BVASとは、血管炎の疾患活動性評価に用いるスコアリングです。
現在の臨床試験では、2009年に発表された BVAS version 3が主に使用されています。
歴史
1994年にLuqmaniらが、最初のBVASを作成しました。 Ann Rheum Dis. 2009 Dec;68(12):1827-32.
9臓器系に対して、新規・増悪の活動性所見のみを点数付けするスコアリングでした。9臓器系の分け方自体は現在のBVAS v3と同様です(細かい中身は異なる)。また当時は持続している臓器障害を評価することができませんでした。
2003年にこのアップデート版の、BVAS 2003 (version 2) が公開されました。
BVASでは、新規・増悪の所見のみしか点数化できませんでしたが、「新規/増悪」と「持続」を分けて点数化することが可能になりました。 Baillieres Clin Rheumatol. 1997;11(2):423–446.
現在のBVAS v3とは異なり、「新規/増悪」「持続」について、それぞれ別々に集計し、別々に点数を出す形式でした。
そして2009年に、現在広く使用されているBVAS version 3が公開されました。 Ann Rheum Dis. 2009 Dec;68(12):1827-32.
「新規/増悪」と「持続」を分けて点数化する点は同じですが、別々に集計するのではなく、合計点数を算出します。
内容
現在広く使用されているBVAS version 3の内容について説明します。 Ann Rheum Dis. 2009 Dec;68(12):1827-32.
BVAS を採点するためのルール

- 評価日に存在し、3ヶ月未満に発症する所見が評価対象
- 4週間未満に新規出現・増悪している場合、新規・増悪として扱う
- 3ヶ月未満〜4週間以前に、新規出現・増悪している場合、持続として扱う
- 3ヶ月以上持続している所見は、VDIのスコアとして計算する
- 疾患所見は、活動性血管炎に起因すると判断できる場合にのみ採点する。
たとえば感染・薬剤反応・他の併存症など、別の病因が妥当と思われる場合は採点しない。 - 「持続(Persistent Disease)」欄は、すべての異常が活動性ではあるが「新規または増悪」ではない血管炎によると判断される場合にチェックする。
- 一部の項目では専門医の判断や検査(検体検査・画像など)の結果が必要となる。これらを除けば、用紙全体は診察時点で記入する。
- 血清クレアチニン値は初診時のみ採点する。(その後はクレアチニンの増悪として計算する)
- SLEDAIでは、評価時に存在することは必須ではなく、多エバ
具体的な臓器の評価
以下の9臓器について評価します。









- 持続の評価項目がない欄は、一般的に1度発生すると消失しない臓器障害です
- 例えば、肺の空洞などは、1度出現すると消失せず、現在の血管炎の活動性を示唆しないため、点数づけしません。
- ただ脳卒中など、改善する可能性はありますが、症状が固定することも多い疾患でも、持続で点数が加算されるようになっているものもあります。
特徴
- しっかりと妥当性が検証されたスコアリングであるという点
- 前向き横断研究で、PGA・治療方針・CRP・既存指標と強い相関があることがわかっています
- 合計点数で、組み入れ基準や治療反応として使用できる点
- 例えば、BVAS=0を寛解基準の一部として使用することができます
- 逆に、疾患活動性のある患者をBVAS>0として定義することもできます
実際に使用されている代表的な臨床試験は以下のようなものがあります
- MPA・GPAにおける、アバコパンの有用性を評価したADVOCATE trialにおいては、主要評価項目の寛解の定義が、BVAS=0、直近4週間でのGC不使用と定義されました。 N Engl J Med 2021;384:599-609
- C型肝炎関連クリオグロブリン血症性血管炎に対して、直接作用型抗ウイルス薬を用いた患者を長期に追跡した患者の疾患活動性をBVAS v3を用いて追跡しました。 Gastroenterology. 2018 Aug;155(2):311-315.e6.
欠点
- 3ヶ月以前に発症して変化のない臓器障害は評価できません
- これは欠点というよりは、BVASのスコアリングの特徴といったほうが正確です。
- 3ヶ月以上の臓器障害については、VDIという別のスコアリングで表現します。
- 全身性血管炎のスコアリングとして使用されますが、すべての疾患において、どのように活動性を反映するかは疑問が呈されています
- 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎・GCA)においては、虚血症状の一部が反映されず、BVAS=0でも活動性があることがあり得ます Epub 2016 Apr 1. PMID: 27036388
- また、稀な臨床症状については点数化することができず、活動性として扱われない可能性があります。
- 例えば疲労感・耳漏 など

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