または低いCH50)高γグロブリン血症、高IgG血症(1600≦IgG≦2000mg/dl)
- 2:以下の3項目のいずれかを認めるクリオグロブリンの存在高γグロブリン血症、高IgG血症(IgG≧2000mg/dl)最近出現した低γグロブリン血症、低IgG血症(IgG<500mg/dL)



このESSDAIは、EULAR主導の国際共同研究に39名のシェーグレン病の専門家が参加して決定されました。
様々な症例ごとに「疾患活動性」の点数をつけて、実際にどの臓器が疾患活動性に影響するかで点数を決めました。
Seror R, et al. Ann Rheum Dis. 2010;69(6):1103-9
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
- 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る) 。
- 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
- なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。
留意事項の3つめは、軽症高額該当と呼ばれています。基本的にはすべての指定難病について、同様の記述があります。
具体的には、認定基準に該当しない場合(つまり軽症など)でも、申請月以前の12か月以内に医療費総額(10割)が33,330円を超える月が3回以上あれば支給認定が行われます。この「医療費総額」は窓口負担額ではなく保険者負担を含む10割の金額で、3割負担なら窓口約1万円に相当します。
指定難病の変更(2027年度)
令和9年(2027年度)4月から、シェーグレン病の指定難病の診断基準・重症度分類が一部変更になります。
結論からいうと、現在指定難病になっている方、今後提出する方にも影響のない軽微な変更でした
診断基準の変更点
軽微な表記方法が変更されてはいますが、内容自体は変わりません。
全体に、表記をより明確にする変更がなされました。
国際的にはACR/EULAR 2016分類基準がより新しくありますが、1999年の診断基準を踏襲しています。
- Definiteという文言の追加
- 旧:2項目が陽性であればシェーグレン症候群と診断する
- 新:Definite:以上1、2、3、4のいずれか2項目が陽性である。Definite を対象とする。
- 口唇生検・涙腺生検の表現の修正
- 旧:口唇腺/涙腺組織でリンパ球浸潤が「1/4m ㎡当たり1focus 以上」
- 新:4mm²当たり1focus 以上
- 唾液腺造影
- 旧:stage I(直径 1mm 以下の小点状陰影)以上
- 新:stage I(直径 1mm 未満の小点状陰影)以上
- ローズベンガルテスト
- 旧:Schirmer 5mm/5min 以下 かつ van Bijsterveld スコアで「陽性」
- 新:シルマー試験 5mm/5min 以下 かつ van Bijsterveld スコア3以上
- 蛍光色素試験
- 旧:フルオレセイン試験で「陽性」
- 新:フルオレセイン試験で陽性(角膜に染色あり)
重症度分類の変更点
重症度には、ESSDAI(EULAR Sjögren’s syndrome disease activity index)を使用していました。
これは同じですが、一部だけ表記が変更されています。


計算方法についてですが、例えば健康状態が「低」ならば
健康状態の重み(係数)3 × 活動性低 1 = 3点 と計算します。
これらの合計が5点以上なら、中・高疾患活動性として、医療費助成を受ける対象になります。
変更点としては、中枢神経障害の「低」1 → 「中」2 になりました。
定義は、わずかに表現が変わっているものの、基本的には同様です。
ただ、低であったとしても、中枢神経の係数が5なので、5×1=5点となり、中・高疾患活動性になるため、医療費の関係では変化はありません。
2026/08/03 記載を修正しました。











