この記事は患者さん向けです。
健康診断や病院で採血をしたとき、「あなたはリウマチの気(け)がある」といわれたことはありませんか?
関節などの診察がなく、採血の結果だけで指摘されたのなら、概ね以下の採血データをみての発言かもしれません。
それは「リウマチ因子(RF)」です。これが陽性になった場合に、本当にリウマチの気があるのか、疑問にお答えします。
リウマチ因子/ RF
リウマチ因子とは何か
リウマチ因子は、その名の通り、関節リウマチの患者さんでよく陽性になる「自己抗体」です。
「自己抗体」とは、非常に簡略化すると本来は外敵に対して反応するはずの免疫物質である「抗体」が、自分に対して反応するもののことで、つまり異常な抗体です。
医学的な定義をいえば、「変性IgGのFc部分に対する自己抗体」であり、大部分はIgMです。
リウマチ因子陽性 = 関節リウマチ??
重要なことは、リウマチ因子陽性 = 関節リウマチ ではないということです。
ある地域の方すべてを対象に調べた研究では、2.4%の方で陽性という結果でした。(つまり関節リウマチ関係なく、2.4%で陽性になる検査ということ)
一般に、関節リウマチ患者さんは人口の0.6%といわれていますから、例えば健康診断でリウマチ因子が陽性であるといわれても、関節リウマチの可能性は20%程度にしかなりません。
日本では健康診断で測定されることがありますが、関節の痛み・朝のこわばりがない場合には、私は意味のあるデータとは考えません。つまり何も気にしなくて大丈夫です。
逆に、関節の痛み・手の(特に朝の)こわばりがある場合には、関節リウマチの可能性が上がりますので、専門機関を受診することをおすすめします。
手のこわばりについてはこちらの記事も参照してください。
関節リウマチとリウマチ因子の関係
関節リウマチ患者さんに限れば、70%の患者さんが陽性になります。
つまりリウマチ因子が陰性であっても、関節リウマチでない、とはいえないわけです。ただ陽性の方は、その値が関節リウマチの病気の程度(病勢といいます)を反映するといわれています。
したがって、関節が痛い、朝に指がこわばるといった症状で病院を受診したときに、採血で関節リウマチではないですよ、いわれる方がいらっしゃいますが、それは完全に誤りです。
もう一つ、関節リウマチを考えるうえで重要な「自己抗体」があるため、ご紹介します。
抗CCP抗体/ 抗シトルリン化ペプチド抗体/ ACPA
抗CCP抗体とはなにか
抗CCP抗体も、関節リウマチの患者さんでよく陽性になる「自己抗体」です。
医学的な定義を言えば、「シトルリン化された蛋白質に対する自己抗体」です。
抗CCP抗体 = 関節リウマチ の可能性が高い
抗CCP抗体もリウマチ因子と同様に、抗CCP抗体陽性 = 関節リウマチ とは必ずしも限りませんが、陽性の方の97%は関節リウマチと診断されるという報告があります。
つまり、リウマチ因子よりも、陽性の場合には関節リウマチの診断に有用な検査ということです。
こちらは健康診断で測定されることはなく、医師が関節リウマチを疑った際に測定されることが多いです。
関節リウマチは、採血で診断できない
関節リウマチ・膠原病という病気は、採血で診断する・否定する病気ではありません。
リウマチ因子・抗CCP抗体が陽性であろうと、陰性であろうと、関節をはじめとする症状と、他の病気でないことを証明して初めて診断することができます。
それには専門の医師による診察が必要不可欠ですので、お近くの専門機関を受診されることをお勧めします。
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