TNFα阻害薬とは(エタネルセプト・シンポニーなど)

「膠原病」といわれたら

この記事は患者さん向けです。

TNFα阻害薬(ティーエヌエフ・アルファ・阻害薬)は関節リウマチの治療薬の一つです。

注射の薬ではありますが、非常に強力で、速やかな効果が期待できます。

関節リウマチについては、こちらのページを参照ください。

関節リウマチ治療の流れ

関節リウマチに対する治療は、免疫抑制薬を中心に用います。つまり、異常になった免疫を抑え、関節の痛み・腫れを鎮め、破壊を進めないようにすることが目標です。

関節リウマチで最も重要な薬剤である、メトトレキサートを中心として、効果が不充分であれば様々な薬を足したり、変更する、という方針で進めていきます。

  • まずメトトレキサートを使用できる場合には、メトトレキサートを使用する
  • メトトレキサートが使用できない場合には、他の昔からの内服薬を使用する
  • メトトレキサートでよくならない場合は、新しい注射(生物学的製剤)・新しい内服の薬(JAK阻害薬)のいずれかを使用する
  • 新しい薬を使用しても良くならない場合には、違い種類の新しい薬に変更する
  • ステロイドの使用は最小限にする(使用しないほうがよい)

メトトレキサートやほかの内服の治療を初めても、目標が達成できない場合、つまり痛みや腫れ、朝のこわばりが残っている場合、採血や超音波の検査で炎症がいまだ残っている場合、主治医の判断で治療を追加することが必要な場合には、追加の治療を検討することが必要です。

この追加の治療の一つとして、TNFα阻害薬があります。

「TNFα阻害薬」とは?

TNFαとは、体の免疫機能をやりとりしている「サイトカイン」の一つです。

大まかにいえば、TNFαは「炎症」を引き起こすサイトカインであり、関節リウマチ患者さんにおいては関節炎・関節の破壊などに関係していると考えられています。

よって、TNFαをさまざまな方法で阻害する(数を減らす、伝わらないようにする)ことで、関節リウマチの病気を抑えることができます。

このような「サイトカイン」は、細胞表面にある「受容体」に結合して、細胞の中に情報を伝えます。(手紙で例えると、郵便局の人が直接渡すために家の中に上がってくることはせず、家のポストに入れると思いますが、家のポストが受容体です。)

TNFα阻害薬の特徴

TNFα阻害薬に様々な種類がありますが、すべて注射で、その効果はほぼ同じといわれています。(近年患者さんによって違いがあるというデータも出てきていますが、大きくは変わりません。)

注射の方法は3通りあります。

  • 静脈注射(一般的な「点滴」に相当する、病院で投与する必要がある、ある程度時間がかかる)
  • 皮下注射(一般的な「予防接種」に相当する、家で投与できる、1回10秒前後)
    • オートインジェクター:患者さん本人で皮下注射ができる装置。皮膚に当てて押すだけで注射ができる。
    • シリンジ:一般的な注射の形をしている。病院で皮下注射する場合はこちらをつかう。

TNFα阻害薬の場合、大半が皮下注射であり、オートインジェクターを使って患者さん自身に家で投与していただくことが多いです。以下のペンのようなみためをしているものが、オートインジェクターです。

日本リウマチ財団 生物学的製剤(点滴・注射)より

TNFα阻害薬の種類

TNFα阻害薬には、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。

それぞれの投与の仕方、間隔、値段の目安をしめしたのが、以下の図です。

それぞれの種類についてまとめていきます。

以下の記載は発売日順であり、使用される順ではありませんのでご注意ください。

  • インフリキシマブ(レミケード®)
  • エタネルセプト(エンブレル®)
  • アダリムマブ(ヒュミラ®)
  • ゴリムマブ(シンポニー®)
  • セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)
  • オゾラリズマブ(ナノゾラ®)

インフリキシマブ(レミケード®)

エタネルセプト(エンブレル®)

アダリムマブ(ヒュミラ®)

ゴリムマブ(シンポニー®)

セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)

オゾラリズマブ(ナノゾラ®)

TNFα阻害薬の利点

メトトレキサートなどの、古くから使われている薬剤に比べて、効果が高いことが多く、かつ効果がでるのが早いと言われています。

  • (古くから使われている薬剤に比べて)効果が出るのが早い
    • 人によっては、投与した翌日から関節の痛みがよくなることもある。
    • 1〜2週間で効果が出ることが多い
  • 効果が強い
    • TNFα阻害薬が使えるようになったことで、関節リウマチの治療は大きく進展したといわれる
  • 一部の薬には「バイオシミラー」があり、他の生物学的製剤より値段が安い

ではなぜ最初からTNFαをすべての患者さんに使用しないのでしょうか。それは一定数の患者さんはメトトレキサートのみで全く症状がない状態まで改善することができるからです。TNFα阻害薬などの新しい薬は値段が高く、まずはそれらを使わずに治療しようという方針になっています。

しかし、例えば関節リウマチの程度が非常に悪い方や、メトトレキサートを使用できず、古くから使われている薬剤で治療することが難しいと考えられる場合には、早めからTNFα阻害薬などを使用することもあります。最終的には主治医の判断が重要です。

TNFα阻害薬の欠点

効果が強力で、かつ早いTNFα阻害薬ですが、以下のような欠点もあります。

  • 注射でしか使えない
    • 冷所で保存が必要。
    • 手に痛みが強いと使えない場合がある
  • 値段が高い(最近はより安い薬剤がでてきている)
  • 免疫を抑える力が強いため、感染症の副作用が多い
  • 頻度は高くはないが、さまざまな副作用が報告されている

Q&A

使用開始前の疑問

私に向いている?他に選択肢はない?

どれくらいで効果がある?どれくらいで効果を判断する?

自分でも打てるか不安

注射はどれくらい痛い?

お金はいくらぐらいかかる?

外来でどうやってもらうの?

治療全般に関する疑問

日常生活で気をつけた方がいいことは?

食事で気をつけるべきことは?

いつまで使用するの?

すでに飲んでいるほかの薬と相性は大丈夫?

打つ時間は決めた方がいい?

体調が悪い、熱が出たが注射はしたほうがいい?

ワクチンは打っていい?

自己注射キットの使い方の疑問

注射のやり方を知りたい

保存の仕方を知りたい

飛行機に持ち込める?海外旅行のときは?

どこに注射したらいい?

注射器はどこに捨てたらいい?

針が怖い・・・痛みを減らすには

お酒を飲んでも大丈夫?

出血しやすいが打っても大丈夫?

注射した後にお風呂やサウナに入っても大丈夫?

注射器本体の管理の疑問

冷凍してしまった!大丈夫?

室温で放置してしまった!大丈夫?

落としてしまった!強く振ってしまった!

注射器がなくなってしまった

間違えて違うタイミングで使ってしまった、投与し忘れた

ペンが故障してしまった!

注射器を打つときのトラブル

カバーを外したら薬液が漏れた

注射を空打ちしてしまった

薬剤が入りきらなかった

斜めに打ってしまった

打った部位が赤い・痛い・かゆい

打った部分は揉まない方がいい?

打ったところが出血してしまった

ほか

内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が予定されているが大丈夫?

手術を控えているが大丈夫?

2025/08/26 Q&Aを追加しました

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