ランダム化比較試験は限られた期間で行われるため、長期の経過を追うことには限界があります。
長期のデータを得るために、ランダム化試験の後に期間を延長して試験が継続される(延長試験・extension study)ことがありますが、その解釈には注意が必要です。
2026年10月のJAMAに参考になるEditorialがあったため提示します。一部筆者加筆あり。
JAMA. 2026 Oct 7. doi: 10.1001/jama.2026.15436.
延長試験の利点
- 治療効果の確認
- 疾患の寛解や機能の改善が時間とともに維持されるのか、減弱するのかを確認することができる
- 安全性の確認
- 長期安全性(遅発性有害事象の発生率など)を評価できる
- 倫理的問題の軽減
- 有効な治療を中止することや、当初対照群に割り付けられた患者の救済
- 組み入れ数の増加
- 延長研究があることで、研究の初期段階で対照群に割り付けられることへの懸念があっても、参加者が試験に登録する動機を高める可能性がある
課題
課題1:外部対照群によって交絡が生じる可能性がある
外部対象群とは、試験の外にあるデータ(過去のレジストリ、保険請求データ、電子カルテなど)から作る比較群のことです。同じ試験の中でランダムに割り付けた対照群(内部対照)と対になるものです。
多くの延長試験では、当初の対照群の参加者も実薬に切り替わります。そのため新しい対照群を、試験外のデータから用意するか、実データに基づくシミュレーションで設定します。例えば、過去のレジストリデータから未治療時の自然経過をシミュレーションで再現したり、実臨床のコホートから患者を選んで比較群にしたりします。
理想的には、元の試験と同じ組み入れ基準を外部対照群にも適用すべきです。保険請求データや電子カルテデータのように同じ基準を当てはめられない場合には、人口統計学的特性(年齢・性別など)、臨床的特性、併存疾患の違いによって、アウトカムの比較に交絡が生じるおそれがあります。
例えば、JAMA Dermatologyに掲載されたデュークラバシチニブの統合解析は、中等症〜重症の局面型乾癬に対する最長3年間の安全性と有効性を評価しています(JAMA Dermatol. 2025;161(1):56-66.)。この解析では、有害事象の背景発生率を推定するために、他の乾癬治療薬の臨床試験データや、疫学データベース・保険請求データベースが使われました。比較対象は、元になった2つのランダム化二重盲検試験(POETYK PSO-1、PSO-2)と、別の非ランダム化長期非盲検延長試験(Br J Dermatol. 2024;190(5):668-679.)の集団に似せて設計されていました。しかし、試験参加者と外部データとの間の患者特性の違いを追加で調整することはできず、潜在的なバイアスの大きさは評価できませんでした。
理想的には、外部対照群の患者背景の違いを調整できるだけの情報を備えたデータソースを選ぶべきです。そのうえで、傾向スコア解析のように多数の変数を同時にバランスさせる手法の活用も検討すべきとされています。
課題2:外部対照群では知りたいアウトカムの入手が困難な場合がある
外部対照について質の高いアウトカムデータを得るのは、難しいことがあります。例えば試験のアウトカムが身体機能のように直接の測定を要する項目だと、日常診療のデータにはまず残っていません。
例えば、統合失調症の成人に対する6か月製剤パリペリドンパルミチン酸エステルの3年間の延長試験があります(JAMA Netw Open. 2024;7(7):e2421495. )。これは比較群のない単群の延長試験で、元の試験中に再発・死亡・有害事象で脱落した患者は含まれていません。この研究ではアウトカムを、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象-重症度(CGI-S)、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)など、患者や医師が評価する複数の尺度のスコアで定義していました。PANSSのように日常診療で重症度評価に使われることがある尺度もありますが、そうしたデータは研究者が利用できず、外部対照群の候補となるデータソースは限られました。
課題3:クロスオーバーデザインを用いると、解釈が複雑になる
一部の延長試験では、クロスオーバーデザインでランダム化を部分的に残し、試験の中に比較群を確保します。ランダム化期間が終わると、最初から実薬群だった参加者は「継続治療群」として治療を続け、対照群の参加者は実薬に切り替わって「対照→実薬切り替え群」になります。その結果、切り替え後には実薬を使っていない(非曝露の)対照群がいなくなります。
教科書的なクロスオーバー試験では、全員がA→BまたはB→Aの順に両方の治療を受け、間に休薬期間(ウォッシュアウト)をはさみ、同じ人の中で治療効果を比べます。効果が速やかに消える治療や、病状が安定した慢性疾患で使われるデザインです。一方、延長試験でいう「クロスオーバー」は、対照群が実薬へ一方向に移るだけで、元には戻りません。したがって比べているのは「実薬 vs 対照」ではなく、「最初から実薬を始めた群 vs 遅れて実薬を始めた群」です。遅延開始(delayed-start)デザインに近い比較と考えると分かりやすいでしょう。切り替え後に両群の差が縮まれば「遅れて始めても追いつける」、差が残れば「早く始めることに意味がある」という解釈につながります。
例として、JAMA Neurologyに掲載された、再発型多発性硬化症に対するウブリツキシマブの延長試験(ULTIMATE I・II延長試験)があります(JAMA Neurol. 2026;83(4):348-358.)。この研究では、元のランダム化で得られた内的妥当性を保つため、延長期間に入ってからも元の割り付けに従って群を比較し続けました。
注意したいのは、元の試験でランダム化された参加者の全員が延長試験に進むわけではないことです。実薬群では効果や忍容性、対照群では実薬を受けたいという希望など、ランダム化後の要因が延長試験への参加に影響します。そのため、選択バイアスが入る可能性があります。延長試験への参加と関心のあるアウトカムの両方に関係する患者特性があれば、それが測定されているか否かにかかわらず、交絡も問題になります。
また前述のとおり、継続治療群と比べるべき非曝露群は存在しません。調整解析で対処できる場合もありますが、多くの延長試験は論文中で調整について記載していません。
元のランダム化を保ち、治療割り付けも変えなかった延長試験の例として、JAMA Ophthalmologyに掲載された、間欠性外斜視に対する過マイナス眼鏡療法の試験の延長試験があります(JAMA Ophthalmol. 2024;142(5):417-428.)。この研究は、間欠性外斜視の小児を、過マイナスレンズ眼鏡(overminus spectacles:屈折値より強いマイナス度数の眼鏡)の群と、過マイナスでない眼鏡の群に割り付けた試験の延長です。3年間の屈折値の変化(近視化の程度)を両群で比較しました。
比較を念頭に置いた延長研究のデザイン
ここまでの例の多くは、外部対照、シミュレーションによる対照、ランダム化から引き継いだ対照のいずれかの形で、何らかの比較群を持っていました。違いは、それぞれのデザインから得られる結論をどこまで信頼できるかにあります。
理想的には、治療の効果は「その治療を使っていなかったら、参加者はどうなっていたか」と比べて解釈すべきです。そのため延長試験をデザインする際には、比較の方法を慎重に検討する必要があります。アウトカムや共変量データの性質、試験外で試験と類似する集団のデータがあるか、ランダム化を保てるか、といった条件に最も合う方法を選ぶべきです。
RCTの延長試験からは、患者も医師も多くの追加情報を得られます。ただし、その研究から何が言えて何が言えないかを、冷静に見極めることが前提です。そのためには、まず継続率と脱落率を透明性をもって報告することが重要です。また、群間の不均衡を調整する方法を適用し、適用しない場合はその旨と限界を示すべきです。そして研究者は考察の中で、その研究デザインが何を裏付けられ、何を裏付けられないかをはっきり述べるべきです。

