ステロイドトラブルシューティング

ステロイド関係の記事一覧

副腎皮質ステロイド・グルココルチコイドを内服、使用している患者さんをみたときに、困る・悩む項目について解説しています。

分かりやすさのために、表題ではステロイドとしましたが、ここではグルココルチコイドを指します。これらの用語の定義についてはこちらを参照ください。

目次

ステロイドを内服している患者さんが入院したら

全例、基本的には同量で継続します。たとえ明らかに感染症であっても、血糖が上昇していてもです。

ステロイドの内服が困難になったら

点滴で、2倍量で投与します。または、胃管がある場合は同量で胃管から投与します。

 【症例】プレドニン5mg3錠分1朝食後で内服中、感染症による意識障害が出現、内服困難に。

  • 水様性プレドニン30mg+生理食塩水50mL(ブドウ糖でも可)を30分かけて、08:00に投与。
  • 胃管からプレドニン5mg3錠分1朝食後で内服を継続。

2倍で点滴する理由

ステロイドは一般的な薬剤と異なり、点滴の方がBio-availabilityが低いとされます。

つまり、点滴の方が内服よりも体に吸収されにくいということです。

その理由は脂溶性ホルモン(つまり水に溶けない)であり、点滴で投与するためには特殊な加工をする必要があるためです。

したがって、内服から点滴移行する場合には、同量よりは増やすとされていますが、その増やす量には一定の決まりはありません。1.5倍〜2倍で増やすことが経験的に多いですが、内服できず点滴移行する場合は、特殊な場合を除いて通常よりはストレスのかかる状況にある(感染症で内服できない、等)と考えられますから、筆者は2倍に増やしていることが多いです。

この「脂溶性にする過程」によって、アスピリン喘息がある患者さんにとってはそれを助長する可能性があるため、基本的にアスピリン喘息の患者さんには、ステロイド点滴静注は行ってはいけません。(逆に内服は全く問題ない)

ディップ先生

この「脂溶性にする過程」(エステル化)によって、アスピリン喘息がある患者さんにとっては、それを誘発する可能性があります。
したがって基本的にアスピリン喘息の患者さんには、ステロイド点滴静注は行ってはいけません。(内服は全く問題ありません。)

手術前のステロイドカバーは?

Anesthesiology vol. 127,1 (2017): 166-172.に基づき、一部筆者改訂。

ステロイド投与量・投与期間・手術のストレス に応じて投与量を調整します
また投与に用いるステロイドは、プレドニゾロンではなく、ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン®)を用います。(以下はすべて成人における量です)

STEP
投与量・投与期間によるカバーの必要性の判断

ステロイドカバーは原則不要な場合

  • グルココルチコイドを3週間未満の期間投与
  • 朝投与でプレドニゾン(プレドニン®)換算 5mg未満/日
  • 隔日投与でプレドニゾン(プレドニン®)換算 10mg未満

ステロイドカバーは原則必要な場合

  • プレドニゾン(プレドニン®)換算で1日 20mg以上を3週間超投与
  • プレドニゾン(プレドニン®)換算で1日 5mg以上 + 4週間超投与

上記以外の場合には個別に判断することになりますが、よほど投与しがたい理由がない(例えばコントロール不良な糖尿病、高血圧、不眠症など)のであれば、基本的にはカバーを実施した方が無難と考えます。

STEP
手術のストレスの程度でカバー量を決定

表在的(Superficial) ・・・歯科手術・生検

 原則としてカバーは不要です。(もとの投与を継続)

軽度(Minor) ・・・鼠径ヘルニア修復・大腸内視鏡検査・子宮掻爬・手の手術

 元の投与量 + 以下のようにヒドロコルチゾンを投与します。

 元のステロイドは内服可能ならそのまま、不可能なら点滴に変更。点滴へ変更する場合は2倍にします。詳細は「ステロイドの内服が困難になった」を参照ください)

中等度(Moderate)・・・下肢血管手術・人工関節置換・胆嚢摘出術・結腸切除・腹式子宮全摘

 軽症と同様に対応します。

高度(Major)・・・食道切除・大腸全摘+直腸切除・大血管手術・肝外胆道再建術・外傷・分娩

 元の投与量に加えて以下を投与します。(元のステロイドは内服可能ならそのまま、不可能なら点滴に変更。点滴へ変更する場合は2倍にします。詳細は「ステロイドの内服が困難になった」を参照ください)

カバーが必要な理由

副腎皮質ステロイドを高用量・長期に使用すると中枢性副腎不全となり、副腎皮質からグルココルチコイドの産生量が低下します。このときに手術などの強いストレスがかかると、通常であれば生理的にグルココルチコイド産生量が増加しますが、産生量が低下しているため、相対的副腎不全になってしまいます。

(よく「副腎が怠ける」と表現されますが、実際に怠けているのは下垂体や視床下部です。)

このため、ストレス下においては一次的なグルココルチコイドの補充が必要になります。

早朝コルチゾール値等を用いて副腎不全の程度を判断することもできますが、この検査のために手術自体を遅らせるべきではないとされます。実臨床では計測せずにカバーしていることが私は多いです。

ステロイドカバーのエビデンスについて

この投与量となっている理由として、以下のエビデンスがあります。

生理的に、コルチゾール量>200mg/日となることは稀である

1日に200mg以上のコルチゾールをカバーでも投与する意義はない

Mayo Clinic proceedings vol. 95,12 (2020): 2760-2774. 

ストレスの後はコルチゾール量は術後1−2日でベースに戻る 

基本的に2日以上ステロイドカバーを実施する必要はない

Anaesthesia. 2020 May;75(5):654-663.

各ガイドラインや施設、臨床医によって投与量はまちまちです。エビデンスを非常に作りにくいうえ、多少の違いはあれ、それで大きく困ることもありません。上記の投与方法は一つの参考として捉えてください。

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この記事を書いた人

専門:膠原病リウマチ内科、内科
資格・所属:医師(MD) 
日本内科学会・日本リウマチ学会所属・大学病院勤務
患者さんから、(主に若手の)リウマチ科医師まで、膠原病・内科について広く知ってもらうことを目標にしています。皆さんで作っていくブログにしたいと考えていますので、お問い合わせフォームより、なんでも気軽にご相談・ご質問ください!

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