ビスホスホネート(アレンドロン酸®リセドロン酸®ゾレドロン酸®)の関節痛について

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骨粗鬆症治療薬は複数ありますが、いずれも「関節痛」の副作用が問題になることがあります。
ここではビスホスホネート製剤による関節症状をまとめます。

・ビスホスホネート製剤による筋骨格系の疼痛(関節痛・筋痛・骨痛含む)は、(特に静注でのエビデンスが多いが)大半が急性期反応で、初回・12時間〜72時間程度で発症する。
 ・これが重症化すると関節炎・全身症状を併発することもある(稀)
 ・2回目以降は生じないことが大半。

・前述の急性期反応とは異なり、投与後しばらくして筋骨格系の疼痛が生じる報告もある。

・静注のビスホスホネート製剤の方が、急性期反応が多いと考えられる。
・経口のビスホスホネート製剤ごとの、本副作用の頻度の違いは不明だが大きな違いは報告上はない。

Arch Intern Med. 2005;165(3):346-7.

ビスホスホネート製剤と重度の筋骨格痛との関連を提起した初期の報告。
FDAからの報告で、1995〜2002年にアレンドロン酸・リセドロン酸に関連した重度の骨・筋・関節痛(アレンドロン酸118例、ほかリセドロン酸)の症例集積を報告したもの。
疼痛発現までの期間は中央値14日。詳細情報のある83例では、アレンドロン酸中止により55例(66%)で疼痛が消失し、一部は即時、大半は緩徐な改善。
これらの疼痛を薬剤と関連付けて報告することはおそらく少ないため、過小評価になっている可能性が指摘されている。
本論文では、急性期とそれ以降の症例を区別はしていない。

Rev Osteoporos Metab Miner. 2025;17(1):1-7

スペイン医薬品庁のデータベース(総475,235報告、2023年10月末時点)を用いた研究で、アレンドロン酸・イバンドロン酸・リセドロン酸の3剤について、大分類「筋骨格系・結合組織障害」と9つの症状(筋痛、関節痛、骨痛、錯感覚、筋骨格痛、筋骨格硬直、関節炎、筋力低下、四肢痛)を、他の薬剤と比較して解析。
他の薬剤と比較したときのRORは、骨痛(リセドロン酸35.1、アレンドロン酸32.4、イバンドロン酸13.9)、筋骨格硬直(イバンドロン酸15.6、リセドロン酸4.6)、関節炎(リセドロン酸14.7、イバンドロン酸6.8、アレンドロン酸4.1)。(RORとは、Reporting Odds Ratio(報告オッズ比)のことで、30だと30倍起きやすいという意味ではない。正確にはリセドロン酸が被疑薬として挙がっている報告の中で、骨痛が占める割合(オッズ)は、データベース内の他のすべての医薬品の報告と比べて約35倍高いという意味。そもそも骨粗鬆症患者には筋骨格症状が生じやすいので、その点は加味できていない。)

JCEM Case Rep. 2024;2(11):luae199.

ゾレドロン酸静注後に両膝「関節炎」を呈した症例報告で、投与24時間以内に出たインフルエンザ様症状にプレドニゾロンを3日間使用し、その中止から48時間以内(=投与から約5日後)に両膝症状が出現した。
同様にゾレドロン酸静注後に関節炎を呈した報告が4例記載。その4例は投与後12時間〜48時間程度に生じており、初回投与だった。一部は発熱、悪寒、全身筋痛、CRP上昇を伴った。しかしいずれも関節液は非炎症性で、既存のOA合併例だった。

J Musculoskelet Neuronal Interact. 2007;7(2):144-8.

ドイツの単施設の骨粗鬆症外来で経口アレンドロン酸・リセドロン酸を投与された連続612例を追跡。
初回BP投与後48時間以内に始まり、他に明らかな原因のないイベントのみを拾った。
アレンドロン酸 70mg週1回で27/134=20.1%、リセドロン酸 35mg週1回で7/28=25.0%(両群間に有意差なし)
重度の筋骨格系有害事象(MAE)の全体頻度は34例(5.6%)だが、すべてが週1回製剤で治療を開始した患者に発生。重大なMAEを起こした34例中27例(79.4%)が「連日投与を14日間→その後に週1回へ戻す」方法で再投与し、重大なMAEの再燃は生じなかった。
アレンドロン酸 10mg/日またはリセドロン酸 5mg/日で約2週間開始してから、より利便性の高い週1回レジメンに切り替えれば、この現象は回避できるとしている。

J Postgrad Med. 2016;62(2):126-8.

57歳の閉経後女性。内分泌科での定期検査でDEXAにより骨粗鬆症と判明し、アレンドロン酸70mg/週を開始された。投与2日目に右手関節の疼痛と腫脹が出現、7日目まで持続した。8日目に2回目を内服してから右肩痛が出現。11日目に多関節炎、CRP 5 mg/dL。3回目の内服後に右膝関節主張が出現、関節内の滑膜肥厚も出現したため、内服を中止したところ、中止から3〜4日で関節症状が消失した。
繰り返している点などが典型的な急性期反応とは異なる経過だが、急性期反応を繰り返しているだけかもしれない。

↓関節痛ではないですが、手根管症候群との関連を論じた論文

PLoS One. 2016;11(1):e0146772

英国のプライマリケア電子カルテデータベースを用い、51歳以上の女性59,475例(うち経口ビスホスホネート処方例19,825例、曝露コホート51,245人年)を対象に、手根管症候群の発症までの時間をCox比例ハザードモデルで解析したコホート研究。非曝露例は年齢と病院でマッチさせ、曝露例1例に対して2例を割り当てた。既往に手根管症候群のある例は除外。
手根管症候群は全体で572例に生じ、曝露群242例(1.2%)、非曝露群330例(0.8%)。調整ハザード比 1.38(95%CI 1.15-1.64)と有意な関連を認めた。処方回数(1-4回、5-16回、17回以上)による差はなく、
手根管症候群は滑膜炎による手根管内圧上昇で生じうるため、ビスホスホネートによる滑膜炎の間接的な指標とみなせる。各種ビスホスホネートの骨内半減期は10年を超えることがあり、1度骨に入ると骨代謝で骨が破壊されるときにのみ放出され、長期間にわたって炎症が惹起されうるため、処方回数に影響されなかった可能性が示唆されている。
静注製剤は対象外で、また服薬アドヒアランスは不明である。

Mayo Clin Proc. 2010;85(4):341-8.

椎体・大腿骨骨折歴のある65歳以上の米国退役軍人26,545例を対象に、びまん性筋骨格痛(musculoskeletal pain (MSKP))までの時間をCox比例ハザードモデルで解析した後ろ向きコホート研究。
ビスホスホネート使用は統計学的に有意に高い筋骨格痛発症率と関連せず。(びまん性以外で感度解析しても有意差なし)
このような論文があること自体、ビスホスホネート製剤による骨格痛が問題になっているということですが。
リウマチ性疾患の既往が59.7%、うち変形性関節症が55.7%含まれいる点には注意が必要。

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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