シェーグレン症候群かもしれない、シェーグレン症候群と診断された。そんな不安を抱える患者さんたちのための、病気についてをまとめたページです。
シェーグレン症候群は、近年はシェーグレン病と呼ばれるようになっていますが、病気の内容としては変わりません。
歴史的には長くシェーグレン症候群といわれてきたため、ここではシェーグレン症候群として記載します。
また、英語でSjögren症候群と記載することもあります。
膠原病リウマチ内科医である筆者が、実臨床で患者さんから受けた質問や、知っておいた方がよいことを中心にまとめています。
シェーグレン症候群ってどんな病気?
免疫の異常のせいで、口や目の乾燥を中心に、さまざまな症状が出る病気。
口の乾燥(ドライマウス)、目の乾燥(ドライアイ)が病気の中心となりますが、乾燥以外にも、さまざまな臓器が障害されることがあります。
関節リウマチのように、自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気のことを、膠原病と呼びます。
膠原病については以下のリンクをご覧ください。

近年では、シェーグレン症候群ではなく、シェーグレン病と呼ぶように変わってきています。
病気自体の定義が変わったわけではなく、いずれも指す内容は同じです。
シェーグレン症候群の患者さんの数
日本には、7万人の患者さんがいると推定されています。
しかし、乾燥症状を病気と思わず過ごしている方も多く、潜在的な患者さんは10〜30万人にのぼると推定されています。
人口比でみると、人口10万人あたり約15人という報告があります。
10000人に1人と考えると、少ない病気に思えるかもしれませんが、決して珍しい病気ではありません。
出典:難病情報センター「シェーグレン症候群(指定難病53)」
シェーグレン症候群は指定難病?
シェーグレン症候群は指定難病です。
シェーグレン症候群は厚生労働省の定める指定難病に該当します。
診断基準を満たす場合には、申請が可能かどうか相談が可能です。
しかし、シェーグレン症候群の患者さんの中で、難病申請を行うことで、利益があるかたは少ないと考えられます。
というのも、難病を申請しても医療費助成の対象となるのは、重症度を満たした場合のみですが、シェーグレン症候群で重症度を満たす方は少ないからです。
シェーグレン症候群になる原因
原因は明確には分かっていません。
遺伝的要因と、環境要因の2つの原因があわさったときに発症しやすいと考えられています。
遺伝的要因
遺伝的要因とは、シェーグレン症候群になりやすい体質のことです。シェーグレン症候群の方を調べると、あるタイプの遺伝子を持つ方が多いことが分かりました。
このことから、ある遺伝子を持つ方ではシェーグレン症候群を発症しやすいのではないかと考えられています。
環境要因
環境要因とは、シェーグレン症候群を引き起こす可能性のある要素のことです。
ウイルス感染などによってシェーグレン症候群が引き起こされる可能性が考えられていますが、。

症状について

シェーグレン症候群は、口や目の乾燥症状が起きることが多いですが、それ以外でも全身のさまざまな臓器が障害されることがあります。
乾燥の症状
シェーグレン症候群の中心となる症状で、口・目の乾燥が乾燥し、それに伴って様々な症状が生じます。
口の乾燥(ドライマウス)
口内乾燥は患者さんの70〜80%にみられます。
- 口が乾燥する
- そのために水をたくさん飲む
- 味が分かりにくい
- 食品が飲み込みにくい
- 虫歯が増える、など様々な症状として現れます。
目の乾燥(ドライアイ)
目の乾燥は患者さんの60〜70%にみられます。
目を保護している涙が少なくなってしまい、目の表面の角膜が傷つき安くなることで、様々な症状が起きます。
- 目がゴロゴロする
- しょぼしょぼする
- 目が疲れる
- 目が痛む、など。
他に乾燥する場所
- 鼻・のどの乾燥
- 膣の乾燥
- 腟の乾燥によって性交渉の際に痛みがでる
- 皮膚の乾燥
- 汗がでなくなることで、体温を逃がすことができなくなり、体温が上がりやすくなります。
- 上がると言っても38度台まで上がることは少なく、37度前後になることが多いです。
唾液腺が腫れる
耳の下や顎の下が腫れることがあり、30〜50%にみられます。
乾燥以外の症状
シェーグレン症候群では乾燥の症状が主体であるとお話ししました。
実は、それ以外にも、様々な症状や臓器の障害を起こします。
腎臓の調子が悪くなる
さまざまな腎臓の障害を起こします。
- 遠位尿細管性アシドーシス
- 間質性腎炎 など
場合によっては、低カリウム血症によって、体に力が入りにくくなることもあります。
手や指が真っ白になる
- レイノー現象(Raynaud現象)と呼ばれる症状です。
- 寒いところや温度の変化によって、指先が真っ白になることがあります。
- 指一本だけ〜指の先端全体など範囲には個人差があります。
- シェーグレン症候群だけでなく、様々な膠原病で起きることや、特に病気でなくても症状だけ出ることもあります。
体がだるくなる、疲れやすくなる
- 医学用語では「全身倦怠感」と呼ばれ、体のだるさ・疲れやすさが出現することがあります。
間質性肺炎
一般的に「肺炎」と言えば、新型コロナウイルスによる肺炎や、誤嚥性肺炎など、ウイルスや細菌による「感染症」を指します。
「間質性肺炎」とは、そういった外部の病原体ではなく、免疫の異常によっておきる肺炎のことです。
さまざまな膠原病に生じますが、シェーグレン症候群もその一つです。ほかの膠原病に比べると、肺炎を合併する可能性は低いと言われています。
間質性肺炎で重要なことが、「急性増悪」(きゅうせいぞうあく)という症状です。
文字通り、「肺炎が急激に悪くなること」で、命に関わることもある非常に危険な状態です。
急性増悪した場合には、普通の関節リウマチの治療では歯が立たず、ステロイドなどを使った強力な治療が必要になります。

合併症
シェーグレン症候群は、病気そのもの以外にも、他の病気と同時に起こることがあります(合併症と呼びます)。
シェーグレン症候群は特に合併症が多い膠原病です。
他の膠原病
他の膠原病とともに存在(合併)するシェーグレン症候群を、二次性シェーグレン症候群と呼びます。
さまざまな膠原病と合併することが知られています。
- 関節リウマチ
- 全身性エリテマトーデス

悪性リンパ腫
これはシェーグレン症候群に限った話ではありませんが、多くの膠原病では悪性リンパ腫になりやすいことが知られています。
文献にもよりますが、おおよそ5%程度の方が、悪性リンパ腫(血液の「がん」)になることが知られています。
したがって、リンパ節が腫れる、熱が出る、体重が減るなどの
診断について

問診・身体所見・採血・画像の検査を組み合わせ、
シェーグレン症候群らしい症状(ドライアイ・ドライマウス)があること
ほかの病気ではないことを除外した上で、初めて診断することができます。
膠原病すべてにいえることですが、シェーグレン症候群は、1つの検査(採血やレントゲン)で診断が確定する病気ではありません。
ドライアイを確認する
目が乾燥するという症状が最も重要ですが、人によっては症状がないのに検査は陽性ということがあります。
この場合は、患者さんは症状になれてしまっている可能性があるということです。
ドライアイの確認方法は幾つかあります。
- 涙腺生検
- 局所麻酔をつかって皮膚を麻酔した後、涙腺を少しとり、それを顕微鏡で確認します。
- リンパ球(免疫の細胞)が多く含まれていることを確認します。
- 眼科で行う試験
- シルマー試験
- 紙を下のまぶたに挟んで、5分間で濡れる紙の長さで涙の分泌量をみます。
- ローズベンガル試験
- 目を「ローズベンガル液」という液体で濡らし、目の表面に傷がついていないかをみます。
- 蛍光色素試験(フルオレセイン試験)
- 目を「フルオレセイン液」という液体で濡らし、目の表面に傷がついていないかをみます。
- シルマー試験
ドライマウスを確認する
口が乾燥するという症状が最も重要ですが、ドライアイと同様に、人によっては症状がないのに検査は陽性ということがあります。ドライマウスの確認方法は幾つかあります。
- 唾液腺生検
- 下唇の裏から取ることが多いです。
- 涙腺と同様、局所麻酔をしたあと、小さく皮膚を切って、唾液腺を取り出し、顕微鏡でリンパ球が存在することを確認します。
- サクソン試験
- ガーゼを2分間、噛んでいただき、重さがどれくらい増えるかで、唾液の量をみます
- 唾液腺造影検査
- 唾液腺造影法は、造影剤を唾液腺の出口から注入して、X線を撮影します。
- 唾液腺出口の場所としては、頬の内側や舌の下にあります。
- 唾液腺シンチグラフィー
- わずかに放射線を出す物質を注射で投与して、しばらくした後に、唾液腺を撮影して放射線がでる部分を確認します。
- 物質が唾液腺に取り込まれる =炎症がある ということを示すので、唾液腺に炎症があることが分かります。
- ガムテスト
- ガムを噛んでいただき、でる唾液の量を確認します。
他の病気を除外する
他の病気ではないことを確認することを「除外」といいますが、この除外することが膠原病においては重要です。
そのため、採血やレントゲンなどだけで関節リウマチということはできないのです。
例えば、目や口が乾燥する症状はシェーグレン症候群以外にも、薬や更年期障害などさまざまな原因で起きます。
検査採血
採血はだけでは関節リウマチは診断できませんが、採血項目では関節リウマチの診断に重要な検査項目があります。
それが、抗 SS-A 抗体と、抗 SS-B 抗体 です。
特徴を簡単に示します。
- シェーグレン症候群の患者さんのうち、約50〜70%が陽性になります。
- つまり陰性でもシェーグレン症候群ではないとはいえない。
- シェーグレン症候群以外の膠原病でも陽性になる。また健康の人でも陽性になることがある。
- つまり陽性でもシェーグレン症候群であるとはいえない。
- 妊婦さんの場合には、抗SS-A抗体が陽性の場合、胎児・新生児に影響(新生児ループス、まれに胎児の心臓の伝導障害=先天性房室ブロック)が出ることがあるため、妊娠時には内科・産科・小児科での慎重な管理が必要になる。
- シェーグレン症候群の患者さんのなかでは、陽性率約20〜30%とやや低めですが、シェーグレン症候群に特異的で、陽性であれば診断的な意義が大きい。
- 抗SS-A抗体と共に陽性になることが基本。
- 稀に、抗SS-B抗体のみが陽性になることはあるが、その場合はあまり意義がないと考えられている。
上の他にも、複数の抗体が陽性になることがあります。代表的なものを示します。
- 抗核抗体
- 自分の細胞の中にある、核に対する抗体のことです。
- シェーグレン症候群の場合、80−90%で陽性になることが知られています。
- さまざまな膠原病で陽性になり、健康な方でも陽性になり得るため、この抗体だけでなにかをいうことはできません。
- リウマチ因子
- 関節リウマチで陽性になることが知られていますが、シェーグレン症候群を含むさまざまな膠原病で陽性になります。
- これもこの抗体だけで何かをいうことはできません。
- 詳しくは以下の記事をご覧ください。

必要な検査のまとめ
シェーグレン症候群を診断するために必要な検査は以下の3種類です。
これらは、シェーグレン症候群を難病として診断するために必要な検査が含まれます。
- 乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)をみる検査
- 乾燥以外の症状をみる検査
- シェーグレン症候群以外の病気を除外する検査
それぞれ簡単に説明すると、
- 乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)をみる検査
- ドライアイ
- 眼科で角膜が傷ついているかを確認する検査
- 涙腺を小さくとり、顕微鏡で確認する検査
- ドライマウス
- 唾液がでないかどうかを確認する検査
- 唾液腺を小さくとり、顕微鏡で確認する検査
- 画像で唾液腺の状態を確認する検査
- ドライアイ
- 乾燥以外の症状をみる検査
- 唾液腺が腫れている場合
- 超音波(エコー)やCTの検査
- 間質性肺炎が疑われる場合
- レントゲンやCTの検査
- 唾液腺が腫れている場合
- シェーグレン症候群以外の病気を除外する検査
- 他に乾燥を起こす病気を除外する
上の検査は、シェーグレン症候群を診断する際にすべての検査を行っているわけではありませんが、医師に応じて、必要な検査を行います。
したがってシェーグレン症候群を採血や画像の検査だけで診断することは基本的には難しいです。
シェーグレン症候群の診断における注意点
ここまで、さまざまな検査がシェーグレン症候群の診断に行われることを説明しました。
しかし、乾燥症状があり、抗SS−A抗体が陽性で、他の原因が明らかでない場合は、シェーグレン症候群の可能性が非常に高いと考えられます。
乾燥症状だけの場合、あとで詳しく説明しますが、目薬や口を湿らせる薬など、いわゆる「対症療法」が中心になります。この状態で指定難病と診断しても、恩恵があまりありません。
というのも、指定難病として金銭的に援助を受けられるのは、「重症度」を満たした方に限られます。
そして、乾燥症状だけでは重症度を満たさないため、医療費の補助を受けることはできません。
そのため、難病を申請するための検査である、眼科や生検などが大変である割に、あまり難病として申請する意義に乏しいことが多いです。
筆者も、シェーグレン症候群ではありますが、難病申請をおすすめしていない場面は多いですし、そのための検査も患者さんの希望が少なければあまり積極的には行っていないこともあります。
治療について

- 根本的に病気を治療する薬剤は、現時点ではない。
- 治療の中心は、乾燥症状に対する対症療法。
- 目が乾燥する場合:目薬(点眼)を使用します。
- 口が乾燥する場合:口の乾燥を和らげる薬剤を使用します。
- 全身の臓器症状(腺外症状)が強い場合には、免疫を抑える治療を行うことがある。
- 二次性(他の膠原病を合併している場合)では、合併している病気の治療も併せて行う。
シェーグレン症候群は、「膠原病」といわれる、自分の免疫で自分の体(特に関節)を攻撃することによって起きる病気と考えられています。
したがって、これを治療するためには異常な免疫を抑える=免疫抑制を行うことが必要です。
このために使用される薬剤が、免疫抑制薬です。
免疫抑制薬は様々な種類がありますが、いずれも副作用があります。
ただし、シェーグレン症候群の乾燥症状の場合、治療しても乾燥症状には効果が乏しく、副作用が上回ることがおおいといわれています。
そのため、乾燥の症状だけでは、免疫抑制薬を使って治療することは少なく、対症療法を行うことが大半です。
しかし、乾燥症状以外の、臓器障害(例えば肺や腎臓)などがある場合には、免疫抑制薬を使います。
つまり、患者さんの状態によって重症度や治療が大きく変わることが特徴です。
最終更新:2026/06/28 内容を修正しました
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。
個々の患者さんの診断・治療方針は、病状、検査結果、併存疾患、使用中の薬剤などによって異なります。
実際の診療判断は、必ず主治医または医療機関にご相談ください。

